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銀色の雲  作者: 火曜日の風
6章 異世界冒険譚?
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2話 長年の癖は簡単には治らない


「おおー、似合ってますよー。ルイさん、可愛いですよー」


 着替えた瑠偉は、ファルキアの前で一回転し、ファルキアに愛想笑いを見せた。


「ありがとうございます。(スカートの丈が、今時の女子高生レベルに…)」

「お嬢様も、今時の女子高生ですが」


 部屋の隅に立っている、ララの声が瑠偉の耳に届いた。瑠偉はララの方を素早く振り向いた。


「思ってないですけど? (っく、なぜ分かる)」

「そう言う事にしておきましょう。続けてください」


 瑠偉はファルキアの方を見た。まだファルキアは、瑠偉を見上げながら笑顔で微笑んでいた。瑠偉はファルキアの微笑みに耐えきれず、少し距離を取るとベットに腰かけた。


 (早く帰ってもらいたいんだけどなー… よし! 早く寝ることにして… )


「瑠偉さん、これでレッグちゃんはルイさんに、メロメロですねー。ふふふふ」


 ファルキアは、上半身を瑠偉に近づけ、右手を瑠偉に差し出すと親指を立てた。


「ははは… そうですかねー(早く話題を変えないと…)」


 瑠偉はファルキアの両肩に手を置くと、近づいている彼女を元の位置に戻した。


「ファルキさん、実は聞きたいことがあるんですが?」

「安心してください。レッグちゃんは、今はフリーですよ」

「一旦、レッグさんの話は、止めましょう。聞きたいことは、なぜ部屋に入る時、ノックをしないんですか?」


 ファルキは、聞いたことない言葉だったのか、首を傾げる。そして、悩ましい顔で瑠偉を見た。


「ノック? ってなんですか?」

「ドアを数回叩いて、中の人に入っていいか、聞く行為です」

「なぜ、聞くんですか?」

「なぜって… 突然入って来られると、困るでしょう?」

「困るんですか?」

「困ります」

「なぜ困るんですか?」

「着替えとか見られたら、困りますよね?」

「困りませんけど?」

「私が困るんです」

「なぜですか?」

「(なぜなぜ子供かよぉー! )とにかく、私の国では、他人の部屋に入る時は必要なのです」

「なるほど… ルイさんの国では、そんな風習があるんですね。私達は、そんな事しないんですよ」

「そうですか… とにかく、私の部屋に入る時だけでもいいですので、ドアを2回叩いて『入っていいいですか?』と訪ねてください。お願いします」

「わかりました。2回叩くんですね?」

「はい、お願いします」


 瑠偉は、ファルキアとの会話を遮る様に立ち上がった。ドアの方に少し移動すると、ファルキアの方を見た。


「ファルイキアさん。私は明日に備えて、早めに寝ますので… 今日はこの辺で…」


 瑠偉はドアの方へ手を向け、ファルキアを出て行くように促す。ファルキアは、それを見ると立ち上がり、瑠偉の側まで歩き立ち止まった。そして、瑠偉の肩に軽く手を置いた。


「じゃあ、ルイさん。明日、頑張ってくださいね」

「はぁ… (何を頑張るんだろう? )」


 ファルキアは、ドアの所でいったん止まると。振り返って、瑠偉を見る「おやすみー」と言うと、ファルキアは部屋から出て行った。

 瑠偉は肩を落とし、長い息を吐く。疲れ切った様子で、ベッドに飛び込む。両手を広げ天井をぼんやりと眺め始めた。


「なんか、疲れた…」

「この世界の人間は、男女比率が4対5で女性のが多いのです。戦争、狩り等で男性は早死に傾向なります。したがって、女性の方から積極的に攻めないと、結婚できなくなります。ゆえの『頑張ってください』なのです」


