表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

前途多難に気付く前

なんか、サブタイトルダサい気がしますがスルーをお願いします。

今回は導入の上編みたいなもんなので、こんな感じかぁ、なんて思いつつ見ていただけたらなあと思っております。


ザシュッ

斬撃音とともに紅い飛沫が飛び散る。

自らの血で紅く染まった男は、持っていた刃物を落とし、傷口を手で押える。

「ぐ、ううう」

「………」

その男の前には子供が一人。

男の前に立つと腕を振り上げる。

手に持った物が月光に照らされて鈍く光る。

そして、その腕は無慈悲に振り下ろされる。

……

****年(**5年) *月*日

とある県のとある町で大規模開発が計画された。

それは県だけでなく、国からも支援が出されるとして多くの人が注目していた。

その計画は今までの計画とは一線を画したもので、その計画が成功すればこの国の首都である***なみに発展すると言われていた。

計画は****年(**11年)に実行された。

出だしは上々で、多少の変更などはあったが予想の範疇で、計画の半分ほどが大きな事件もなく終了した。

この頃から、住居地が増え、ライフラインも安定したため大勢の人が移住するようになった。

しかし、計画が三分の二を過ぎた辺りから頻繁に様々な事件が起こるようになった。

始めは三ヶ月に1回ほどのペースだった。

そのときまでは多少の違和感こそあれど皆、気のせいだろう、そう思っていた。

だが、時が経つにつれ事件が起こる頻度が異常に増え、殺人の他にも盗難、暴行など他にも様々な犯罪や動機不明な自殺が起こるようになった。

それなのに住人は()()()異変に気付かなかった。

やっとほとんど人間が異変に気づいたときにはもう遅かった。

警察の必死の調査も虚しく、最終的には『狂ったように』人が人を殺す地獄絵図が完成していた。

取り返しのつかないところまで行ってしまったこと悟った国は、これ以上被害を拡大させないために、街を隔離することを決定した。

そして、様々な方法を用いて住民を誰一人として逃がさないようにし、街を覆うように囲いを造った。

まだ、正気だった街の人すら出ることは許されず、その囲いの中は本当の地獄となった。

その後、そこには犯罪者が無作為に送られ続けるようになり、「外の人間」は皆、口をそろえて言う。

「地獄はあの街のことを指すのだ。あの、『監獄都市』のことを」と。

……

「監獄都市…か」

壊れかけのビルの一室で少女が一人座っていた。

手にはボロボロの新聞を持っている。

「ここはそんな生ぬるいもんじゃあないけどね。言うなら『地獄都市』でしょ」

ははっ、と、乾いた笑みを浮かべる。

…久しぶりに新聞を見た。けどまさか記事がこれとはね。

この記事を見て、外にいたとき聞いたこの街の通称を久しぶりに思い出した。

新聞には、過去にあった大規模開発、今のこの街の元になった計画の記事が載っていた。

まあ、ほとんど読めなくなっていたので読めるとこからの予測だが。

一体何年前の物だろう。よくこれだけの風化で保ってられたなあ。

この計画は確か、私が生まれる46年ほど前に立てられたはずだけど…。

「今は…多分70くらい?元号変わってないならだけど、ってそもそも元号覚えてないや」

まあ、途中経過の記事かもだし。どちらにせよ残っていたのは事実だ。

よいしょっ、と呟きながら立ち上がる。

壊れた窓のそばまで行き、新聞を持った手を窓の外に突き出す。

そのままぱっと手を離すと、新聞は今の私にとってなんの価値もない紙へと変貌し、風の流れに飲まれ見えなくなった。

「はあ」

ひとつため息をつくと空を見上げる。

この街で空を見上げると、真っ先に目に入るのは青い空ではなく、鳥かごのように放射状に伸びた鉄線だ。

たまに青く光ったように見えるのは流れている高圧電流のせいだろう。

私たちが逃げないよう、威嚇しているように見える。

「…そんなに威嚇しなくても逃げりゃあしませんよ」

フッと、鼻で笑う。

ぐぐぐっと体を伸ばし、一息つく。

「喉渇いたな」

からこれ何時間ほど外出していただろう。もしかしたら何日かもしれない。

…帰る家が無くなってる可能性もあるが。

まあ、そうなったら仕方ない。空き家でも使わせてもらおう。

安心して何かするなんてこの街ではほぼ不可能だし、最悪雨風さえ防げれば良い。

