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クエストクリアと新企画

「アルビダさん。ちょっと革を染めさせて欲しいんですけど」


「おじさんと私の仲だけど今日は勘弁してくれない? 仕上げに使う油が切れてんのよ」


 クリエさんに連れられて行った先は革職人さんの工房だった。気だるそうに答えるこの大柄な女の人が職人のアルビダさんらしい。

 使い込まれた金槌持ってるし、なんだか強そう。


 ところで油なら手持ちにあるけど食用でも使えるのかしら?


「横からすみません。油ってこういう油でも大丈夫ですか?」


 パースニップ・ナッツから作った油を手渡すと、アルビダさんは怪訝な顔をして受け取り、なにか色々確かめながら、徐々に表情を変化させていった。


「かなり良さそうだ。これはいただいても?」


「はいどうぞ」


 クリエさんがなにか気付いたようにこちらを見た。

 私が育てた油ですからね。多分似たようなことが起きると思いますよ。



 起きました。


 革に油塗り込んだだけで効果つくとかあまりにも手軽すぎて、頑張って染め物をしていたクリエさんが見るからに落ち込んでいる。

 そこは大人なのですぐに調子を取り戻して、交渉に入ってきたけど。


「では定期購入させていただけますね?」


「まあ、そうなりますね。とりあえず必要数を割り出してください。私は大体の出荷可能数を出しますので」


 決まってしまったものは仕方ない。相手はゲームシステムが用意している人間なのだから破産することはない、はず、だといいな……


「それ私も噛ませて。この油を定期購入したい。定期購入にすれば自動的に油が届くから切らさないし」


 そんなに頻繁に商売道具欠品させてる人と定期購入契約結んでいいものだろうか?

 在庫管理ってすごく大事よ。

 信用問題にも繋がるからね?


「腕は申し分ないんですよ、アルビダさんは」


「それ以外は?」


「悪い人ではありません」



 そんなアルビダさんとも定期購入契約を結んだところで、アナウンスが鳴り響く。


――クエスト「ポルカの街の産業革命1」をクリアしました――


――以後、定期販売項目がデバイスに追加されます。必ずご確認ください――


 1をクリアしたら2が始まるのかと思ったけれど、そういう訳ではなさそうだ。

 なにかまたプロバさんに会ったら始まるのかな。


 とは言え予定以上に長居してしまったのでプロバさんに会うのは後回しにして早く帰ってログアウトしなきゃ。




「三浦さんと石岡さん、今ちょっと大丈夫?」


 始業そうそう上長が私と三浦先輩を呼び出した。


「先日言ってたエルムジカコラボの睡眠カフェ、社長も先方も好感触で、ただ先に期間限定コラボをやって反応を見てみようって話になったんだけどさ」


「随分トントン拍子ですね」


「この前の工場視察の結果が良かったみたいだね。グッスリさんのお陰でって言ってたけど三浦さん心当たりある?」


「いや全く。向こうの営業さん有能そうだったから偶然じゃないですかね」


 確かに特別なにか工場の人との交流があった記憶はない。

 単純に有賀さんが優秀だったという先輩の感想が正しいと思う。


「それで急だけど3月に期間限定コラボやることになったから、これがまず一点」


 まだなにかあるのかな?


「先方が期間限定コラボやるなら2月にある大きな展示会で宣伝したいから、『グッスリの社員かつエルムジカのプレイヤー』がいたら、近いうちにインタビューしてイベントで配布する冊子に載せたいと申し入れがあった」


 私以外にもエルムジカプレイヤーは社内にいるとは思うけれど、メサルティム開発チームでは私だけ。

 それはほぼ私を指名してきているのでは?


「因みに社長はノリノリで大賛成だ。インタビュー自体は匿名で顔出しも無いようだし、うっかりして多少荒れてもそれで傾くような会社じゃないから是非やってほしいと」


 うちの社長なら、そう言うでしょうね。

 睡眠には誰も逆らえないと公言しながら無茶を色々するお方ですし。


 外堀はとっくに埋められていたので、確認という名の強制イベントではないですか、と思いつつ、後ろ暗いプレイをしている訳ではないので、堂々と受けてさっさと終わらせるしかない。

 そうこうしているうちに上長と先輩が詳細を詰め始めた。

 インタビューはひとりで受けるけれど、うちの会社としても広報になるので、複数部署に掛け合う話にまでいっている。


 もう話に割り込める空気でもないので、私は流されるしかなさそうだ。

 しかし引きこもり農家のプレイヤーのインタビューって本当に宣伝になるのだろうか?

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