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銀色の雲  作者: 火曜日の風
6章 異世界冒険譚?
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13話 それぞれの思惑 4


アレーシャとラールス・モンサントが会話をして居た頃、地上では食糧問題について論議がされていた。ルサ族との戦争問題は、起きた時に考える。と言う何時もの兼次の発言により、まずは先に食の問題を解決しよう、と言う訳である。

畑の管理を行って責任者のアディ、そしてロディとリディ。この村の重要人物たちが集まった。


「答えが出ました。不作の原因は、連作障害ね!」


アディから畑に関する説明を聞くと、麻衣が右手の人差し指を天に向け答えた。


「なんだ、連作障害とは?」


とアディが麻衣を見ながら答えた。アディ自身はルサ族に対して、最初はいい感情は持っていなかった。しかし、麻衣と兼次の自身に対する態度、ルディやリディに対する接し方を見ていて、少しずつ心を開き始めていた。

アディの質問に麻衣は、彼の方を向くと距離を詰め彼を見上げた。


「ちっ、ちかい」

「アディちゃん、いい質問ね! 連作障害とは、同じ作物を連続して育てると大地から特定の栄養が足りなくなり、発育に障害が出る現象よ」

「大地に栄養だと? 水と日光だけで育つんじゃないのか?」

「ふふふ、大地にも栄養があるのよ! 例えば落ち葉などが分解されて、大地に吸収されて栄養になるのよ。ちなみにそれを肥料と呼びます」


麻衣は腕を腰に当て、さらにアディに近づいた。アディはよろけながら、麻衣から一歩下がった。


「な、なるほど。その肥料って物を撒けばいいのか?」

「もう成長しきってるから、今からじゃ遅いかなー」

「しかし、今から作り直すにしても」

「そうね、収穫は随分先になちゃうわね」


麻衣は腕組をして兼次の方を振り返った。兼次はベッドに横たわり、麻衣を見上げていた。


「どうしよう?」

「結局俺頼みかよ。んー、そうだなぁー・・・ スーナの実があれば解決するな」

「なにそれ?」

「俺の国で毎日食べてるだろ? 白い粒のあれだ」

「あれって米でしょ? 稲じゃん! イネ科じゃん、連作障害は?」

「米の様に見えるが地球の分類学上、あれは豆科の植物だ」

「マーメっ! あれ豆なの?」


麻衣は浮遊島での食生活を思い出す。白いご飯に味噌汁、フカフカのパン、夜巳の作るクッキーやケーキ、どれも自身の記憶にある米や麦の味がした。


「冗談抜きで? お米と麦の味だったよ?」

「味は似ているが、まったく別物だ。スーナの実は、この銀河の高度文明の奴らが食べている、超スーパーフードだ。タンパク質、脂質、炭水化物を程よいバランスで含み、ビタミンやミネラルも豊富だ。そしてグルタミン酸が豊富で美味い。直接炊いて、米の様に食べるのもよし。粉にしてパンや麺にするのもよし。なんでも対応できる万能食材だ。しかも、たった40日で収穫でき、この銀河の愚民共の腹を満たした、奇跡の植物。それがスーナの実だ、ちなみに味噌もそれから作っている」

「す、すごい実ね。で、その種は?」

「持ってきてないな。想定外だし、旅は手ぶらっていったろ?」


兼次の発言の後、皆黙り込んだ。


「ニア、何かいい案は無いか?」


沈黙に嫌気がさした兼次が隣にいるニアに尋ねた。ニアは唸りながら考え込むと、腕を上げ人差し指で空を指した。


「神様に、お願いする!」

「なるほど、奴ら持っている可能性があるな。でかしたぞニア」と兼次は、ニアの喉元を優しく擦り始めた。

「ふああ、気持ちいよー。癖になりそー」


そして、5人は同時に空を見上げた。

その空の上、アレーシャの宇宙船の中。彼女はイラつきながら、ララの返答を待っていた。


「おい! 聞いているのか?」

『お待たせしました。なにか御用ですか?』

「とぼけるな! 知っているんだろ!」

『それでは、合図がありましたら。地上に降りて下ささい』

「どんな合図なの?」

『すぐわかります。あと、くれぐれもマスターの怒りを買わない様にお願いします。特に、あなた方の種族は、攻撃性の強い性格ですので』

「わかっている」

『以後は、マスターの指示に従ってください。以上で通信を終わります』

「まって、もっと詳しく」


「ったく、一方的に」とアレーシャは側の計器を拳をあてた。一呼吸すると部屋中央のスクリーンを見上げた。

「なんだ… こっちを見ているのか?」


地上の5人は、一様に空を見上げていた。その視線は、明らかに宇宙船を見ている様であった。地上の兼次が右手を上げえるのが見えた、そして人差し指を向けるた。するとその先端が光始めるのが見えた。


「ひかっ・・・ まさか!」


アレーシャの言葉と同時に、船内に爆発音と同時に激しい衝撃があった。彼女はバランスを崩しながら、振り返り操作盤の方に向かって歩き気始めた。


「攻撃されてる、にげないと・・・」と彼女は動揺しながら操作盤に両手を置き、機体の操作を開始しようとした。そこに2回目の衝撃が走った。その衝撃で彼女はララとの会話を思い出した。合図があると


「まさか、これが合図なのか? なら早く降りないと」


さらに3回目の衝撃が起きると、続けて衝撃が起きた。彼女は、慌てて操作を始めた。その間にも兼次の攻撃は繰り返され、衝撃の間隔が短くなっていった。操作を終えると、機体は光に包まれ徐々に高度を下げていった。すると兼次の攻撃が止まり、静かな船内に戻った。安心した彼女は、長い息を吐いた。


「よかった、これが合図か・・・」


アレーシャはモニターを見始める。徐々に大きくなっていく5人の姿を見て、これからの事を考え始めるのだった。



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