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銀色の雲  作者: 火曜日の風
2章 伝説の聖女様現る
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11話 帰れると思った。が、それだけだった

 クレハから報酬を貰い、瑠偉とララは街の繁華街に繰り出していた。

 憤怒のガフは、レッグの立姿を見て、その怒りが一瞬で無くなり。瑠偉達が帰る頃には、何事もなかったように見送りをしていた。クレハからは、狩りの誘いがあったが、瑠偉は『しばらく何もしたくない』と、彼女の誘いを断った。一方レッグからは、昼食の誘いがあったが、これ以上好意を持たれたくないので、これも断り瑠偉達は領主邸をあとにしのであった。


 繁華街を適度に歩いて、彼女達は一軒の飲食店を見つけ中に入っていった。早朝の酒場での出来事は、まだ街中に広まっていないらしく。彼女達は店にいる客たちに、特に注目されることもなくテーブルに着く事が出来た。

 椅子に腰かけると、彼女達に向かって店員が寄ってきた。瑠偉はテーブルを見渡すが、そこにはメニューらしき物がない。それどころかテーブルは何も載っていない。この世界での注文の仕方が分からなかった瑠偉は、悩まし気に正面に座ったララを見ていた。


「一食、銅3になります」


 テーブルに座った沈黙の二人を見て、何かを察したのか店員の方から話しかけてきた。話かけられた瑠偉は「お、お願いします」と、ぎこちない返事をし店員を見返した。店員は笑顔で返すと、テーブルから去って行った。


「ララさん、ここのシステムはどうなってるの?」

「メニューはありません。一食幾ら、と言う感じです。地球風に言えば、日替わり定食のみの店。と言う感じです」


「そうですか…」とララの顔を見ていた瑠偉は、ララが食事を食べない事を思い出した。


「もしかして、2人分出てくるのでは?」

「出てきた所で、私は食べません。必要ないですし」

「まさか、私が食べるの?」

「不思議がられますが、残せばよろしいかと?」

「そうですね、残せばいいですね。なんか、変な噂が発生する気がするけど…」


 それから話すことが無くなったのか、瑠偉は黙り込む。しばらくすると彼女は、何かを思い出したように、首とか全身をまさぐり始めた。


「そう言えば、私の手荷物は? スマホとかアレとか…ネックレスとか財布とか」

「麻衣様よりお預かりしております。ここでスマホを見始めると、注目の的です」


 そう言うと、ララは立ち上がる。その手には、指輪に銀のチェーンが付いているネックレスを持っていた。それを広げると瑠偉の頭から優しくネックレスを掛けた。瑠偉はその先に付いている、指輪を手に取り見つめ始めた。そこで彼女は、一つの考えが浮かんだ…


「この指輪で…地球まで、テレポートできるのでは?」

「お嬢様の力では、6万5千光年の距離移動は無理かと‥‥それに、それは」

「それは?」

「あくまで推測ですが、聞きたいですか?」


 瑠偉は指輪の手の上で転がしながら、ララを見ている「聞かせてください」


「その指輪のテレポート機能は、リュボフ国への移動では無いと考えます。私の考えでは、マスターの頭上にテレポートする、と考えています。つまり、お嬢様や佐久間様の連れて来た学友達と、うっかり重なり合ってラッキースケベを演出する。と言う事でしょう、さすがマスターです」


 瑠偉はテーブルに両肘をついて、折り重ねて手にアゴをのせ、ララの話を聞いていた。聞き終えて目を閉じ、深く考え始める彼女。昨日起こったテレポート先での、ワームホール落下事件を思い出していた。

 兼次の頭上にテレポートする。と言う事は、彼がワームホールの中に居たら…当然その上に現れる事となる…


「もしかして…私がワームホールに落ちたのは、それが原因では?」

「そうなります。しかし、昼休みに学校を抜け出そうとした、お嬢様にも原因があります。今回は、痛み分けです」

「確かに私にも原因はあるけど、納得いかないなぁー。麻衣も行く前に、連絡くれてもいいのに…」

「夜巳様を撒く為に、かなり急いてましたからね。それに、学校に通ってる時間帯でしたし。まさか、あのタイミングで来るとは、思ってもみなかったでしょう。留年も確定したし、不幸な一日でした」


 留年と言う言葉を聞いて、肩を落とす瑠偉。これからの生活と、それを過ぎても留年と言う現実。それを考えると、気分が悪くなるような鬱な状態になっていった…


「おまたせしましたー」と店員が、ワンプレートの料理を運んできた。瑠偉の予想通り、二人分である。テーブルに置かれた料理を見て、瑠偉は目をしかめた。肉が無造作に焼かれただけの物とパンが一切れ、そしてスープ入りのカップが置かれていた。


「また…お肉…」

「狩猟がメインですので、当然そうなります」


「獣臭いし硬い…パンも硬い…味付けも美味しくない」と瑠偉は、一口摘まんでは愚痴をこぼしていた「こんな食事で、10カ月も…はぁー」そう言いながらも、瑠偉は今日の歩行運動などで空腹状態だったようで。たえまなく食事を口に、運んでいくのであった。


「今日は問題ありませんが。今後は運動もせずに、この食事だとカロリーオーバーです」


「たしかに、この食事では…」と瑠偉は、周辺を見渡す。一般的な客だろうか、そこには若干小太りの客がいっぱいいた。クレハやレッグを見ていた時には感じなかったが。この店の客は、明らかに小太りの人が多い…


「とりあえず運動はします、あとは…一日2食にしようかな。ちょうど宿も2食付きだし」

「カロリー的には、それで問題ないでしょう」


 瑠偉は最後に残ったスープで、パンを浸し柔らかくして食べていた。正面を見ると、手付かずの皿が、ララの前に置いてあるのが見えた。彼女は残ったスープを全部平らげ、手でお腹のあたりを感触を確かめる「やっぱり、二人分は無理か…」


「残せばよろしいかと? 2回目です」

「わかってますよ! ところで、甘味処の店はあるんですか?」

「この街には、無いですね。その前に、砂糖と言う調味料がありません」

「そうですか・・・なら帰りましょうか」


 残念な表情で瑠偉は立ち上がる、それと同時にララも立ち上がった。彼女達は清算を済ませ店を後にし、宿屋の方に向かって歩いていった。



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