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二人の日常の始まり

前回の後書きに書いたようにここから日常回です。

ちょっと無理矢理感はありますが気にせず楽しんでいただけたら幸いです。

「…はあ」

終わった。それにしても疲れた。

返り血でベタベタするし…久しぶりにフロに入りたい。

…死体はどうしよう。

まあ、放っておいても大丈夫かな。

物好きが勝手に持って行くだろう。つくづく、この街は恐ろしいな。

他に誰もいないことを確認すると、家に戻る。

扉を閉め、施錠する。

扉自体特別製なので、正直鍵かけたら玄関からは入れないんじゃないかと思う。もちろん、油断は禁物だが。

一息つき、後ろを向く。そして固まる。

そう言えば、この子のことを忘れていた。

少女はさっきと全く同じ位置に立っていた。

ああ、私さっきここで待っててって言ったね。

家に上がってもらってもいやダメだ!足まで血だらけじゃないか。それに裸足だし。

そういやパンのためについてきたんだったな、この子。

はあ、正直もう関わりたくないけど、ここまで首突っ込んでおいて今更やめますなんてさすがになぁ…

初めから関わらなければよかったかも。でもあれ事故みたいなもんだし、あそこで食料出してなきゃ死んでたかもしれないし。

ううーん…いや、今の現状は仕方のないことなんだ。

そう言って、自分を納得させる。…完璧に納得は無理だが。

「…とりあえず、お風呂入る?そのまま入って汚されても困るし」

「…おふろ?」

少女はきょとんとした顔をする。

ああ、我ながら甘いなあ。

そう思いながら、うなずく

「ちょっとごめんね」

そう言い、少女を抱え脱衣所に向かった。


「あああああ…」

気の抜けたようななんとも言えない声が出る。

脱衣所についたは良いが、少女の足は汚れてるし、その上お湯わかしてないことに気がついてしまったのだ。

とりあえず、浴室に少女を置き、仕方なくフロを沸かしに向かう。

本来ならこんな街で悠長にしてられないが、相当な防犯対策はしてある。

この一時くらい過信させてほしい。

家のフロは遠隔操作で沸かすものなので一度リビングに出る。

さて、今のところ少女はおとなしくしていてくれているが、いつ気をそこなるか分からない。

気を付けていこう。

ガチャ

「ん?」

そんなことを考えていると後ろから扉が開く音がした。

まてまてまてまて。

いや、めっっっちゃくちゃ嫌な予感がするんですけど。

どうかこの予想が外れますように。

顔をしかめながら恐る恐る振り向くと、願いは叶わず、叶って欲しくない予想通り、

…少女が脱衣所から出て来ていた。

「…………っっっ!」

おいおいおいおいおいおいおーい!

待て、それじゃあ浴室まで君を運んだ意味が無いじゃないか!

いや、まあ、私確かに待っててって言い忘れたよ?

そこはごめんね?本当に謝るね?

