表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀色の雲  作者: 火曜日の風
6章 異世界冒険譚?
89/91

14話 犠牲者1号


 アレーシャの宇宙船が攻撃を受けている頃。兼次は右手を上げて、人差し指から光弾を宇宙船に向かって連射していた。


「降りてこーい!」

「降りてこーい、いえーい!」


 兼次が叫ぶと、隣のニアが尻尾をフリフリさせ右拳を上下させ、兼次の言葉を復唱していた。


「降りて来いと言うより、落ちてきそうな勢いだけどね」


 と、呆れ顔の麻衣。そして半口を開けているアディとロディは、その光景を見ていた。兼次の力を知っているリディは、父と兄の見た事のない表情を見て複雑な気分をしていた。

 光弾が宇宙船に当たる爆発音で、村中の人々が兼次の元に集まってくると、全員がアディとロディと同じ様に兼次達を見て固まっていた。その中の一人の男性が、上を見上げ宇宙船に向かって指を向けた。


「おい、あれ… 近づいてきてるぞ!」


 兼次は宇宙船が近づいているのを確認すると、攻撃をやめた。宇宙船は徐々に地上に近づき、兼次達の10mほど先の空き地に着陸した。全長20mほどの円形の宇宙船である。中央の一部分が割れると、地面に降りる階段が出てきた。その中から、アレーシャが姿を現した。

 アレーシャは兼次の姿を見ると、素早く走って彼の元にたどり着き膝を地面に着け彼に頭を下げた。


「申し訳ありません。けっして、けっして監視していたわけではありません」

「その程度で怒らねーよ」


 兼次の隣にいるニアは、アレーシャと兼次を交互に見比べ始めると、兼次に問いただした。


「かっちゃん、神様が頭下げて・・・」

「ニアよ、神など存在しない。いや、存在しないなら、私が神である」

「まじなのー!」

「まじだ、(うやま)えよ?」


 ニアは兼次を、尊敬の眼差しで見始めた。そんな2人を冷ややか視線で麻衣が言った。


「はいはい、ドストエフスキーね。パクりね」


 兼次は、素早く振り返り麻衣を見た。


「事実でしょ?」

「っく」


 ニヤニヤ顔の麻衣を見た兼次は、不満の表情で再びアレーシャの方を振り返る。


「お前、名前は?」

「はっ、アレーシャと申します」

「アレーシャよ、事情は知っている。教団本部はいつ頃来る?」

「はい、明日には到着いたします」

「明日か・・・ 早いな・・・」

「この惑星には、ゲートが設置されていますので・・・」

「まぁ、そんなことはいい。アレーシャ、スーナの種籾持ってないか?」


 アレーシャは、スーナの種籾と聞いて驚き、顔を上げて兼次を見た。表情は変わらなかったが、見上げたまま固まっているようで、驚いている様子だった。


「持っているのか? と聞いている」

「っは、はい。持っております」

「買い取るから、売ってもらおう」

「は、はい・・・ 問題ありませんが・・・」


 アレーシャは、どうやって取り入るかを考える間もな兼次の前に来た。ゆえに何を言おうか迷い、兼次を見たまま黙り込んでしまった。


「どうした?」

「な、何でもありません。取ってまいります」


 アレーシャは立ち上がると、重い足取りで宇宙船に向かって歩き始めた。アレーシャが宇宙船に入り姿が見えなくなると、麻衣が話しかけた。


「アレーシャさん、何か言いたそうだったけど?」

「惚れたのか・・・ だが、爬虫類は抱けないな」

「違うと思うなー、なんか思いつめた表情だったよ?」

「俺には違いがわからないな。ニアは、何か感じたか?」

「うんーー、わかんない」


 兼次はニアの頭を撫ぜる、その行為にニアは笑顔で答えた。


「なあ、お前は本当に何者なんだ? あれと知り合いとか・・・」


 アディが兼次に話しかけた。兼次は振り返り、アディを見る。


「一言で言えば、至高の存在かな」

「しこうの・・・ そうざい? 食い物か?」

「惣菜じゃねー、存在だ。お前らは、教養レベルが低すぎだぞ。いいかアディ、俺は世界で一番偉い、そして最強だ。そして、お前たちは俺の側にいるだけで、永遠の繁栄が約束されるだろう」

「想像できんな・・・」


 そこに麻衣が、2人の会話に割り込んできた。


「拳で語りあえば、全て解決よ! バトルイベントだね」

「アディ、気に入らないなら、いつでもこい! 相手になってやる」

「村の連中に、そう言う考えの者もいるのも事実。いずれ、そう言う事になるかもな」


 そんな会話の中、宇宙船の出入り口にアレーシャが現れた。両腕に2個ずつ大きな袋を抱えていた。それを見た麻衣が、兼次に話しかけた。


「なんか、凄い軽そうに持ってるね。あんな細身の体で」

「さすが、爬虫類と言ったところか」


 アレーシャはゆっくりとした歩調で、兼次の前にたどり着くと抱えていいる袋を地面に置いた。袋は大きく膨れ上がっており、軽く見積もっても1袋60kgはありそうな大きさであった。


「お待たせしました」


 アレーシャは、そう言うと再び跪いた。

 兼次はポケットの小袋を出し、中から豆金を1個取り出すとアレーシャの前に手をだした。


「ほら」


 アレーシャは手を出すと、兼次の手から豆金が転がり落ちた。彼女は、それを見て半口を開け兼次を見上げた。


「え?」


 後ろから麻衣が、その光景を覗きこみ兼次の耳元でささやく。


「うわー、現地のお金で払うんだ、しかも豆金1個。アレーシャさん、可愛そすぎ」


 兼次は顔を横に向け目だけで麻衣を見た。麻衣に言われたように豆金1個の支払いでは、さすがにマズいと感じたのか気まずい表情を浮かべた。


「アレーシャ、持ち合わせがそれしかないのでな。何か欲しいものがあれば、用意しよう」


 アレーシャは、その言葉を待っていたかのように語り始めた。自身の生い立ち、種族の連合での立場を詳細に話した。しかし、兼次は話が長くなりそうに感じ、途中で遮った。


「回りくどいな、簡潔の延べろ」


 兼次は強い口調で言うと、アレーシャは体を震わせ頭をさらに深く下げた。


「はい、一族一同配下に加わえて頂けないでしょうか」

「なるほど、教団を通してじゃなく、直接は部下になりたいわけか」

「はい」

「わかった、加えてやろう」

「ありがとうございます」


 そんな光景を見ていた麻衣は、アレーシャに聞こえない程度の小声で独り言を言った。


「あーあ・・・ 丸投げ王の被害者が、これから大変だよー・・・」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感想とか、評価とか頂けると励みになります。よろしくお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