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銀色の雲  作者: 火曜日の風
6章 異世界冒険譚?
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16話


「大丈夫かルイ」


そう言ったのは、先に瑠偉の元に飛び出したクレハだった。心配そうな表情をしているが、彼女の尻尾が左右に行ったり来たりしているのを、瑠偉は見逃さなかった。


「大丈夫ですよ、問題ありません… ですが、なぜここに居るのですか?」


なぜかと聞かれたクレハ、瑠偉とレッグの様子を見に来ていた。と言えるはずもなく、瑠偉から目線を外し、言いにくそうな表情を見せる。それを見た瑠偉は、すこしカラかってやろうと考えクレハを笑みを浮かべながら見上げた。


「確かここは、恋人のデートスポットでしたねぇー、そう言う関係でしたか。デートの日にちかぶっちゃいましたね」


瑠偉は笑みを浮かべたままクレハに一歩近づくと、笑い声が聞こえそうな顔つきでクレハを見つめた。


「なななな、なに言ってるんだ。違うぞ、偶然通りかかっただけだ。そう偶然だ」


前にせり出した瑠偉を避ける様に、クレハは後退し両手を前に出し左右に振り、違う事を強調した。しかし、顔は明らかに動揺している表情だった。そこに、遅れてガフがクレハの横に到着した。


「本当に偶然だ。だよな! ガフ」


クレハは横に来たガフの気配を感じ、彼の肩に手を置き同意を求めた。クレハと瑠偉の会話を聞いていなかったガフは、突然振れら口を半分開けクレハを見た。


「は?」

「は、じゃない!」


ガフの鈍さにイラっとしたのか、クレハはガフのすねを素早く蹴った。


「イッタ! 何するんだクレハ!」


突然の痛みにガフは、すねを抱え上げ一周回るとしゃがみ込む。そして、涙目ですねを擦り始めた。


「とりあえず、偶然来ていたと言う事にしておきましょう」


瑠偉の後方からララの声が聞こえた。その声で皆の視線はララに集った。真っ先にクレハは、ララが存在が気になり瑠偉をかき分け、ララに近づいた。


「おまえ、どこにいたんだ? 馬車の陰から突然現れたけど、周りに人影どころか、人の気配すらなかったぞ?」


偶然通りかかった設定を忘れ、クレハはララに問いかける。ララはクレハに近づくと、彼女の肩に手を置きクレハと向かい合った。


「おかしいですね、偶然通りかかったのでは? まさか、隠れて初めから見ていたのですか?」


ララの言葉を聞いて、我に返ったクレハ。ララの手を振りほどき、レッグの前に歩み寄った。


「そうだ、レッグの状態はどうだ? 大丈夫か? 怪我してないか?」


クレハは地面に膝をつくと、レッグの顔を優しく触り瑠偉達の方を見た。その表情は、複雑だった。


「大丈夫ですよ、気を失って寝ているだけです」


瑠偉はクレハの問いにすぐさま答えた。瑠偉の答えに安心の表情を見せるクレハ、そんなクレハを見て瑠偉は… クレハさんは、隠し事をできないタイプの人かな。思ってることが表情に出過ぎですね。と思うのであった。


「どうするクレハ?」


ガフは想定外の展開だった様で、クレハに駆け寄り小声でクレハに問いかける。


「私に聞くな… どうする?」


当然クレハも、この展開は考えていないのでどうするか迷っていた。クレハとガフは、お互いに見つめ合い固まってしまると、しばらく静かな空間に、風に揺れる木の葉の音が流れ続けた。


「ハーイ! 茶番は終了です!」


場を見かねて、瑠偉は手を叩き言った。パンと言う音ともに、全員が瑠偉を見る。


「レッグさんが、起きるのを待ちましょうか? ハーブティでもどうですか?」


瑠偉はそう言うと、水を沸かしている場所に歩き始めた。クレハとガフも、瑠偉の近くに寄り添った。その後をララがゆっくりと瑠偉の背後に進すむと瑠偉に話かけた。


「お嬢様にお知らせです。残念ながらお別れとなりました」

「え?」


背後から聞こえたララの声に瑠偉は、素早く振り返り見上げた。いつもの様な無表情だが、下から見上げる姿は、なぜか笑っているように見えた。


「諸事情により物語の急展開が発生しました。私はマスターの側に、行かなくてはならなくなりました。心苦しいですが、お嬢様は、ここで一人で過ごしていただきます」


一人で過ごす。と言う言葉で瑠偉の頭の中に、今までの出来事と、これからの生活が過った。これはますい。と思った瑠偉は素早く中腰状態になると、ララの腰のあたりに力強く抱き着いた。


「絶対に離さないから! 一人はいやぁ!」


突然取り乱す瑠偉。ガフは意味が分からず呆然となり、クレハはララに詰め寄った。


「まて、どういう事だ」


近づいたクレハが、ララの肩を力強くつかむ。ララの体を初めて触ったクレハは、その硬い感触と、微動だにしない体に違和感を感じた。ララはクレハの問いに見向きもせず、瑠偉の肩に両手を置くと瑠偉を引きはがそうと力を込めた。


「ちょっと! 離そうとしないで! 絶対ついて行くから!」


諦めたのかララは、右手で瑠偉の頭を撫で始める。


「お嬢様、現代知識で異世界無双です。ウハウハですよ?」

「そんな都合よくうまくいかなからー! 現実は無理だから、絶対いや!」

「まぁ、いいです。連れて行きましょう。と言う訳で、皆さんとはココでお別れです」


ララは肩に乗っているクレハの腕をつかむと、自身の前に持ってくる。そしてクレハの手に小さな革袋を載せ、両手でクレハの手を包み込んだ。


「こちらはお詫びの品です、お納めください」


クレハの手に革袋の重みが伝わった、握りしめると覚えのある感触、お金だった。クレハは急な展開に着いて行けず、ララを呆然と見つめていた。


「実は私達は、この世界の住人ではありません。諸事情でこの世界に来ています。少し早いですが、ここでお別れとなります。レッグさんには、よろしくお伝えください」


ララを手を広げるとクレハに向けた。自身なりの別れの挨拶として


「それでは、もう会うことは無いと思います。では・・・」


ララは転移の準備を始める。そして、思い出す様にクレハに最後の言葉を送った。


「そうそう、近日中に空を覆いつくすような巨大な船が出現します。けして怖がらないでください。貴方たちには、なんの危害はありません。とレッグさんにお伝えください」


その言葉と主に、ララと瑠偉は姿を消した。

消えた姿を見たガフは、その場所に勢いよく移動すると、手でその場所を確かめる様に探り始めた。


「おい、クレハ… 消えたぞ?」


唖然と立ち尽くすクレハは、ガフを見た。


「ああ、消えたな…」


ガフとクレハは、何が起きてるか分からず、お互いに見つめ合ったまま時間だけが過ぎていった。



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