表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀色の雲  作者: 火曜日の風
6章 異世界冒険譚?
76/91

1話 プレゼント


 ───兼次達が、リディの村に到着した頃にさかのぼる。カキレイの街、宿屋にて


「ねえ、ララさん。先程、電話で女性の悲鳴が聞こえたんですが、何でしょうね?」

「マスターの、リリース アンド キャッチです」


 レッグの屋敷から帰ってきた瑠偉。ベットにうつぶせになり、スマホを操作していた。その近くには、兼次の所から戻って来たララが立っていた。


「へー、そうですか… (離して、受け取る? なんだろう? )」


 興味がないのか瑠偉は、ララの方を見ずスマホを見ながら、ララの話を聞いていた。


「時にお嬢様、明日のデートの件ですが?」

「いい加減に、盗聴止めてもらっていいですか?」

「マスターより、護衛の任務を受け賜っております。盗聴は、安全の為に必要です。それで、明日のデートの件ですが?」


 ララの言葉で瑠偉は首を回し、ベッドからララを見上げた。そこには、いつもの無表情のララの顔があった。


「まさか… 何か事件でも起きるんですか?」

「安心してください。今現在、事件の予定はありません」

()()()! 今、予定って言いましたね? やっぱり、仕組んでたんですね」

「仕込みはありません。膨大なビックデータから解析された、確定予測です。っま、地球の科学力では、まだ無理でしょうが…」


 瑠偉はララの顔を見ていると、その額に<究極のどや顔>の文字が浮かび上がった。瑠偉は、溜息をもらすと、再びスマホを眺め始めた。


「前にも言いましたが。その顔文字、人前でやらないでくださいね」

「それで、明日のデートの件ですが?」

「綺麗な滝の見える場所で、ピクニックらしいですよ。行きたくないですが…」

「いえ、そう言う事ではなく。ついでに初体験データを、頂こうと思いまして」


 瑠偉は勢いよく、起き上がるとベットの上で、足を崩して座る姿勢をとった。


「そんな事しません! 1回目でありえませんし、タイプでもないです!」

「そうですか… 残念です。しかし、いいんですか? 領主で、お金持ち。この世界には学校もないですし、一生遊んで暮らせますよ? 滅多にないチャンスだと思いますが…」

「結構です。こんな星に残りませんよ? 地球に帰りますからね!」


 瑠偉は頬を膨らませて、少し怒り気味でララを見ていた。暫らく無言が続く中、部屋のドアが突然、バタンと勢いよく開いた。


「ルイさーん! ちょっといいですかー」


 勢いよく開いたドアから、セーラ服姿のファルキアが現れた。彼女は右手に、布切れを抱え込み、笑顔で瑠偉を見ていた。

 ファルキアを見たララは、瑠偉の側を離れ部屋の隅まで移動すると、そのまま静止した。


「はぁー、今日は大丈夫でしたね」


 ここ最近ファルキアが部屋に入ってくると、瑠偉とララの変な行為を目撃している彼女。今回は、何事も無く部屋に入た事で、嬉しかったのかスキップで瑠偉の側まで駆け寄った。そして彼女は、瑠偉の真横の位置でベッドに腰かけた。


「聞きましたよー。明日はレッグちゃんと、デートなんですってねー?」


 と、ファルキアは、上半身を瑠偉の方に倒し、口元だけのニヤケ顔を瑠偉の側まで寄せた。


「な、なんで、知ってるんですか?」

「なんと今日は、プレゼントがありまーす! 明日のデートで着てくださいねー」

「はぁ… (話を聞かないタイプの人かー、苦手だなぁ…)」


 ファルキアは、右手に持っていた布切れを、両手で持ち横に広げると瑠偉の前に出した。

 瑠偉の目の前に、プリーツスカートが現れた。それは、丈が30cm位程、5cmほどのヒダを携えたスカートだった。色は光の加減で黒に見えるが、濃い藍色であった。そこに格子状の赤色模様が施されてあった。


「スカート、ですか…(これは私の学生服を、参考に作った物でしたね。話が長くなるとやだし、話を合わせましょうか…) そのデザインは、もしかして?」

「はい、ルイさんの服を参考に作りました。染料はララさんの、アドバイスで新しい技術を導入しました。まだ、この街で誰も履いていない珍しいものですよ!」


 ファルキアは持っているスカートを、瑠偉の方に近づけ受け取るように促した。瑠偉は、仕方なくそれを受け取ると、自身の目の前で広げた。


「えーっと、少し丈が短い気がします」

「聞いた話によると。見えそうで見えない、それが最高だそうですよ」

「ちなみに聞いた話ってのは、ララさんからですか?」

「はい」

「そ… そうですか…」


 瑠偉は満面の笑顔で向かい合うファルキアを、避ける様にララを見るが、いつもの様に無表情で立っていた。


「そして、こちらが上着になりまーす」


 ファルキアは持っていた上着を、瑠偉の前で広げて見せた。それはシングルの襟が付いた、前開きの服であった。ボタンはついておらず、幅の広いひもで閉じる服の様だった。生地の色は素材を風味を生かした黄色。紐の色は薄い赤であった。


「じゃあ、着てみてください」

「えっ、今ですか?」

「はい」


 瑠偉はファルキアの持っていた服を受け取った。ファルキアは相変わらず、笑顔で瑠偉を見ていた。瑠偉は、少し悩む。『あとで、着ます」と言ってファルキアを、部屋から追い出そうと思った。


「後で…」

「今着てください! 着心地とか、確かめたいんです」

「わかりました、着替えます」


 瑠偉はスカートと上着を、ベッドに置くと立ち上がった。そして振り返ると、ファルキアが瑠偉を凝視していた。


「えーっと…」

「どうしましたか?」

「なぜ、見ているんですか?」

「だめですか?」

「だめです」

「大丈夫です。私は気にしません」

「はぁ… (私が、気にするんですよ! と、大きい声で言いたい。けど、今後の為に印象悪くしたくないし…)」

 

 瑠偉は、諦めてファルキアの前で着替え始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感想とか、評価とか頂けると励みになります。よろしくお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