8話 お約束のあれ 1
朝が明けた。寄せ集めの村と呼ばれているリディ達の村。
兼次とは別の家に通された麻衣は、兼次と同じように草が敷き詰められた寝床に寝ていた。何時もと大幅に違う感覚に、体の不調により早く目覚めてしまった。
上半身を起こした麻衣、両手を上げて体を伸ばし始めた。首を左右に振りると、コキコキと骨が鳴る音が彼女の耳に入ってきた。
( 体痛いし。うあぁ… 太ももに草の模様の跡が…)
太ももの裏側を見て、線状の後を手で擦る麻衣。ゆっくりと起き上がると、両手を上げ背伸びしながら家を出た。家の前に立ち、兼次の寝ている家の方をぼんやりと眺めていた。
暫らくすると、そこからリディが出てきた。
「ほぱぺがうぁじゃぁ!」
と、余りの驚きで、麻衣の口から変な声が漏れた。
その声を聞いたリディは、声のした方を振り向く。そこには、口を開け腕を変な方向にまげた、驚きの表情の麻衣が立っていた。
リディは麻衣を見ると、気まずいのか麻衣に背を向け、自身の家の方へ向かって走って去っていった。
(うぁー… リディちゃん、朝帰りだぁー…)
と麻衣は考えながら、兼次の寝ている家に向かって歩き始めた。垂れている布をかき分け、兼次のが寝ている部屋に入る麻衣。
「おはよ! 出会ったその日に即肉体関係って、色情星人ここにありね!」
垂れている布を持ち上げながら、麻衣は家の中を見た。麻衣の体を背に、朝日が家の内部を明るく照らしていた。草木が盛り上がっている場所、そこに寝ているはずであろう兼次の姿が無かった。
「あれ? いない…」
「視覚情報は鮮度が命、やっぱ生だな! 太ももさん、おはです!」
地面の方から、兼次の声が聞こえた。麻衣は、直ぐに下を向くと。兼次が麻衣の真下で、仰向けになり、腕を組みながら自信の表情で、麻衣のスカートの中身を見上げていた。
「うひゃ! ちょっと、朝からやめてよね!」
すぐさま麻衣スカートを押さえながら、兼次の視線から逃れ家の中に入っていった。
「それだよ、それ! その恥じらいが、女子の可愛さを27%アップさせる」
器用に体を回転させ、器用に起き上がった兼次。胡坐をかき、麻衣の方を向いた。
「このリディの生着替えを見てみろ! この恥じらいの無い脱ぎっぷりをな!」
兼次はスマホを取り出すと、麻衣に画面を見せリディの動画を見せた。
「盗撮とか… 相変わらず最低っすね」
「と、言いながら?」
「見るけどね!」
麻衣は兼次に近寄ると、スマホの画面に顔を寄せた。
「うおぉー、足なげー! ウエスト細せー! お尻の位置が上向き! なに? モデルなの? スパーモデルなの?」
「負けてしまったな、麻衣…」
「いやいや… 勝負とかしてないから…」
兼次は麻衣の肩に手を置き、頭を細かく左右に振る。軽く溜息をすると、麻衣の肩を軽く叩いた。立ち上がり奥に移動する、そこで横になると手で頭を支え麻衣の方を見た。
「麻衣… 昨日思ったのだが、ここでの食事… 生肉だぞ、しかも血の滴る生肉だ」
「その根拠は、なに?」
「例の事情の時だな… リディの口から血の臭いがした。おそらく、食事でもとったんだろうな。俺達には何も、提供が無かったけどな!」
「そうだね、ちょっとお腹がすいてきたね。しかし、生肉かぁー。せめて焼きたいねー。味付けも、やっぱ薄いのかな? あっ、そうそう。私も、昨日寝ている時思ったの。今日は、例のイベントがあると思うの」
「例の?」
「アディちゃんとの、バトルイベントよ!」
「まぁ… 犬だろ。犬族の集団生活だろ。やっぱ序列を決めないと、気が済まないのか? 麻衣、お前が相手するか?」
「確かに、私は地球人最強だけど。格闘に関しては素人だし…」
「だろうな… 目を閉じて、剣を振り回している時点で、思ったわ」
「ははは… それは忘れてください・・・」
兼次は立ち上がる。
「とりあえず、明るくなった村の様子でも見て回ろうぜ」
「そうだね」
兼次は立ち上がると、家から出て行った。それを見た麻衣も、立ち上がり出て行った。