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銀色の雲  作者: 火曜日の風
5章 寄せ集めの村
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2話 寄せ集めの村 2


 深く静まり返った洞窟の一角。長い金髪に聖職者の服を着た女性と、黒のマントと長い杖を持った銀髪の青年が、魔物と呼ばれている一つ目の巨人と対峙していた。


 聖職者は手に鈍器を握りしめると、魔物との距離を詰めると、鈍器で魔物を叩き始めた。魔物は鈍器で撃たれながら、拳を繰り出しすと聖職者は華麗に避ける。巨人の拳は地面に当たり、衝撃波が放射状に広がった。後方にいる青年は、その衝撃波を華麗に避けると同時に、呪文の詠唱を始めた。


「ちょっと、ネカマさん! 鈍器で殴る前衛プリーストってなに? バカなの?」

「麻衣こそ、男キャラ使ってるだろ! むしろ回避ウィザードなに? バカなの?」


「ちょっ… ヒールしょぼすぎなんですけどー! もっとINT上げてよねー!」

「おいおい、火力しょぼっ! もっとINT上げろ!」


 リディの住む村に着いた兼次達。まずは長に説明をと、リディが先に長に会いにいった。その間兼次と麻衣は、リディの家に通され、ここで待つように言われた。しかし、なかなかリディが戻って来ず暇になったため、スマホでゲームを始めていた。


「おっ、赤レア来たか」

「ちょ! 4連続! なんでランダム分配で、私に回ってこないのよ! チートしないでって言ったよね?」


「運だな… お前のLUK、初期値だろ? 俺のキャラ、267だからな」

「分配にLUK関係なーーい! てか、そのLUKをINTに回すべきでしょ!」


「LUK削ったら、クリティカルでねーだろ」

「プリーストに、クリティカルとか必要ないですからー!」


 低レベルの言い合いが始まると、簡素な布が掛かっているだけの家の入口をかき分け、リディが現れた。


「外まで言い合いが聞こえているけど、何をやっている?」


 向かい合ってスマホゲームをしている兼次と麻衣の間に、リディは間に入り込み兼次の前に立つと。兼次は、彼女の足から順番に視線を上げ、彼女を見た。


「リディ、お前も殴りプリーストが最強だと思うだろ?」

「なぐり… ぷ… りーすと?」


 聞いたことのない言葉に、リディは戸惑いの表情を見せる。そこにリディの横から、麻衣が顔を覗かせた。


「殴りプリーストなんて、ネタキャラでしょ… 最強は、私の回避ウィザードよ!」


 兼次は溜息交じりに、両手を膝に付けるとゆっくりと立ち上がり、リディの肩に手を置いた。


「さてリディ、村長の所に行くんだろ?」

「ああぁ… 行こうか」


 リディと兼次は、部屋の出入り口へ向きを変えると、遅れて麻衣も立ち上がった。


「はいはい、会話中断その2… 都合が悪くなると、話を切り上げる」


 兼次は、麻衣の言葉を聞くと振り返って彼女を見た。


「回避ウィザードもネタキャラだろ。火力ねーし、燃費わりーし」

「最強だってば! 華麗に避けて、魔法を撃つ」

「はいはい… 最強だな… MPポーションがぶ飲みだけどな」


 3人は家の外に出ると、日が沈んだ村は薄暗くなっていた。所々に置いてある松明が、辛うじて村全体を照らしていた。


「うぁ… まっくら… ホント暗いねー? 足元が見ずらい…」


 兼次の横に並んだ麻衣が、彼に話かけた。兼次は麻衣をチラリと見たが、そのまま何も言わず歩き続けた。


「リディちゃんは大丈夫なの? 夜も見えるの?」

「大丈夫だ、暗いなりに見えている」

「へー… 夜目も利くんだ。でも、暗いよね?」


 麻衣は、再び兼次の方を見た。


「暗いよね? 暗いなー」

「わかったよ! 照らせばいいんだろ!」


 彼は右ひじを曲げ手の平を上に向けた、その手は徐々に光に包まれると手のひらの上に、直径10cmほどの光の玉が現れた。その光の玉は周囲意を照らしながら上昇し、3人の頭上で停止した。彼の隣に居たリディは、その一部始終を口を開けながら見ていた。


「これは、なんだ?」


 光る玉を見上げながらリディが言った。


「そのままだが… 光球だな。俺の力を光に変換して集めて玉にしてある。この程度の事は、俺の国では三人のうち二人ができるぞ」


 兼次は曲げていた肘を下し、リディの方を見て誇らしげに言った。


「いやいや… だから国民が、さー… いったぃーーー! 足踏まないでよ!」


 麻衣が正解を言おうすると。発言を遮ろうと、兼次は彼女の足を踏んだ。


「そもそも自分でやれよ。出来るだろ?」

「さっき飛んできたでしょ! 使い切ったの!」

「っち… 使えねーな」

「ひっど! だったら、もっと頂戴よ! プリーズ パワーアップ!」


 歩みを止めていた兼次は、麻衣から視線を外すをリディの背中に手を回す。そして彼女を、歩く世に促した。


「行くぞリディ。そして麻衣、却下だ!」


 彼は少し振り返り麻衣を見ながら言った。麻衣はそんな彼を見ながら小声で「だったら、使えねーとか言わないでよね… 少し傷ついた…」と言いながら、彼の後をついていった。


 光る玉に照らされながら、歩くこと数分。3人は、周辺を木製の塀に囲われた家にたどり着いた。リディは家の正面で止まると、兼次と麻衣も彼女に合わせと止まった。


「ここだ。私が先に入る、呼ぶまで待っててくれ」


 リディは一歩前に出ると、振り返り兼次と麻衣に向かい合い言った。彼女は、そのまま振り返ると家の入り口の布をかき分け、中に入っていった。


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