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緑の歌とプレイヤーくじ

 突然覚えたと言われても身に覚えがないので「緑の歌」というスキルを調べてみる。


 歌いながら種を蒔くと、肥料を使わずとも品質がわずかに上がる、と。つまりスキルってゲーム内でなにか特別な効果を発揮する技能のことなのね。

 農民が初回収穫した作物を全て食べると覚えるって書いてあるのできっと珍しいスキルではないのだろう。


 うん、じゃあ早速やってみようかな。


 ショップからパースニップの種を4つ買い足して、レベルアップして増えた6マスの農地を追加する。

 歌はなんでもいいのだろうか。


 今この瞬間浮かぶ相応しい歌は学生時代に沢山練習した合唱曲の大地讃頌だ。

 うん、なんだか作物のために歌うのにぴったりじゃないだろうか。

 大地讃頌なら全部のパートを歌えるし。


 踏みしめたエルムジカの大地に感謝するように歌いながら種を蒔くと、前回と違ってキラキラとしたエフェクトを発生させながら種が落ちていった。

 スキルを使ってる、という感じがするようなしないような?


 兎に角10マスの種蒔きを終えて、今日はログアウトすることにした。

 そろそろ現実の夕飯を作らないといけない気がする。

 さっきパースニップ食べたのに変な感じだけど、いくら食べても現実の胃は膨れないからねえ。




 夕飯を食べて一息ついたので、1週間先を行く先輩がたの知恵を借りることにした。

 これでも大人だからゲームに馴染みがなくても攻略Wikiって存在があることは知ってるのよ。


 予想はしていたけれど、農民はあまり選ぶ人がいないようで情報が少ない。

 収穫は、水をあげるのは毎日じゃなくていいと知れたことくらいか。

 雑草の利用方法とか、収穫までが短いから肥料追加タイミングが少ないパースニップの品質を上げる方法とか知りたかったのだけど。


 それどころかパースニップはチュートリアルなのでさっさと売って他の作物を育てようとか書いてある。

 あんなに美味しいのに酷い話ね。


 私はまだ始めたばかりだし、ゲームを進めれば他に品質を上げる方法とかもあるだろうし、結局のところ焦らずマイペースに育てるしかないのかも。

 大晦日の日は徹夜でゲームとかやっちゃおうかな。

 レベルアップしてもっとパースニップを育てたいし。




 そんな感じで年の瀬を農業と雑草抜きで地道に費やして、大晦日には農民レベルは9になっていた。

 今の私の畑は20マス。当初の5倍パースニップを育てることができるし、緑の歌で★2品質を維持している。

 ★1のときは買い取り価格が16レントだったけれど、★2になったら19レントになったので、途中で壊れてしまった道具の買い直しもできるようになった。

 まだ上位の道具には手が届かないけどね。


 しかし頑張りすぎたせいか、周囲からすっかり雑草は取り除かれ、パースニップの生長を待つ間のひまつぶしが無くなってしまった。

 雑草だし放っておけばそのうち生えてくると思うけれど。


 取り除いて積んである石と小枝でかまどでも作ってみようかな。

 そろそろ古い携帯ストーブが壊れる気がするし。


 他の農民の人ってどうしているんだろう?

 この辺りは農民の人が固まってるエリアから外れているし、わざわざ聞きに行くのも迷惑そうだ。


 もしかして農民の人でも戦う手段を持っていて、どこかでモンスターを倒しているのだろうか。

 だけどゲームを始めて数日、私はまだモンスターらしきものを見てない。スプリングポップはモンスター少ないって書いてあったから、農民が多い平地エリアだと滅多に出ない気がする。



 そうこうしているうちに現実時間の年明けが近付いてきた。ゲーム内ではただの日付変更だから変な感じだけど。

 日付変わったら今植えてるパースニップが収穫できるから農民レベル上がるといいな。

 なにをするとどのくらい経験値がもらえるというのが可視化されていないし、レベルアップまであとどれくらいなのかもわからないから作業量と感覚を頼るしかない。

 段々レベルアップまでの時間が延びているから、必要な経験値は増えていっているのだろうけれど。


 あ、日付変わった。


 20個のパースニップを収穫するために動き出した瞬間。普段と違うチャイム音が聞こえてきた。


――おめでとうございます! 月初めプレイヤーくじに当選しました!――


 ……はて、身に覚えがない。

 えーと、インフォメーションを見ればいいのかな?


 全くチェックしていなかったお知らせのページに行くと、プレイヤーくじの予告があった。

 どうやら月に1回、プレイヤーのIDを使って自動的に抽選を行い、ひとりになにか景品が当たる、というものらしい。


 メッセージボックスに通知が来ているし、恐らくこれがプレイヤーくじの景品なのだろう。


「景品は、農民向けカタログギフト。選べるタイプの景品っていいかも」


 今ならなんでも不足しているし、ゲームに使えるアイテムが選べるならありがたい。

 とはいいつつ、現実世界のカタログギフトは悩みまくって期限が切れてしまうことが多々あったから、今回はちゃんと選ばなきゃ。



 ざっとカタログを見たけれど、10000レント前後の商品が載っているようだ。

 今の私からしたらかなり大きなもらい物だし、どれ選んでもやっぱりあっちが良かったとか後悔しそう。


 気になるのは、

 高級肥料 10000レント分

 種詰め合わせ 10000レント分

 ……これはちょっとギャンブルかな。高級肥料の効果がわからないし、種も今はパースニップを極めたいから使わなそう。

 

 あと、

 スプリンクラー

 今はそんなに畑広くないし、すぐには使わないけど、そのうち必要になるのかも。保留で。


 それから、

 ふわふわの子犬。

 ペット、ペットかー、飼いたいし、ふわふわの子犬は絶対可愛いけど、まだ収入が安定していないし、心配なくエサを食べさせられるようになるまで飼う資格がないよね。


 悩んで悩んで、決めた。

 カタログの最終ページに載っていたこれにしよう。

 今やりたいことには、これが一番合ってる気がする。


 タッチパネルで景品を選ぶと、持ち物からカタログが消え、畑の脇に金属でできた唐箕(とうみ)のような機械が現れた。


「これが、種マシンか」


 作物の品質を受け継いだまま、1個の作物から3個の種を作成。

 機能拡張により肥料作成や、品種改良が可能。

 プレイヤーの農地に紐付いているため、他のプレイヤーの使用不可。


 つまりパースニップに関しては、もう種を購入する必要が無いし、収穫した★2のパースニップから★2の種が作成できて、それで緑の歌を使ったら品質を上げ続けることができる、というわけだ。

 現在パースニップを極めたい私にはピッタリすぎる。


 それならば早速パースニップを収穫して試してみるか!

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― 新着の感想 ―
[一言] >農民が初回収穫した作物を全て食べると覚えるって書いてあるのできっと珍しいスキルではないのだろう。 まぁ、ゲーム初心者だとそう思うよね…ところが、その行動は珍しいのです。
[良い点] 讃えよ大地を、あゝ〜
[良い点] 種マシン...牧場物語...レベル100の作物... ¥200の作物が¥24万で売れるアーティファクト... 牧場物語がしたくなってしまう禁断の症状が出てしまったではないか!
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