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私の名前

今回は少女に名前をつけるだけの回です。後は、多少容姿が分かるかもなあくらい。


「ごちそうさまでした」

「ごちそーさまでした」

私が挨拶をすると、同じように少女が続く。

少女にはソファアに座ってまってもらうことにした。

一応テレビをつけたが、外の情報もらってもあんまり意味ないんだよね。

皿を回収し、洗う。その後は散々後回しにした床の掃除だ。

水の入ったバケツと雑巾を持ってきて、床を磨く。

さっきまで気付かなかったが、少女の足についていた血が床についていたらしく、取るのに少し時間がかかった。

こんなことなら先にやっとけばよかったかとも思うが、最悪この後直ぐ寝れると考えれば、精神的な労力としてはさほど変わらなかったのかもしれない。

少女は、掃除をしている間も黙ってテレビを見ていた。内容に首を傾げているが。

時折、こちらの様子をうかがうようにを見てくる。

そんなに懐かれたか?懐かれる要素そんなに無いと思うが…

掃除を終えたので、バケツを片付けて、リビングへ戻る。

相変わらず少女は黙って座っている。

綺麗に洗ってソファアに座っていると、何処のでも居るような少女にしか見えない。

近くまで歩いて行くと、ぼーっとこちらを見てくる。

…よく見ると綺麗だな、この子。

少しつり目がちな大き目。紅の瞳。高い鼻。

今は可愛いけど、大人になったら可愛いではなく綺麗の方が似合うようになるんだろうな。

じっと見ていると、少女は照れたように顔を伏せてしまった。

「ああ、ごめん。不躾だったわ」

ぱっ目線をそらす。

そう言えばこの子髪の色が白いな。

目が赤くて、髪が白い人が居るって聞いたことあるなあ。

アルビノ…だっけ?遺伝子の突然変異によるやつ。

綺麗だなあ。

白い髪に、赤色の瞳がよく映える。

おっと、少女の鑑賞をしてる場合じゃなかった。

「…今、話しても大丈夫」

突然声をかけられたからか、少女の体がびくっと体がはねる。

その後、少し顔を上げて、こくりと頷いた。

「ありがと。そう言えば自己紹介がまだだったと思ってね」

隣に座ると、…まあ、隣とは言ったものの、間に人一人座れるくらい間はあるが(だってやっぱり少しは恐いじゃん)少女はじっとこちらを見てきた。

?さっきまでとイメージが違う。

もしかして普段は警戒心が強いのかな?

やっぱ、運動したりするとテンションハイになるもんね。

人殺しなんて言う、いかれた事してたからやっぱテンション狂ってたのかな?

それとも少し信頼してくれたから、逆に緊張してる?

後者であってくれると後々助かるんだが…

まあ、今はとりあえず保留しとこう。

「私の名前は鳳 (おおとり)優依華(ゆいか)。優依でも優依華でも好きに呼んでよ。貴方の名前は?」

「…なまえ…」

少女は考え込むようにうつむいた後、少しだけ、首を振った。

「名前、無いの?昔お母さんから呼ばれてた名前とか」

「…わからない。おぼえてない」

「そっか」

覚えてないのは仕方がない。これ以上踏み込むのはやめにしよう。

思い出したくないこともあるからね。

「うーん、でもそれは結構不便だよね。仮で良いなら私がつけるけど…」

そう言うと少女は数秒考えたのちこくりと頷いた。

「…いいの?」

確認のため聞くと、もう一度頷く。

「分かった。じゃあ、もうちょっと待っててね」

そう言って、いつものように、思考の海へ潜り込む。

仮とは言えど、変な名前はつけられない。

うーん、この子は、見た目はとても可愛い…もとい綺麗で、とても純粋で……

気付いたら十分(じゅっぷん)くらい考え込んでいた。

うん、うん、良いんじゃない?

なかなかの名前を思い付いて、一人で意味も無く頷く。

少女は、考えてる間もずっと待っててくれたらしい。

ちょっと待たせちゃって申し訳なかったかな?

「思い付いたよ」

そう言うと少女は期待と一抹の不安を込めた目で見てくる。

「えっとね、()(づき) (せつ)とか、どうかなあ」

少し恥ずかしくて、言葉が尻すぼみになってしまう。

「セツ…」

「うん。雪って描いてセツ」

うむ、我ながらちょっと、うん、まあ、良いと思うんだけどなあ。

「くづき…せつ。うん、おぼえた」

「これでいいの?」

「うん。…きにいった?だっけ…」

「そっか。それならよかった」

実は内心結構心配だったので、その言葉を聞いて大分安心した。

ああ、だが今考えるともっと良い名前があったような…

いや、もう考えるのはやめにしよう。

考えすぎるのが私の悪い癖だ。

雪はしきりに私のつけた名前を呟いている。

…そんなに気に入ったのか?何か、こっぱずかしいな。

少し顔が熱くなる。

ああ、なんだか久しぶりに気を緩めたな。

この街での油断はやっぱり危険だけど、どうか、もう少しだけ、この温度に浸らせて欲しい。





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