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銀色の雲  作者: 火曜日の風
6章 異世界冒険譚?
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11話 それぞれの思惑 2


「一気に暇になったな」


 スマホをポケットにしまい込み、ベッドの上で天を仰ぐ兼続。首を曲げ隣のニアを見た。ニアも同時に兼続を見る。兼続はニアに抱き、腕を腰に回しニアの体を触り始めた。


「ダメー! 寝るときに!」


 ニアは体の隙間に腕を入れ、兼続を退けた。兼続の胸に両手を置き、フーフーと鼻息を荒くして、威嚇するような態度とった。


「昼間から、おっぱじめないでよねー。しかも、周りから丸見え!」


 その光景を見ていた麻衣は、横向きに横たわり言った。


「実は、お前も混ざりたい?」

「ないない、これ以上新しい性癖を開発しないんだからね!」


 そんな麻衣と兼次の会話中に、近寄るか人影があった。この村の長のロディである。彼はゆっくりとした足取りで、兼次と麻衣のベッドの間に入り込んだ。


「男達を助けていただき、ありがとうございました」


 長は深々と頭を下げた。兼次は起き上がらず、寝たまま長を見上げていた。


「いいってことよ。俺の国民は助ける。それだけだ」

「はい、しかし…」

「何か問題でも?」

「ルサ族が、報復に来ないでしょうか?」

「たしかに、その線があるな」

「それに食料の問題も残っています」


 立ち尽くすロディ越しに、麻衣の笑い声が兼次の耳に入ってきた。


「ふっふふ、私の出番ね!」


 その言葉と同時に、麻衣はベッドから降り、ロディの横に立った。両手を腰に当て、自慢の態度であった。


「無駄だと思うが、一応聞いておこう」

「無駄言わない! 私が街に行って殲滅! そして食料を奪ってくるのよ! これで、攻められる問題も、食糧問題も解決ね!」

「発想が危険だな。フーチンも倒せないのに、人間殲滅とかできるの?」

「うっ、なら兼次ちゃんが?」

「出来ないことは無い。が、あまりこの惑星の歴史を、他の星の人間が動かすのはよくないな」

「じゃー、どうするの? 仮に攻め込まれなくても、食糧問題が残るわよ?」

「うーん、どうすっかな? 俺の手を汚さず、丸く収める方法かぁ」

「でた丸投げ王! 丸投げする気まんまん! ララちゃん呼ぶ?」

「うーん、ララは瑠偉の護衛だしなー」


 兼次は上半身だけ起き上がり麻衣を見た。


「そんな難問無理よ!」

「まだ何も言ってないだろ! まったく」


 兼次は再びベットで仰向きになると、ばんやりと空を眺めた。青い空の中央、兼次の目線の先に、遥か彼方に銀色の小さな物が見えた。


「あれは・・・ あいつか!」

「え? なに?」


 麻衣とロディは、兼次につられて空を仰いだ。ニアも「なになに」と言いながら、兼次の視線の先を見始めた。


 そんな4人をはるか上空から見ている人物がいた。アレーシャであった。宇宙船の内部で、巨大なモニターを見ながら兼次達を観察していた。


「おもしろいわね」


 4人の姿を見ていたアレーシャは、映像の隣にある数値の並ぶ画面を見る。沢山並ぶ数値、一カ所だけ異常に動きのある数値があった。彼女はそれを見て、渋い表情をした。


「ガイルアのエネルギー数値が、異常なほど上がり続けている。いったい何を吸収しているの?」


 アレーシャは誰に話しかけるでもなく、一人で声を出していた。彼女はモニターの前を離れると、一つの扉の前に立った。扉を開けると幾つかの棚があり、食料が置かれていた。そして部屋の隅に、中身の詰まった大きな袋が沢山積み重なっていた。彼女をそれを見て、つぶやいた。


「スーナの種籾、これがあれば彼らの食糧問題は解決するわね。これはたしか、連合本部を離れる時に持たされた。普段の任務には必要ない物だが、違う! 持たされたことなど一度もない。それに、この種籾をどうするか聞いても、行けば分かるとしか。意味が・・・」


 アレーシャは黙り込み考え込んだ。


 (たしか、あいつ。連合のデータベースに侵入したと言っていたな)


「まさかっ!」


 アレーシャは、大声で叫んだ。


「おやおや、気付きましたか。意外と早かったですね」


 アレーシャの背後から、ララの声が聞こえた。彼女は素早く振り返り、ララを見た。ララは両目を閉じ、アレーシャの前に立っていた。


「お前、連合のメインシステムにも侵入しているのか! まさか、あの一線を越えているのか?」

「連合の条約には、人工知能の処理速度に制限があります。私はその線はとっくに超えています。しかも、現在も増速を行っております」

「危険だ…」

「連合の規定だと、破壊対象になりますね。ならどうしますか? 通報しますか?」


 アレーシャの置かれている立場は、非常に厳しいものだった。宇宙船のシステムを乗っ取られ、仲間を排除し教団に連絡を行った。現在の状態では、連合に連絡も出来ないだろう。仮にスキをついて、連絡したとしてもララの背後には兼次がいる。そうガイルアの脅威がある。連合も攻撃を渋るだろうと・・・


「しかし、なぜ私なのだ? 他にも優秀な種族はいっぱいいるだろう」

「哺乳類至上主義。連合は種族平等を謳っていますが、その考えは高度文明の人種に深く根づいています。アレーシャさんも、感じたことが何度もあるでしょう?」

「だからと言って・・・」

「悪いようにはしない。と言いましたね? もっとも、これから先アレーシャさんは、拒否できなくなりますが」

「どういう事だ?」

「いずれ分かります。そうそう、本国から連絡がきていますよ。では私はこれにて失礼します」


 ララは最後の言葉と同時に、姿が消えた。消えたと同時に、通信の受信音がビー・ビーと船内に響き始めた。



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