猫のお勉強
先生とレア様は前の世界の教室と比べるとやや広めに感じるこの教室らしき部屋、その真ん中辺りの席にレア様が座り、先生は教壇の方へ向かった。
俺はどこに座っていいのか、そもそも座っていいのかとわたわたしていたが、レア様が自分の隣の席を引いてイスをぽんぽんと叩いていたのでそこに座らせてもらった。
いやーまさかこんな美少女のすぐ隣で授業を受けれる日がくるとは思わなかったね。まぁ今は俺も女だけど、男だったらちょっとした問題が発生してたかもしれないからご愛嬌ってとこだな。
…え?問題って何かって?いや俺元童貞なんでその変に…いや俺は誰に対して言ってんだ、はい!この話は終わり!そんなことより授業だよ授業!
あ、ちなみにその間、先生は微妙な顔でこっちを見ていたが、結局特に何も言ってはこなかった。言いたい事があるならいっそ言ってほしいよね。
「それでは今日の授業を始めようと思います…と言いたい所ですが」
話し始めること数秒、先生はそこまで話した所で言葉に詰まらせ、困った顔になった。
なんだ?やっぱ俺がいるのはやばかったのか?
そんな事を考えていると、先生は俺の方を一瞬見た後、レア様に向かって話し始めた。
「おそらくレア様の受ける授業ではその娘はまったくついてこれないと思います。ですがレア様は既に本来の授業より進んでいますので急いで進めなければいけない事もありません。ですので今日は少し最初の方から復習という事にしようと思いますが、よろしいですか?」
「はい、わかりました。」
ああそういう意味の顔だった訳ね、にしてもわざわざ俺なんかに合わせてもらうなんて悪い気もしちゃうが。
なんて事を考えていたら顔に出ていたのか、レア様が俺の顔を覗きこみ、ニコっと笑みを浮かべてきた。
…可愛い
…はっ、いかんいかん思考放棄しかけた。いやー元童貞にはさっきまでいちゃいちゃの事と言い中々刺激が、ってそんなことはどうでもよくてだね。
さっきの話し方からするにもしかしてレア様って頭良い方なのかな?正直今までの行動見てるとそんな風には…あーでも貴族の奴隷に対する扱いとか説明してくれてた時は頭良さそうだったかもしれないな。顔はにやけてたけど。
「えー、それでは授業を初めていきます。」
おっと、もう授業が始まるみたいだ。前の世界じゃ結構ぼけっとしながら聞いてる事多かったけど、今はそんな事してられないもんな。まさか異世界転生なんてしておいてただの奴隷生活だけなんて事はないはずだし。情報は色々集めとかないと。…いやまぁ多分の話だけどね。
「それでは今日はここまでにしておこうと思います。明日は今日進んだ所からの復習になりますので…レア様なら問題無いとは思いますが、忘れている様ならご自身でも復習しておいてください。」
「はい、わかりました。」
「…ありがとうございました」
体感で多分1時間程経ち、授業が終わった俺はレア様と話していた先生に一応お礼を言った。わざわざこっちに合わせてくれた訳だからな。
だが正直に言って俺はお礼を言う様な気分ではなかった。
…自分でも思う、いやなんでそんな事すら思いつかなかったんだよと。異世界なんだから元の世界にない学科、っていうか魔法ある世界なんだからあるだろと。
そう、今日のレア様の授業、それは全て魔法に関する授業だったのだ。
当然俺に魔法の知識なんて物がある訳もなく、俺は終始ポカーンとしてしまった。それならそれでちゃんと基本から学べたなら良かったのだが、あくまでこの授業はレア様の復習がメインな為、とても進みがはやくて俺が理解する暇がなかったのだ。そしてレア様はそんな速度で進む授業でも余裕な顔していた、本当に頭良かったんだな〜。
途中敢えておそらく答えやすそうな事を先生に質問されたりもしたのだが、それにもほとんど答えられなかった。それでも一部合っていたとこもあったりすれば驚かれたし褒められた。普通の獣人はこんなのわからない、との事で。
さすがにこれで終わってたまるかと思い、その授業で俺が特に理解できた部分。…と言ってもほんの少しだけで、それ以降はぽんぽん進みすぎてなにがなんだかわからなかったのだが。
・魔法とは自分の中にある魔力を利用して、詠唱という型に通し、この世界に出来上がった物を放出する物。
・その為魔法は基本的に詠唱を必要とする。
・ただし魔道具と呼ばれる物を使えばそれ自体に詠唱の代わりとなる魔法陣が刻まれているので魔力を通すだけで魔法が使える。
という魔法の超超基礎的な感じの所を覚えておいて授業の最後に先生にそのまま言ってみた所、本当に有り得ないといった顔で驚かれ、レア様にはとても褒められた。…一般的な獣人族ってまじでどんな奴なんだろか。
それにしても、いやまぁ確かに頭良くてすごいと褒められるのを望んではいたよ、心の内ではさ。けど…これは違うんだよ!もっとこう獣人にしてはって事じゃなくてだね!転生者によくありがちななんでそんな事知ってるんだって展開を俺は期待してた訳でしてね!?