 部屋の隅に居るララの声が、瑠偉の所に届く。瑠偉は頭を上げ、不満の表情でララを見た。


()()()()()()()! 頑張りませんけどね!」


 瑠偉はスマホを取り出すと、電話帳から美憂を見つけだすと、電話を始めた。


「もしもーし、美憂ぅ。瑠偉だよぉー」

『瑠偉か。すまんな、なかなか電話をする時間が取れなくて』

「いいよ、いいよ。今何してるの?」

『志摩さんと、追試の勉強会だ』

「そっか… じゃ、お邪魔だね」

『すまんな、落ち着いたら電話するよ』

「ごめん、またねー」

『ああ、またな』


 瑠偉は電話を切ると、今度は麻衣に電話を始めた。


「もしもーし」

『はいはいー、どったの瑠偉ちゃん?』

「ところで、いつ帰れます?」

『いやいや、まだ4日しか経ってないけど! はやいってばぁー』

「暇で暇で… 話でもしようかと思って」

『私は、今狩り中ね。あとでいい?』

「狩り!」

『兼次ちゃんに、赤レア全部奪われて、オコオコプン中なの』

「ゲームかよ!」

『ごめん、切るねー』

「まてぇー! …っく、切れた」


 瑠偉は体を回転させると、うつ伏せ状態になり、目の前にスマホをたてかけた。


「しかたないなぁー、映画でも見るかぁ」


 瑠偉が映画を見ようと、アプリを立ち上げた時。画面に【省電力モード起動】と表示された。


「ついにきたか… (電池残量20%、あと10カ月は無理ですね)」


彼女は、悩ましい表情で後方にいるであろう、ララの方をゆっくりと向いた。


「あのー、充電とかできませんか?」

「USB充電なら対応しています」

「ケーブル持ってます。お願いします」


 瑠偉はポーチから、USBケーブルを取り出した。そして起き上がると同時に、ララが瑠偉に向かって近寄ってきた。しかしララは、瑠偉の側まで行かず途中で止まった。


「こちらを、お使いください」


ララは、足を肩幅に広げると腰を曲げ、スカートの端を持つと勢いよくスカートをまくり上げた。瑠偉の目の前に、パンツの履いていないララの下半身が現れた。


「履いてない! じゃなくて、いきなり何してるんですか?」

「お嬢様、変な事を言いますね? 女子に挿す場所と言えば、一カ所しかありませんが?」

「女子! じゃないでしょ…」


 瑠偉は難しい表情でララに近づくと、その前で床に座りララの股の付け根を観察した。瑠偉は下から覗きこむと、その場所にUSB端子を見つけた。


「なぜ、この場所に…」

「女子に挿す場所と言えば、ここしかないですが? 2回目です」

「まぁいいですよ、使いますね」

「初めてなので、優しくお願いします」

「はいはい、ゆっくり挿せばいいんですね! (いちいち、突っ込むのも疲れたわぁ)」


 瑠偉はケーブルの先端を握ると、ララの端子めがけて腕を移動さる。そして端子を挿した。


 その時… 突然部屋のドアが開くと、ファルキアが現れた。


「ルイさーん。さっき聞きわすれ、たあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ファルキアの目の前に、スカートをまくり上げたララの股間に、手を伸ばしている瑠偉の姿が飛び込んできた。


「ふひゃぁー!!」


 ドアの開く音で、瑠偉はビクリと体を震わせ奇声を上げた。そして現れたファルキを見て固まってしまった。


「あっ… ノックでしたね。なんか、ごめんなさい… でも、やっぱり女同士で、それはいけないと思うの…」


 ファルキアは手を口に当て、小声で言うと。ゆっくりと後ずさりし、ゆっくりとドアを閉めると。ファルキアが廊下を走る大きな足音が、瑠偉の耳にエコーの様に響き渡った。


 瑠偉は、両手を床に付け床に寂しく話しかけた。


「さっき、ノックしてくれるって、ゆうたじゃーん」

「長年積み重ねられた行動は、そう簡単に治りませんよ」

「はははっは、もういや… 帰りたい」


 瑠偉は暫らく、肩を落とし床を眺めていたのであった。


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