忌まわしい帰還
今回は伏線回です。あまり動きがないので短いですが、次の話では物語を大きく動かしたいと思っています。
魔物の襲撃を受けた集落の報告を受け、王都より調査団が今朝より派遣されていた。
『ここで休憩でもするか。』
バルターとアスカは最寄りの街へ向かう途中にあった森林の小さな湖で非常食を食べていた。
『お前、年はいくつだ?』
バルターは世間話程度アスカに話しかける。
『15です。』
短髪の薄いピンク、金色の瞳、身長は160㎝くらいの身なりをしている彼女は、未だあの惨劇の恐怖からか一言ずつしか喋れていない。
『そこの武人、1つ質問しても良いか?』
話しかけて来た兵士を一目でバルターは王国の調査団だと判断した。
『別に、構わないが。』
『良かった、昨日この先で魔物に襲われた集落があると言伝を預かったのだが、何か知らないか?』
『この先にあった村や里の住民は全滅、見るも無惨な状態だったな。』
『ふむ、そうか。分かった、ありがとう。ん?あなた、その身なり、まさかとは思うがその魔物の襲撃を生き延びたのではないのですか?』
感の鋭い奴だな。いや、この剣を見れば一目瞭然か。
『あなたには参考人として我々と共に王都に来て貰う。宜しいな?』
気に食わないな、アスカの為に安定した生活を送らせたいのに、まさかあのアンドレールに行く羽目になるなんて真っ平御免だ。
『悪いがその申し出には、』
『隊長!ザンク中隊長!!』
話を聞くということが出来ない奴だ。そうだ、俺は良く知っている。アンドレールの連中がどういう奴かを。
『どうした?何かあったのか?』
奥の木の影から大男が出てきた。しかも、真っ赤で巨大な斧を携えて。
『報告します。只今、昨日報告にあった魔物の襲撃を耐えて生き延びた2名の人物を発見致しました。今から連行つもりであります。』
『何、それはまことか?不幸中の幸い、いや、幸運の御守護を賜ったと言うべきか。』
『いや、だから俺たちはただ現場を見てきただけで他には何も...』
俺はは抵抗した。アスカをこいつらに関わらせたくない。俺は神を信仰や崇拝している奴等を蔑視している。
この世界には2つの神がいる。1つはライトウェルター、2つ目にイスノメピックだ。
アンドレール王国は神聖王国なので、この2つの神を崇拝している。バルターはこれが解せないのだ。
『こんな所で休息するくらいなら我が隊の馬車に乗って王都で休むと良いだろう、王都には私が管理する準道場兼休憩所があるからな。』
こうなったらもう駄目なんだ、こいつの話の筋道は困っている様に見える人を見捨てる事が出来ない所に在る。いや、逆に捉えればアスカの心の傷を癒せるかもしれない。俺は反対だがな。
『分かった、宜しく頼む。』
こんな形であそこに帰る事になるなんてな。バルターは大きなため息をつき、重い腰を上げた。
まだまだ説明や解説をしたい所がたくさんあります。
新キャラもどんどん出していきますよ!!