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銀色の雲  作者: 火曜日の風
3章 まず行動、目的は後からやってくる
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16話 まず行動、目的は後からやってくる ①

 街から500mほど離れた森林地帯、その中の少し開けた場所。麻衣とルディは、倒れて横倒しになっている丸太に、2人並んで腰かけていた。麻衣はルディの腰に手を掛け、ルディを引き寄せながら、彼に顔を寄せて話しかけた。


「遅いねぇー? 何やってるんだろうね?」


 ルディは麻衣によられ、恥ずかしそうな雰囲気で麻衣の目線を避けた。


「う… うん」


「その恥じらいポーズ。いいわね!」と麻衣は、そんなルディの姿を見て立ち上がった。彼から距離を取ると、スマホを出して地面に座り込んだ。そして、下から見上げる様に、スマホを構えると写真を撮り始めた。


「いいよー、さいこーーーよっ!」


 麻衣は、『いいよー、いいわよ』と連呼しながら、スマホを操作し、何枚も何枚も連射し始めた。彼女は少し落ち着くと、スマホの画面を確認し始めた。指でフリックしながら、画面を切り替える彼女。しばらくすると、何かを忘れていた様に思い出すと「っは!」と声を上げる。

 ルディは、彼女の驚きの声を聞くと。体がピクリと反応し、何をしているか分からない彼女を、目をパチパチ開閉しながら見ていた。


「そうだわ! 動画も取らなきゃ・・・ この宇宙最強の256k動画で、ルディちゃんの可愛さを永久保存しないとね! そして、地球の愚民共に見せなきゃ・・・ ふふふふっ」


 麻衣はスマホを操作し、動画撮影画面に切り替えると、動画撮影を開始した。立ち上がり、ルディの周りをゆっくり回り、色々な角度で撮影していった。


「ルディちゃーん。笑ってー、笑顔よ! え が お(・ ・ ・)!」

「う… うん」

「可愛く、お願いね!」


 ルディは、麻衣の怪しい笑顔の圧力に負け、一生懸命笑顔を作っていた。口を横に伸ばし、歯を見せたり。「はっ、はっ、はっ」と言った、声を出し笑顔を作った。


 その時、ルディの姉を後ろから抱きしめた、兼次がテレポートで音も無く、麻衣の背後に突然現れた。それを見たルディは、自然な笑顔になった。


「あっ、おねーちゃん!」

「それよ、その表情よ… さいこー」


 ルディは勢いよく立ち上がった。麻衣の横を通り抜け、兼次に抱えられている姉に向かって走っていく。彼は姉の前にたどり着くと、姉の腹部に顔を埋め「おねーちゃん、おねーちゃん」と叫び始めた。


 そんな光景を、麻衣はスマホを向け動画を撮り続けていた。兼次は麻衣を見ると、右頬が引きつり、眉間にしわを寄せた。


「ララ… 麻衣のスマホを夜までロックしろ」


 兼次の言葉と共に、麻衣のスマホは「いやぁぁぁぁぁ!」と言う、麻衣の奇声と共に録画が停止して、黒い画面になった。


「感動の、再会場面が・・・ うぅ、ひどい・・・」


 肩を落とし落ち込む麻衣をよそに、兼次は姉から離れると。姉は体をよじり始め、縛ってあるロープを解こうとした。口に巻き付けてある布のせいもあり「うっ、うっ」と言う声が漏れていた。


「まてまて、解いてやる」


 兼次は、姉に巻き付けられているロープを解き、最後に彼女の口の布を取った。布が取れると同時に、姉はルディを抱え兼次と麻衣から、素早く距離を取った。


「貴様、何者だっ!」


 姉はルディを自身の後ろに隠し、兼次と麻衣に向き直る。そして、鋭い目線で兼次を睨み始めた。


「おいおい。まずは助けてやった、お礼が先じゃないのか?」

「落ち着いてね… 私達は味方だから。 …ね?」


 兼次と麻衣が声をかけるが、姉は警戒を解かずに、目線だけで周囲を見回していた。彼女の目先には、木々の隙間から街が見えた。周りは木々に囲まれている。姉は少しづつ、少しづつ、ルディを守りながら後退を始めた。


「おねーちゃん、大丈夫。助けてもらった」


 後ろに居るルディの声で、姉は振り返りルディを見た。先程は緊張していたせいもあり、ルディの姿に気付かなかった様で。改めてルディを見ると、女物の服を着ている事に気付いた。さらに、頭にあるはずの犬耳は、髪が巻き付けられていて丸く盛り上がっていた。


「…ルディ、だよな?」

「うん。へんそう? って言う… 見つからない様に…」


 姉は腰を落とし、ルディと同じ高さになると、彼の静かに抱きしめた。そして、彼の首辺りの臭いを嗅ぐように、顔を彼に近づけた。


「たしかに、ルディだな。よかった… 無事だったんだな」

「うん。麻衣おねーちゃんに、助けてもらった」


「そうか・・」と姉は言うと、立ち上がりながら兼次と麻衣の方を、向き直った。

「助けてもらったようだな、ありがとう。だが・・・なぜルサ族の者が、我々を助ける?」


「その件については、歩きながら話そう。お前が消えて、街が騒ぎになっている。いずれ、ここにも来る可能性もある」と言いながら兼次は、姉に向かって歩き彼女の前に来た。彼の後ろには、麻衣が後をつけている。そして彼の体から顔を出し、ルディ達に笑顔を見せた。


「わかった。街から離れよう」

「はいはーい。ルディちゃんは、私の横ね!」


 兼次の後ろから飛び出した麻衣は、姉からルディを引き離し強引に手をつないで歩き始めた。姉はルディを取り戻そうと、手を伸ばすが。姉の横に兼次が来て、その手を制止すると共に、そのまま腰に腕を回した。


「さあ、素早く街から離れるぞ」


 兼次は姉に声をかけると、姉は彼を見上げた。


「ああ・・・ わかった」


 それて、彼らは森の奥に歩いていった。


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