まぁともかくそんな感じで、知識チートで驚かせてみよう、とか思っていた俺は完全に期待外れの展開にされて軽く落ち込んでいたのだった。
「はぁ〜…」
「どうしたの?シアちゃん」
おっと、ついため息したら心配されてしまった。てかここで落ち込んでたらそれはちょっとおかしいよな。…よし、まぁ気持ちを切り替えていこう。どこの世界でも思い通りにいかない事なんていっぱいあるだろうしな。
「いえ。ちょっと疲れたな、と。」
「ふーん?じゃあちょっと休憩しよっか、まだ夕飯までは時間あるし、一緒にお菓子でも食べる?」
おーいいね、転生してから一日目で頭使いまくりだから甘い物は嬉しい。なんか本当に奴隷って感じしないな。
「はい」
「…ふふ、良かった。」
「え?」
「最初会った時、って言ってもさっきだけど。だいぶ私に対しても緊張してたみたいだったから。それだけ良い笑顔ができるなら大丈夫そうね。」
そう言ってレア様は優しい顔で俺の頭を撫でてきた。…これバブみを感じるとかいうやつなんだろうか、それとも俺がちょろすぎるだけなんだろうか。いやまぁ体の歳自体は同じくらいなんだと思うんだけど俺の精神的にはレア様よりちょっと上でって何言ってんだ俺。はやく何か返答しないとレア様があれ?ってなるだろうが。
「…ありがとうございます」
「うん、じゃあ私の部屋に戻ろっか。そこの方が周りに人がいなくて落ち着くでしょうし。あ、それと話しておきたい事が出来たから食べながら話すね。」
ほう?出来たって事は後から話しておきたい内容ができたと、とするとさっきの授業が関係してるのかな。
「わかりました、それにしてもレア様はすごいですね。あんな難しそうな内容についていけるなんて。」
「…知識だけならね。」
「え?」
あり、なんかそれとなく褒めてみたらいかにもなんかありますよオーラ出しながら暗い顔になっちゃった。地雷踏んだか?
「…ううん!なんでもない、ありがとね。」
そう言うと、レア様は俺の手を引いて歩き始めたので、俺はそれについていった。
…うーん、絶対なんでもなくないと思うけど。まぁいっか、無理に聞くものでもない気がするしなこういうのって。それにしても話ってなんだろな。
「気になる?」
「ひょえっ?」
俺がどんな話か気にしているのがわかったのか、気がついたら繋いでいた手を離したレア様が目の前に立っていた。
「そんなに難しい事じゃないわよ、私が通ってる学園の話。そこにシアちゃんを連れて行こうかどうしようかってだけよ。まあ詳しい事は休憩しながらね。」
授業風景やろうとしたら全然うまくできなかったからキングクリムゾン!(飛ばし)