でも難しいかもしれないけどちょっとは配慮してもらって…いや、一般常識なんて持ち合わせてないような子にそんなこと言っても無駄ですね。

知ってます。知ってました。

そんなことを考えている間に近づいて来る少女。汚れる部屋。

「…おぅ」

もう諦めようか。

だがこれ以上汚されては敵わない。

「ごめんそこでちょっと待ってて!」

そう声をかけると少女はぴたりと止まった。

急いでフロを沸かすセッティングをし、少女を抱えて脱衣所に戻る。

幸い私の足は汚れていなかったのでそれ以上汚れずに済んだ。

浴室に少女を下ろして座り込む。

「ふぅ……………」

長いため息をつく。

…なんで私は、部屋が汚れただけでこんなにも落ち込んでるんだ?掃除が面倒だからです。

謎の自問自答をする。

「…よしっ」

そう言い立ち上がる。

リビングの惨状は……忘れることにしよう。


そんなこんなで現在入浴中である。

少女は初めてなのか、入っていたが覚えてないのか分からないが、始め少し警戒していた。

だが、すぐお風呂の魔力にやられたようだ。

風呂と布団とこたつは下手な魔法より効果あると思う。

…魔法見たことないけど。

湯船につかる前に髪と体を洗った。

ここできつかったのが体や髪についた血だった。

私は先程ついたばかりのものなので、服はダメになったが、体や髪に付着した方は比較的取れやすかった。

問題は少女の方である。

服はもちろん、体に付着したいつの物かも分からない(ただし返り血である)血がなかなか取れなかった。

それ以上に大変だったのが髪の毛で、固まりすぎてばりばりになってる所まであった。

それも長い上、量が多い。

だが、私はこういうことに関しては妥協が出来ないタイプなので、一時間ほどかけて綺麗にとった。

正直、絶対後で切ってあげようと思った。

まあ、そのせいで大分からだが冷えてしまった上、お湯がぬるくなってしまったが。

ありがたかったのが少女が暴れないでいてくれたことである。

正直、めちゃくちゃ抵抗して、最悪の場合殺されるんじゃないかと思っていたので、うれしい誤算だった。

しかし、まさかあんな恐ろしいとまで思った少女が懐いてくれるとは…

もしかして私のこと晩ご飯認定してたりしない?

そう思うととても不安になった。

「ねえ、なんで私についてくるの」

こう聞けば疑われないかな?

頼む、機嫌を損ねないでくれ!

「…ご飯くれた。お母さんみたい」

…んーと、つまり?

「…お母さんとみたいに私がご飯くれたからってこと」

大分脚色して結論を出したが…

少女はこくりと頷く。

合ってるのか。

なるほど、やはりどんな人間でも親の記憶というのは大事なんだな。良くも悪くも。

…私も昔まではよかったんだけどね。

まあ、私のお節介な性格が功を奏したとでも思っておこうか。

こんな街でのお節介って普段はみじんも役に立たないけどね。

と言うより、パンはご飯って分かったのか。

いや、私が食べ物っていって渡したからか?それとも私この子のこと侮りすぎ?

まあ、それにしても、それだけで信頼してくれるとは。

疑うことを知らないのかと、逆に心配になってしまう。

きっとこの子は、危ないほどに純粋で、素直だ。

ぐうぅぅ

突然そんな音がする。私じゃない、と言うことは…

ああ、そう言えばこの子、結局パン食べれずじまいだったな。

「一回出よっか。」

「ん」

脱衣所に戻り、体を拭き服を着る。

少女には私の服を貸した。

さすがにサイズが合わないけど許して欲しい。

それと、脱がせるときにも気付いたけど、この子下着ないんだよね。

さすがに下着となると、シャツは貸せてもそれ以外はなあ。

仕方ない。明日市役所に行こう。

まあ、どうせ明日か来週くらいにはいこうって思ってたしね。

服を着替え終わり、リビングへ行き、汚れた床(忘れていた現実)を見たのち、少女を台所の椅子へ座らせる。

「ご飯作るから待っててね」

「ん」

まあ、床は後でも拭けるが、空腹というのはどうにも耐えがたいものというのはよく知っているので、先に軽く料理を作ることにした。

さて、何を作ろうか。まあ、簡単な焼きうどんで良いだろう。

作りながら思考を巡らせる。

部屋は電気をつけてるおかげでかなり明るい。

この家は窓ガラス及び外壁には異常と言って良いほどの改造を施しているため、昼間でも暗い。まあ、今は夜だが。

外壁、窓ガラスの外面には内側から、合金の板、ドライカーボンを貼り付けてある。

その上、窓ガラス本体は確かナノ…結晶…ロース?まあ、そんなんだった気がする。

それが素材の防弾ガラスになっている。

カーボンが強いのは聞いていたので、それ以上に強い素材と頼んだら何か専門的な説明とともにその…ナノ何とかを紹介してくれた。

何か、家の改造手伝ってくれた彼女は、昔は実用性が何たら言っていたがまあ、今十分使えてるからいいか。

そのおかげかほとんど家が荒らされることはない。

市役所に通い詰めて仕事した甲斐があった。

1つ難点があるとすれば、日の光が入らないことだろう。

まあ、電気は通っているのでそれくらいは些細なことだ。

こんな街に電気代なんか存在できるはずもなく、この街用に発電所を作ったようだ。

他にもライフラインに関わる施設は基本専用に作られてるらしい。(交通はそもそも車や電車なんかがこの街にはもう存在しないので道路や線路はあっても正直関係ない)

