6話 寄せ集めの村 6
屋根の隙間から洩れる星々の淡い光、リディと兼次を淡く照らしていた。そのおかげもあって、暗闇でも近づけば相手の表情が見る事が出来た。兼次は体を横向きにし、頭を手で支えリディの顔を上から見下ろす姿勢をとると、隙間を詰めリディに近づいた。
「近い! 一回だけと言ってるだろ!」
兼次の顔をまじかに見たリディは、目線を横に長しつつ横を向いた。
「日が落ちたら、何をしているんだ? 明かりはあるのか?」
「暗くなったら、基本は寝るな…」
(それは、それは… 随分原始的な生活だな…)
兼次は、しばらく何も言わずリディを見ている。リディは、その間に不安を感じ横に向けていた頭を戻し、兼次を見た。
「な… なんだ?」
兼次は、それでも何も言わずリディを見ていた。無言の彼を見ているとリディは、男女関係の事の話をする、と言ったのを思い出した。
「ま… まぁ、男と… い… っしょに寝ることもあるな… 言ったぞ!」
リディは恥かしいのか、また兼次から目線を外した。
「そっか。で… お前らの、子供の作れる期間は?」
「年に1回… 寒い時期が、過ぎた頃だ。ルサ族は?」
「俺達と一緒なら。月に1回だな」
「そうか… だから、あんなに増えるのか…」
「あとは… 10人子供が居た場合、男子は何人いる」
「4人か3人だな… いや、もっと少ないかも…」
(なるほど… その男女比だと、一夫多妻になるが…)
「夫婦と言う概念はあるのか? 女が余りそうだが?」
「基本は強い男に、複数集まるな…」
「なるほど… やっぱり野生系の群れ生活なのか…」
リディは、何かの違和感を感じたのか、頭を素早く回転させ兼次を、悩ましい表情で見た。
「やっぱり?」
「その辺は気にするな… 流してくれ」
「まえ… 村に居たトッキア族の女に聞いた事ある。ルサ族の奴らは夫1で妻が1人だそうだな。しかも毎日発情しいて、複数の女に手を出しているそうじゃないか… 今の、お前の様にな!」
「心外だな… 大人の楽しみだよ。リディも、楽しんでいただろ?」
「っ… 知らん!」
リディは恥かしかったのか、体を回転させ兼次に背を向けた。周囲の枯れ草をかき集めると、盛り上がった場所に頭を乗せた。そして、兼次はリディの頭に顔を近づけた。
(なんだろう… 野生臭かな? 変わった髪の臭いだな…)
暫らく沈黙が続くと、その環境に耐えられなくなったのか、リディが話し始めた。
「昔、父が独立して、この場所に住み始めた。その時は100人程だったそうだ。なぜ独立したかは聞かなかったが、この村の現状を見れば予想はつく・・・」
「食料の問題だろ? 狩猟生活なんて、小人数じゃないと成り立たないからな」
「分かるのか?」
と、リディは再び仰向けになり兼次を見た。兼次も頭を乗せていた手を戻すと、リディの頭に回し仰向けになった。
「まあな… 俺達の世界にも昔の記録が残っている。人数が増えると、狩猟生活は成り立たない。そこで作物の栽培が始まる… ルサ族の奴らも、やっていたみたいだが? パンとか知ってるだろ?」
「ああ、知っている。私達も3年前から始めた、最初は何とかなった。だが今年だ、なかなか成長せず枯れる寸前だ。なぜかは解らんが…」
(肥料とか知らないのか? まぁ、知識が無いと農業は無理だろうな。ルサ族の奴らから聞くにしても、敵対しているからなー…)
「たぶん… この村だけの問題じゃない… と、おもう。5年前辺りから、他の部族から移住者が増えた。特に女性と子供が多い、口減らしかもな・・・。しかし父は、追い払いもせずに、すべてを受け入れた。だから周りの部族からは、寄せ集めの村なんて呼ばれてるな。正直、思うところもある。でも私は、そんな父を尊敬している。村の皆も…」
リディは前日の夜から朝にかけての留置所生活、公開処刑場からの宇宙船事件と飛行移動。そして夜の行為と激動の一日が過ぎた。安心して疲れが突然来たのか、目蓋が重くなり話の途中で眠りについていた。兼次も、そんなリディを見ると自身も目を閉じ眠りにつくのだった。