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銀色の雲  作者: 火曜日の風
5章 寄せ集めの村
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14話 救出


 収容所の門の近くで3人は立ち止まると、麻衣が話かけた。


「ねえ、裏口から忍び込むの?」

「そんな事しねーよ、正面から入るよ。門の前で待ってろ」


 兼次は2人を門の前で待たせ、建物の入り口に向かって歩き始めた。入り口には、軽装な皮鎧に身を包んだ兵士が立っていた。兵士は自身に向かって来る兼次に気付くと、手を前に出し止まれの合図を出した。


「止まれ! 何か用か?」


 兵士の声と同時に、兼次は素早く兵士に詰め寄った。兵士の肩をつかむと、腹部に向かって拳を繰り出した。「ごふぅ」と言う兵士の声と共に、兵士は崩れ落ち地面に倒れた。


「おーい、入るぞ」


 兼次は振り返り、門に居る2人に向かって手招きをした。それを見た麻衣は、小走りで兼次に近寄って行った。リディがついてきていない事に気が付いた麻衣は、振り返りリディを見る。リディは立ったまま呆然としていた。


「リディちゃーん、行くよー!」


 麻衣の声に我に返ったリディ。

「こんなに簡単に…」と小声で言うと、兼次達に向かって歩き始めた。


「ねえ、中の人達はどうするの?」


 ドアを開けようとした兼次を、麻衣が呼び止めた。


「問題ない、対応済みだ。入るぞ」


 兼次がドアを開けると、小さな部屋に出た。6人掛けのテーブルがあるだけの、小さな部屋だった。そのテーブルに、6人の兵士がテーブルに伏せて寝ていた。


「寝てるし…」

「言ったろ、対応済みだ。奥に進むぞ」


 3人は寝ている兵士を後に、部屋の先のドアを開けると短い通路に出た。通路の中央辺りで、兼次が突然止まり左の部屋を指さした。


「麻衣、この部屋のベッドを2個持ってこい。草の上では寝てられん!」

「同感ね!」

「麻衣、任せたぞ。リディは、帽子とっていいぞ」


 リディは右手で帽子をとると、左手で頭の耳を撫ぜ始めた。「ふぅー」と息を吐き、圧迫されていた自信の耳を、気遣い始めると。右手に持っていた帽子が、突然粉々に砕け粒子状になった。それはリディの服めがけて進み、服に吸い込まれると完全に消えた。リディ自身は、昨晩の兼次と麻衣との服の交換で、見るのは2度目になるが。リディは実際に帽子が消える手の感覚が、いつまでも手に残っている気がして、手を顔の近くにあげじっと手を見つめていた。


 兼次は中に入ると、ドアの側にある壁にかかっている鍵を取った。

 続いてドアが開く音で、我に返ったリディが中に入った。リディはすぐに周囲を見渡すと、仲間の臭いを感じ取った。


「みんな・・・・」


 思い詰めた表情でリディは言った。

 入り口の近くの牢屋、一人の男がリディに気が付いた。男は折りの近くに駆け寄り、リディを見た。そして、その隣にいる兼次を見て、露骨に敵意をあらわにした。


「リディ! どうやってここに? それに、その男は?」 

「詳しくは後で話す。今助けるぞ」


「リディ、鍵だ。受け取れ。中の奴らを確認して開けろよ」

「ああ、分かっている」


 リディは兼次から鍵を受け取ると、牢に向かって進んでいった。


「リディ、もう駄目かと思ってた」


 ロウに入っていた男は、檻から手を伸ばして言った。リディは彼の手を握ると、無言で頷き彼を安心させた。


「今開けるからな」


 リディは鍵を使い、檻を開けた。リディと再会した男は、喜び目を涙で湿らせていた。その光景を見ていた兼次、突然背後から異様な気配を感じ取り、素早く振り向いた。


「どど〇波ぁーーーー!!」


 ドコーーーーーン!!!


 麻衣の大きな叫び声と共に、爆発音が響き渡ると。ドア周辺の壁が爆発した。爆発した場所は、白い煙が大きく広がり、ドア周辺の視界を遮っていた。煙が上昇し先が見えるようになると、ドアが破壊され広がった穴から、横向きのベット2個を、頭上に浮かせた麻衣が現れた。


「おいおい、何やってんの? 事件を起こすなって、言ったよな?」

「だって、このベッド、ドアから出せなかったんだもん!」


 麻衣の頭上に浮いている2個のベッドは、壊れた壁から出てくると。兼次の近くに、ドスンと言う大きな音と共に、ベットは床に置かれた。麻衣は、壊れた壁をくぐると不満の表情を見せながら、兼次の側に寄ってきた。


「縦に向きを変えろよな… 空間認識能力ないのかよ…」

「あっ、そっか。てか、女子脳だと普通じゃないかな?」

「確かにな… (次回は、脳でも改造するか…)」


 兼次が振り返る。リディと牢の男、そして他の牢屋からも一斉に顔を出し、呆然と破壊されたドアを見ていた。


「リディ、ちょっとしたトラブルだ、気にするな。続けてくれ」

「あ、ああ・・・」


 爆発の音が気になった捕虜たちは、牢から顔を出すと、リディの存在に気が付いた。各々が牢から手を出し、リディの名前を叫びながら手を振り始めた。


 その光景を見ていた麻衣は「へへへぇ… 犬耳男子がいっぱいぃー」と小声で言うと、スマホを取り出し、彼らに向けると動画を取り始めた。兼次は麻衣の行為をとがめる事もなく、牢屋が並ぶ奥が気になり、その先をぼんやりと眺めていた。


「どうしたの?」

「俺を呼ぶ、若い女の声がする」

「そう? 私は聞こえないけど」

「麻衣、ここで待ってろ。ちと行ってくる」

「うん」


 救出される犬耳男子達の動画撮影に忙しいのか、から返事をする麻衣。兼次は声が聞こえた、収容所の奥に向かって、歩き始めた。



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