だからといって盗られて良いわけじゃない。頑張って改造したし、簡単に盗られちゃ困る。

ポシェットから折りたたまれた紙を取り出し、広げる。

この紙は、街の情報を載せた私自作の地図だ。

簡易的ではあるが、この街で生きて行くには十分の情報は載せてるはずだ。

「ここから近くて占拠されていない水道は…」

この町には一応、水道やガスなど生きるために必要な最低限の物は外から供給されている。

とはいえこれだけ治安が悪いのだ。

水道、食料の占拠などいつものことだ。

「そう言えばこの前、ここの水道の人が殺されてたな」

だがもちろん、占拠すればそこの水道は自由に使えるようにはなるが、別の占拠したい者や水を求めた人間に殺されることもある。

一時の気休めをとり、死を待つか、確実性などなくとも、生きる道を選ぶかにどっちかだ。

「新しい人になったのかな…まあいいや」

目的地を決め、地図を閉じる。

「いざとなれば、殺してしまえば良いしね」

自分ももうこの街の住民か…

昔はこんなこと思ったこともなかったのにな。複雑だ。

心が薄暗く陰る。

様々な感情が乗った本日何度目かのため息をつき、目的地へ向かうため歩き出す。


ビルを出て、大通りに入る。

周りは廃墟だらけで、一部出入り口には、柄の悪い人たちがたむろしている。

極力目を合わせないように、前を見ながら目的地へ向かう。

まあ、目を合わせなくとも絡まれるときは絡まれるのだが。

少し歩いて行き、右折して小道に入る。

小道とはいったが、車二台入れ違えるくらいの広さがあるからそこまで細くはない。大通りが大きすぎるのだ。

そのまま小道を歩くと、公園の入り口に車両止めのポールが見える。

車両止めと言っても片方はひん曲がって、もう片方は紙みたいにぐしゃぐしゃになっているため、正直その役割は果たせないだろう。

そもそもこの町に車はもうないのだが。

公園に入ると直ぐ水道がある。

近くまで寄って、いつものように蛇口をひねる。

ざーっと水が流れ始めたら、直ぐ口をつけず数分放置する。

直ぐに口つけて体壊しても困るからだ。

毒でも仕掛けられていたらたまったもんじゃない。

もったいないとも思わなくは無いが、自分の命には代えられない。

放置したのち、持参したペットボトルに水を入れて、匂いや味を確かめてから飲む。

水ひとつ飲むのにこれだけ警戒しなくちゃ行けないというのは不便だが、飲めるだけありがたいというものだ。

飲んだ後、持参したもう一本のペットボトルに、今日分の水を入れる。

さて、今日は何をしようか。

昨日はその辺を散策していたが、あまり良い物はなかった。

遺体の所持品などにたまに使えるものや金などがあるが、この街の人間はがめついので基本ほとんど残っていない。

食料は今のところ問題ない。最悪二日くらい食べなくても何とかなる。

日がもうすぐでちょうど北側に昇りきる。…つまり今は十一時前後か。

適当に散策して、…今日は久しぶりに家に帰ろうか。

……

それから四、五時間ほど歩き回った。

何か大きな収穫があったかと言われれば特には無い。

しいて言うなら遺体の所持品から五千円手に入れたことくらいだろう。

外ではなかなかの大金だったが、この街で金というのは正直あまり役に立たない。

使う場と言えば、市役所(私が勝手に呼んでいる。正式名称は忘れた)で、外から品物を買うときくらいだろう。

けど、それも対価分働けばもらえるし、正直私からすれば本当に必要ない。

だが、食料分儲けたと思えば得した方だ。

…遺体あさっている時点であれだが、気にしていてはここでは生きていけない。

ふと、強い血の臭いがしたのでそちらを見る。

「うっわ…」

それは細めの路地で人二人が横に並んでぎりぎりくらいの所だった。

そこに、大量の死体が倒れていた。

これだけ血の匂いがすることから殺されてまだ間もないのだろう。

いくらなれているとは言えここまで来るとさすがに私も引く。

「…ご愁傷様です」

さすがに、この遺体をあさる気にはなれず、その場から直ぐに立ち去った。

「あれやった犯人とだけには遭遇したくないなあ…フラグじゃなからな?」

一人そう呟き、私にしては珍しく本気で願った。


いかがだったでしょうか?

少しでも面白いと思っていただければ幸いです。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