クエスト進捗と3月後半戦
産業革命クエストについて、攻略サイトの掲示板では盛り上がっている。
どうやらポルカの街にサマーソウルとウィンターロックから鉄道を敷く、という内容らしい。
聞いているだけで長丁場な感じだけれど、とりあえず必要資材を集めて納品して、建設そのものはNPC任せとのことなので、日々膨大な資材集めに参加者は走り回っているようだ。
鉄道が敷かれると他の地域へ行きやすくなって、ポルカの街の発展度も上がるんだね。
あと解禁条件満たしたのは爆発種のトウモロコシ作った人だって。
どうやら爆発種のトウモロコシが鉄道の動力になるらしい。
どうも走行中、煙突からポップコーンが溢れ出しているSLが思い浮かんでしまう。
そういう玩具ありそう。
必要資材を見ると私が提供できそうな金属もあるので、ちょっと協力しておこう。
もしかしたら完成後に乗ることもあるかもしれないのだし。
街に出るとぽつぽつとヒツジの角やスイレンの花を身に付けたプレイヤーを見ることが増えてきた。
ご利用ありがとうございます、という気持ちで眺めている。
実際かなり好調らしく、このまま行けば常設検討ラインは余裕だと上長が言っていた。
常設するとしても、今回より準備期間必要そうだからオープンは秋くらい?
テトラゴナはうちの部署の管轄じゃないから、うちは手をひいて企画の譲渡をするんだろうな。
そういや社長はイベントで何人ぐらい倒されたのだろう?
先日の朝礼で、沢山倒されてるのでエゴサすると倒された社長の画像ばかり出てくると嬉しそうに言っていたけれど。
繁忙期とコラボの終わりが見え始めて、3月は瞬きしている間に終わってしまうような妙な感じがする。
まだ1週間以上残ってはいるのだけれども。
毎日落ち着かないし、最後のほうまでばたばたとしているからそう思うのかも。
でも月末にやるコラボカフェの打ち上げに何故か呼ばれているのでそれは楽しみだな。
先輩からは、仕事で宣伝用のインタビュー受けたのだから呼ばれないほうがおかしいでしょと言われたけれど、あれもはるか昔のような気がしているし、言われるまでインタビューを受けたこと自体を忘れていた。
あの頃に比べたらフレンドもできたし掲示板にも書き込めたから、私も初心者脱出できたのかな。
「石岡ちゃんに連絡事項があります。仕事を辞めるとか辞令が出たとかそういう話ではないけれど」
久し振りに三浦先輩からランチに誘われて行った先で、突然話を切り出された。
「私、結婚することにしたの」
「……先輩、お付き合いされている方がいたんですね」
随分突然だけどめでたい話には違いない。
普段全くそんな気配がなかったから、相手がどんな人なのかは気になる。
先輩の好みは知らないけれど、社長っぽい人?
「付き合ってた人はいないわ」
「……はい?」
「昨日告白されて、悪くない相手だからそのまま結婚することにしただけ」
それは稀に聞く「交際0日婚」というやつですね。
三浦先輩らしいといえば、らしいけれど。
告白した相手もかなり面食らったのでは?
「だって『次の開発をするときに、誰より先に素材の話をしたいから、俺の隣にいてください』って、なかなか私のことをわかってる告白じゃない? 今後同様の男性が現れない可能性を考慮して、ここで捕まえておこうと思って」
「理解がありすぎてストーカーを疑いますね。っていうかそれ私も知ってる人ですか?」
「宮山さん」
「それはせめてコラボカフェの打ち上げ後に聞きたかったですね」
会場で宮山さんを見かけたらその告白を思い出すだろうし、お互い軽い地獄ではなかろうか。
宮山さんも先輩が私に告白の文言をまるっと伝えてるとは思わないだろうけれど。
「ま、石岡ちゃんにはちゃんと伝えておきたかったのよ。可愛い可愛い後輩ですもの」
「それはどうもありがとうございます」
棒読みのように返しつつ、特別扱いは嬉しいので私はかなり簡単な女だ。
結婚しても仕事はしばらく辞めないなら、素直に祝福できる。
いきなり寿退社なんてことになったら、心細くて仕方ないじゃない。
いつかは先輩離れしなければいけないけれど、三浦先輩のことはかなり尊敬しているので、まだもう少し後ろを追いかけさせてほしいのですよ。
思ったより拗らせずに手際が良かった宮山さん