ほのかな望み
なんとかがんばって4話まで連続投稿できました。
少ないですがアスカの発言や態度に注目です。
『中隊長、もうすぐ到着します。』
分隊長の兵士がザンクに伝える。大型の馬車5台での走行による騒音で俺達は仮眠すら出来なかった。だがその代わりといってはなんだが、食料には困らなかった。
『お前達も運が良かったな、魔獣王の差し金から生きていられたんだ。相当ついてるぜ。』
『魔獣王だと?』
バルターの目の色が変わった。
「魔獣王」とは現在この世に未だ28体生存している強力な魔物のことである。この魔獣王を倒すことでそれぞれの魔物が持つ特殊な結晶、即ち「心」を手に入れることができるのだ。
『あぁ、ライトウェルター様の経綸によれば近年の魔物の活動は激しくなるとお教えになられている。まぁ今回に関しての被害は決して軽くはない。痛ましい事件だ。』
あんな場所で魔獣王が動いていただと。何かの前触れか?この考えに神は関係ない、ただの持論だ。
『着きました、開門!!』
木で出来た門がベルの音と共に開いた。バルターはここ、アンドレールへ来るのは初めてではない。深い因縁があるのだ。
『お帰りなさいませ。』
この言葉が数多く飛びかった。加えて民衆は、深々と頭を下げたのだ。やっぱり俺は気に入らないんだ。ここまで人に従属する光景が。
『知っているだろうがお前達、城内に入る時に前に体を浄めて貰うぞ。』
『あぁ、分かってるさ。アスカ、お前も出来るな。』
『出来ない。』
俺らが乗っている馬車の中の空気が変わった。
『そうか、君は「未神の子」なのだな。良かろう、ならば作法を私の部下が教えさせて貰う。』
ライトウェルターには特殊な作法、行事がある。ライトウェルターを奉っている掛軸と、イスノメピックを奉っている木造がある間に入るには浄まった水、又はそれを含んだ布で体を洗う必要があるのだ。
王都では城の中で神々は崇拝されている。
アスカはザンクの女の部下に連れられ、ザンクが保有する準道場兼休憩所の体を浄めるための個室に入っていった。
俺も分隊長から案内された個室へ行ったが作法の指導は拒否した。俺は知っているのだ。この作法を。
『またやる羽目になるとはな。』
バルターは呆れた表情を浮かべながら武器と鎧を外した。
しばらくして俺は体の洗浄を済ませた。が、まだアスカの姿がない。何か揉めている声が聞こえる。
『嫌、触らないで!』
アスカが叫んでいる。俺はただならぬ事態だと把握しアスカが入っていった個室へ走った。
『どうした、大丈夫か?』
扉を叩く暇もなくアスカが個室から出てきて俺の後ろに隠れた。
『どうしてですか?服を脱ぎ水を浴びるだけで良いのですよ。』
『やめて、近寄らないで。』
アスカと女の部下が対立している。これは何かありそうだな。
『俺は元「既神の子」だ。俺にこの子に作法を教えさせてはくれないか?』
『そういうことなら、まぁいいでしょう。裁かない想見,許す想見,責めない想見が我々のモットーですから。』
『ひとまず事は治まったな。アスカ、腕だけなら水で洗えるか?』
アスカはうなずいた。これで取り敢えず崇教という1つの希望が持てた。
アンドレールに昼頃に着いたので日も暮れかけそうだ。
『そろそろ、城へ向かうぞ。』
ザンクが迎えに来た。 ここからが重要だ、バルターの内心は興奮と冷静さが入り交じり落ち着かずにいた。
城へ向かっている最中も城内へ入ってもアスカは俺から離れない。
2階へ上がり神々が奉られている場所、「御神所」へ今から入る。
『アスカ、今からやる事や起こる事に何も疑問を抱くな。深呼吸しながら、俺から離れるな。』
アスカはより一層しがみついた。
御神所に入ってまず目に入った光景は、6人の斧を持った戦士だった。
この話には「斧」に重きをおいています(戦闘に花を添えるため)。
宗教を嫌うバルターが崇拝している人々の中にいるのが「ポイント」です!