考えるマンドラゴラ
カラスさんからお礼状を受け取ったとメッセージがきていた。
添付にはコラボ期間中にテトラゴナからログインするともらえるアクセサリー。デザインはこれに決まったんだね。
頭につけるヒツジの角と、スイレンの花飾り。うちの会社のロゴマークがモチーフだ。
ヒツジはコラボ開始時までしまっておくとして、スイレンの花飾りは可愛いからすぐ装備したい。
でも情報漏洩よくない。我慢しなきゃ。
今度クリエさんにリボンを染めてもらって、小さなロゼットを作ってもらおうかな。
依頼の相場はわからないけれどマンドラゴラ1体くらいでやってくれそうな気がする。
マンドラゴラたちはピカピカ新品の道具を片手にご満悦で作業している。
見張りや巡回のマンドラゴラたちは武器だけでなく鎧も作ってもらったらしい。
金属板を薄くのばして丸みを付けただけの見た目は簡素な鎧だけど、稀少金属しか使われていないので防御力は凄いんだろうな。
そういえば金属っぽいパースニップには品質表示もないし、作物加工機での加工もできなかった。
畑で育つけど作物ではない?
でも種マシンで種は作れているようだ。
金属パースニップはマンドラゴラたちのものなので私はあまり関知していない。
お裾分けでインゴットはくれるけど、使い道もないのでアイテムボックスに入れっぱなしにしてるし。
鍛冶場によくいるパースニップがロダンの地獄の門の上にいる人みたいなポーズで固まっている。
考えるマンドラゴラ?
もっとちゃんとした鎧を作りたかったの?
君たち作物なんだからフルアーマーは必要ないと思うよ。
私はそう思うけど、ただロマンの問題らしい……
かといって私は鍛冶のことはわからないし、鍛冶をやってるようなフレンドもいない。
未だにフレンドはカラスさんだけだ。
となると、ポルカに行ってクリエさんに聞いてみるか。
クリエさんは職人関係の人脈広そうだし。
「それならポルカにプロバが来たときにドードーさんのところへ寄るように言っておきますよ。プロバはウィンターロックの鍛冶職人一族ですから」
「プロバさんも鍛冶を?」
小さな彼が鎚を握っているところが想像できない。
重量に振り回されてしまいそうだ。
行商で荷物運んでいるから、実際そんなことはないのだろうけれど。
「鉄打ってるより物売ってるほうが性に合うみたいで、一族の変わり者らしいですよ」
それなら相談に乗ってくれそうだ。
ていうか、鍛冶職人一族の人ならインゴットも譲ろうか。私は使わないし。
ついでなのでロゼットの相談をしたところ二つ返事だった。
マンドラゴラ1体渡すって言う前に返事されてしまったけれども。
無償は駄目なのでマンドラゴラを強制的に渡しておく。
先日作った簡易的な染料もなかなか好評だけど、染まりにくい素材もあるのでいつかは本格的な染料が欲しいようだ。
うーん、品質改良するのがいいのかな?
色の項目はマンドラゴラを触媒にしたときも無かったから別の作物を使う必要があるのかしら。
家に戻るとキッチンによくいるマンドラゴラが、考えるマンドラゴラと化していた。
マンドラゴラ界隈でそのポーズ流行ってるの?
どうやらバレンタイン料理祭の優勝作品を食べてから、そのことで頭がいっぱいらしい。
よし、これもプロバさん相談案件だ。
本人のいないところでどんどん相談することが増えていくな。
今後もこういうことがあるかもしれないから、今いるマンドラゴラたちの希望を一度全部聞いておいたほうがいいかもしれない。
いつの間にか増えたり減ったりしているから全数は把握していないけれど。
それでもなんとか全体的な意識調査をしてみたところ、マンドラゴラたちの希望は大体3種類くらいに分けられた。
武装して農場を守ったり、いずれ高原や森に遠征してモンスターと戦いたいタイプ。
通常時は農業をして、有事の際は大地の歌で武装マンドラゴラたちを支援したいタイプ。
家に籠もって作業していたい職人タイプ。
今後のことを考えるときちんとグループ分けしておいたほうがいいかもしれない。
いつまでもざっくりマンドラゴラたちと呼ぶのはかわいそうだし。
マンドラゴラたちも賛成のようで、なにかかっこいい集団名をつけてくれ、と言っている。
かっこいいのがいいのかーそうかー……頑張って考えよう。
武装したマンドラゴラたちを呼び、葉っぱの根元に青いリボンを結ぶ。
「今日から君たちは、パースニップ兵団『黎明』だよ」
次に農具を持っているマンドラゴラたちに黄色のリボン。
「まだ楽器もなにもないけれど、君たちはパースニップ楽団『昼の月』ね」
最後は職人たちに赤いリボンを。
「パースニップ職人団『夕凪』は、『黎明』や『昼の月』を支えてあげて」
大まかなグループ分けだけど、全体的に好反応で安心する。
「今度からはグループ名で呼ぶから、新人さんが入ってきたら、希望を聞いて仲間に入れてあげて。グループ内で役割の細分化をするのもそっちでやってね」
以後の手間を省くために付け加えておいた。増えても自主的に対応して欲しい。
リボンの巻きすぎで疲れたけれど、これでぱっと見の役割がわかりやすくなった。
分けたところでなにかするってわけではないけど。