パースニップ・マンドラゴラ観察日記
次の日ログインしたらパースニップ・マンドラゴラが増えていた。
たまに、とはなんだったのか。
そしてパースニップの魔法使いになったことにより、家の増築上限が解放されていた。
お金だけはたっぷりあるので何も考えずまた上限まで増築していく。
何故かパースニップ・マンドラゴラ用の部屋や施設が増えていったので、パースニップ御殿はパースニップ・マンドラゴラと共同生活をする前提の家だったのかもしれない。
あと家の奥に開かずの扉が増えた。
開ける条件が一切不明なので怖いけど放置することにする。
お化けとか出てきたら私みたいなか弱い農家には対処しようもないし。
手伝うと言っていたマンドラゴラたちが専用の道具を欲しがるのでショップで購入。
売っているのは人間用だし大きめのパースニップサイズでしかない彼らには大きすぎるのではと思ったけれど、持たせてみたらマンドラゴラたちの体に合わせて道具が縮んだので問題なさそうだ。
よく考えたら人間だって体格差があって使いやすい道具のサイズも違うけれど、買うときにサイズを聞かれない。
今まで気付いていなかっただけで持つ人に合わせて伸縮していたのだろう。
道具を得たマンドラゴラたちは、どこかから木材を調達し、農園の入口に立派な門柱を作り始めた。
門柱にマンドラゴラサイズの梯子や椅子があるのは農園の見張りもしてくれるのだろうか。
観察しているとマンドラゴラたちそれぞれに個性のようなものはあるものの、同族を切り刻んで材料にしたり、出荷したりは気にしないのか、頼めば拒否せずやってくれる。
必要とあらば自分を材料に使えと伝えてくる個体もいる。
彼らの「出荷されたくない」は「死にたくない」ではなく「ここで役に立ちたい」なのかもしれない。
効果が複数付いたパースニップ・ビートと油をクリエさんに見せるためポルカの街へ向かう際、必要になるかもしれないとマンドラゴラを連れていくことにした。
歩くこともできるけれど、変に目立っても怖いのでアイテムボックスに収納していく。
出荷できる時点でわかってたけれど、自立して意思表示ができてもアイテムとして収納できてしまうマンドラゴラたちは作物扱いなのだと実感する。
私以外にもパースニップの魔法使いが現れたとして、意思を無視して出荷してしまう人もいるのだろうな。
人それぞれのスタイルだから否定することはないけれど、私の農場で実った子はなるべく意思を尊重するようにしよう。
ポルカの街ではプロバさんを見かけなかった。
行商人だしこの街での商売を終えて他の街へ旅立ったのかもしれない。
クリエさんの店に伺うと、効果が増えたパースニップ・ビートに目の色を変えて、再度の購入交渉をされた。
効果が増えるたびに倍々で上がっていく価格のことを伝えてみたけれど怯むことはない。
どうやら開発したパースニップ・ビート染料を同業者に売るだけでかなり懐が潤っているらしい。
そういえば染料もパースニップ関連商品なので、クリエさんが同業者や客とやりとりした金額の1%が私の懐にも入っているはずだ。
作物を売って得る通常の収入が大きすぎるため収支の明細をチェックしてないけれど。
最近は別の色の染料を作れないか模索しているという話をクリエさんとしていると、アイテムボックスから出してくれ、と言う子が出てきた。
言う通りに出してあげたマンドラゴラを見てクリエさんが唖然としている。やはり大変珍しいものらしい。
マンドラゴラの言うところによると、本格的でなくていいのなら、既存のなにも効果がない染料に自分を混ぜて効果付きの染料が作れる、とのこと。
それを聞いて遠慮をするようなクリエさんではないのでマンドラゴラを抱えて光の速さで奥の部屋に消えていったし、戻ってきたときには充足した顔で帰ってきた。
流石にマンドラゴラの値段を伝えたら今度は怯んだけど。
1体で家が建つからね。
かなり悩んで今回は諦めることにしたようだ。
さっき作った染料でしばらく頑張って、お金が貯まったらまた声をかけてくれるらしい。
街から帰ってきたらまたマンドラゴラが増えていた。
全く自重するつもりはないらしい。
今は言うこと聞いてくれるけれど、そのうち下克上されそうだなと思う。
数の上では最初から負けているので、そのときはそのときだ。
いつの間にか家に増えた鍛冶場で古い道具を直すマンドラゴラや、キッチンで調理を行うマンドラゴラ、削った木の棒でなにか訓練しているマンドラゴラ、研究室で実験をしているマンドラゴラ。
そのうち農場がマンドラゴラたちによって小さな街のように機能する日が来るかもしれない。