だが、それなりに制限はあるので、私は働いた分使用量を上乗せしてもらってる。

どうせ家なんかまともに使わないような奴らが多いから電気は結構余ってるそうだ。

余った分は外に回してるとか何とか。

多少疲れるが、一回働いて一ヶ月安定が継続されると考えれば利点が勝るだろう。

まあ、食料なんかは直ぐにつきるから結局通うことになるのだが。

そんなことよりあの少女のことだ。

そう言えば名前も知らない。と言うより自己紹介すらしてなかった。

…まあ、夕飯の後で良いだろう。

さて、この現状だけ切り取ってみれば、私はかなりやばいやつになってしまう気がする。

まあ、やってることって、名前も知らない女児を家に連れ込んで、一緒に風呂入って、ご飯食ってる…

いや待て相当やばいなこれ。ここだけ見なくても相当やばいなこれ。

だが今更そんなこと言ってもどうにもならない。

まあ、最悪姉妹と言えば何とか駄目だ見た目が違いすぎる。

私こんな美人じゃない。

…そもそもこの街にそんなこと気にするようなやつは居ないか。

己の心配が杞憂だったことを悟り、ため息をつく。

この街では外の常識が通用しないと身にしみて分かっているはずなのに、なぜか外の常識で測ろうとしてしまう。

どこか外への未練が残ってるのだろうか。

そんなもの、無いと思うんだけどなあ。

料理が完成したため、いったん思考を止める。

少女は黙って待っている。

「はい、どうぞ」

少女の前に盛り付けた皿を置く。

「箸、使える?」

試しにおいてみるが、少女は首をかしげるだけだった。

まあ、予想はしてたよ。

とりあえず持ち方を教えてやる。

すると多少はもたついたが、持って挟むくらいは出来るようになった。

もしかすると結構物覚えが良いのかもしれない。決して上手いとは言えないけれど。

私は少女の向かいの席について手をあわす。

「いただきます」

少女はきょとんとしている。

「ああ、何かを食べる前の挨拶。食べ終わったらごちそうさまって言うんだよ?」

私はここに来てからもこの挨拶だけは欠かしてない。無意識にやってることもしばしある。

ただの習慣かもしれないし、どこか義務観念があるのかもしれない。

もしくは、この街でどんどん薄れていく人間性を保とうとしているのかもしれない。

「…いただきます」

不意に耳に声が響いた気がした。

ふっと顔を上げると、少女が私の真似をして手を合わせている。

合ってるか確認するような、不安そうな顔でこちらを見上げてくる。

軽くうなずくと、少女はすこし恥ずかしそうに目を落とした。

なんだか、なんとも言えないような感情になる。

驚いたような、少し恥ずかしいような。…安心したような。

あんな光景を見たせいだろうか、私は少女のことをどこか、一種の化け物のように見て居た節がある。

まあ、今でも苦手意識は拭えそうにないが。

それでも、ちゃんとこの子も人間だと、なんとなく思えて、どこか安心したんだろう。

たったこれだけのことなのだけど。

もしかしたら、この子は根っからの野生児というわけではなさそうだ。

まあ、母親がご飯をくれてた所や、家具なんかを見ても特に不思議そうにする様子もなかった辺りから、もっと小さい頃は家に住んでいたんだと思う。

記憶は無いのかもしれないけど。

考え事は後にし、夕飯を食べることにした。

まあ、いつも通りのできばえだ。

誰かと食事を食べるのも久しぶりだなあ。

少女は箸の使い方に苦戦しながら食べている。

その様子に思わず口元が緩む。

外では、これが普通だったのになあ。

そんなことを考えながら、私は夕飯を食べ進めた。

次回少女に名前が付きます。

これで書き手が楽になります。(彼女とかだとわかりにくいんですよね)

次回もよろしくおねがいします。

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