表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀色の雲  作者: 火曜日の風
4章 計画を考えているうちに、起こってしまうのが人生
60/91

14話 計画を考えているうちに、起こってしまうのが人生 ②


「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁっー!!!」


 一面に木々が生い茂る上空、兼次から離れたリディの悲鳴が響き渡った。上空を飛んでいた兼次は、スマホの着信を受ける為ポケットから取り出し、[着信ラモス]を確認する。そして耳に当てようとリディを抱きしめている手を離してしまった。支えが無くなったリディは、彼から離れ頭から落下を始めた。彼女は両手で飛ぶような仕草を始めたが、何の効果もなく落下スピードは増していくのであった。


「おっと、ついやってしまった」


 ワザとらしく発言した兼次は、姿勢を変えリディを追って地上に急降下していった。勢いよく加速しながらリディめがけて降りて行った。


「瑠偉か? 悪いが今は取り込み中だ! 用事はララに言え、切るぞ!」


 と彼は、スマホを耳に当て素早く発言する。そしてリディめがけて更に速度を上げていった。そんな出来事を、彼の後ろを飛んで見ていた麻衣。かつての彼から受けた落下訓練を思い出し、複雑な気分になっていた。


「お… おねーちゃん…」


 麻衣に抱えられたルディは、心細い声を出しながら姉を見ていた。ルディは… まさか自分も? と考えたのか、心配そうな表情で振り返り麻衣を見た。


「大丈夫だって、おねーちゃんは、あんな事しないからね!」

「う… うん」


 飛行を停止した麻衣は、下を見ながら兼次が戻って来るのを待っていた。暫らくすると、顔面蒼白になったリディを、お姫様抱っこの状態で抱え上昇してきた。


「なな… なじぇはなしたぁー!」


 とリディは、兼次に問いただす。高いところから落ちる、と言う経験したことのない彼女は、恐怖で体が小刻みに震えていた。


「わるいわるい… ついな?」

「わざとでしょ」


 麻衣は、兼次の軽い返事に微妙な顔つきで言った。


「何言ってるんだ麻衣? 偶然だよ、そう偶然だ!」

「そんな訳ないでしょ? 飛びながら手を使わずに、スマホとれるくせに…」

「言いがかりだな… 真面目に偶然だ。さっさと行くぞ」


 体制を変え兼次は、再び飛び始める。リディは落ちたことの恐怖からか、彼の服を強く握りしめていた。遅れて麻衣も彼を追って飛び始め、彼の横に並んだ。


「ねえ兼次ちゃん。何て言うかなー… なんか違和感がある」


 違和感? と思った兼次は、横を飛んでいる麻衣を見た。彼女は、ルディを抱え込んでいる。とうぜん落ちない様に、シッカリと抱きしめている、つまり密着しているのだ。彼女の大きな丘がルディの背中に押し付けられて、平らになっていた。彼は、それを見てルディの背中の感覚を思い描いた。


「なるほど… ルディの男が目覚めてしまったか。まったく… 罪な女だな…」

「ちがうわぁーーーーー! そうじゃなくて、なんか話がうまくいきすぎている」

「と言うと?」

「冒険って、もっと苦労するものだと思うんだよねー。苦難を乗り越えた先にある感動、それが無いんだよねー。なんか、流れる様に事が進んでいる」

「そもそも… 冒険をしに来ている訳じゃないのだが・・・」


 兼次は、麻衣を見ながら考え込む…


「あれだ… 計画を考えているうちに、起こってしまうのが人生。そう言う事だ」

「カッコいいこと言ってるけど。Beautiful Boyの歌詞に出てくる、Life is what happens to you while you’re busy making other plans. に、似てるよね? パクってるよね?」


 兼次は眉間にしわを寄せながら、麻衣を見て間を置いた。そして進行方向を向き、彼女から目を逸らした。


「パクってねーよ! 参考にしたんだよ! お喋りは終わりだ! スピード上げるぞ麻衣、ついて来い!」


 兼次は逃げる様に、飛行速度を上げ麻衣から離れていった。麻衣も彼を追うように、速度を上げ、彼の後を追っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感想とか、評価とか頂けると励みになります。よろしくお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