猫は勉強してもいいですか
すっごい久しぶりに覗いたら全然ブクマ減ってなくてびびりました(笑)
「勉強…ですか?」
「そう!シアちゃんって獣人の割には結構頭良さそうだし。」
突然の勉強発言に驚いたが、レア様の様子を見るにどうも単純に一緒に何かをやる、という事自体に興味がある様だった。
ただ獣人の割には、そこは気になったのでちょっと聞いてみる。
「割には、とは?」
「…うーん頭は良いんだけど自分の種族についてはよくわかってないのね、まぁいいけど!えーと…」
もしそこに関して色々ツッコまれたら痛いなと思っていたが、そこはスルーするレア様だった。
それからちょっと説明を受けると、どうやらこの世界での獣人族は皆、あまり頭が良くないという事がわかった。それ故俺のように落ち着いて状況に適応し、特に暴れたりする事のない獣人族は珍しいとの事だそうだ。
だから俺ならば勉強する事で頭の良い獣人族のペットになれるかもしれない、そうなれば飼い主の自分としては嬉しいと、そういう事らしい。
だが俺は二つ、迷う点があった。
(…文字読めないんじゃね?それに仮に読めたとしてだよ、どのくらいの学力までならおかしくない?)
まず最初に文字、特に何もなければ日本語でない限り読めも書けもしないが、これに関してはもしこの体の持ち主が勉強していたって場合、わかるとかそういう展開の可能性があるかもしれない。そう思った俺はレア様に簡単な字を書いて見せてもらうよう頼んだ。なんかそれらしい理由は…いやレア様ならスルーしてくれそうだからそのまま頼んでみればいっか。
「…えーと、シアちゃん可愛い?」
「おー正解!」
予想通りレア様は二つ返事で了承すると近くにあった紙にサラサラっと文字を書いてくれた。
ちなみに文字が書かれる時明らかにインクじゃない色、というより少し光っていた気がするのでいわゆる魔法ペンとか、そんな感じの物で書いてくれた。
…それにしても本当に読めちゃったな、なんの違和感も無く読めたからこれは確信犯だ。転生特典、もしくは元々のこの体の記憶、どっちかがあるって事だな。ま、とりあえず文字は大丈夫そうだ。
…なんでこの文字選んだのかはツッコまないでおこう、読んでる時俺の顔めっちゃニヤニヤしながら見てきたからつい恥ずかしくなってしまった。それへのせめてもの反抗だ!
さて次、この世界の学力レベルはわからないが、多分異様に低いという事はないと思う。洋式トイレあったしね。
だがレア様はどうみても元の世界で言う中学生くらいだ。それでいて更に俺の世界より学力レベルが下がっていれば、やる内容は小学生高学年レベル、そんな可能性があるのだ。
…まぁそもそも下がっているかどうかはわからないのだが、よくあるネット小説の魔法の世界は大体中世的で、ここも今のとこそんな世界な気がするのだ、すると何が言えるか。
魔法が発達してるからその分発達が遅れてるとか、学校は貴族だけの物だとか、もしくは無いなんてことも、という事が言える可能性がある。
とすると義務教育を日本で受けてきた転生者の俺とはどうしても、この新しい世界の一般的なこの歳での知識レベルと学力の差がある。という事な可能性が高いので、この世界もそうなのかもしれないと予想した。…なんかいかにも俺頭良い人ですよーみたいになっちゃったな、頭良いっていったって別に元の世界なら平均レベルでしかなかったのに。まあこの予想があたってたとしても調子にのらないようにはしとておこう。
それでだがいくら頭が良いとはいえ元奴隷、それも基本的に頭が悪いと言われる獣族が普通に、例えば掛け算とかできちゃう?…いやー、それはまずいでしょ。不自然すぎる。
正直知識チートで頭良いアピールしてみるのも面白そうとは思う、けどその後が問題なのだ。
けどレア様は俺に頭が良くなる事を望んでこう言っているように思える。
…ちょ、ちょっとくらいなら大丈夫かな?記憶喪失とかで誤魔化せば。
たまたま思いついた記憶喪失案、だが考えてみると意外といけそうだと思った。
獣人族は奴隷なのが基本、そんな感じらしいがそれでも多分全部が奴隷ではないと思うのだ。何処かでひっそり暮らしてるとかで、さすがに全部を掌握しきれてはないと思うんだよね。予測でしかないけども。
そうなると今奴隷になっている獣人族は生まれた時から奴隷か、もしくは後から捕まったかのどちらかだと思う。
なら後から捕まったパターンで何処かで勉強を受けていた、その可能性なら考えられる。
…まぁ予測だらけで確実性なんてない、でも…多分この考えはあってるような、そんな気がする。
それにせっかく異世界転生したんだしな!ちょっとくらい転生要素味わってもいいよね。
「わかりました」
「やった!じゃあまずは先生に説明しないとね、あーはやくこないかな先生〜。」
そして俺はレア様と一緒にお勉強する事にした。これで俺の世界よりレベル高い授業だったら笑えるなと思いつつ。
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「先生、お久しぶりです。」
「お久しぶりでございます。レア様。今日から残り一年、またこちらでレア様に授業をさせて戴きます。」
場所は変わって、レア様の部屋ではなくそこから少し移動した所にあった広めの部屋。奥の方には白い壁、現代で言うホワイトボードのような物がかけられていた。
そこでレア様と先程来た美人な女の人が会話をしている。
茶色の髪に黒い目、何だか日本にもいそうだと思うような外見だ。
(ってか残り一年とかって言ったな、どういう事だろ?)
その話す内容に少し気にかかっていると、会話が終わったのか、レア様がこちらへ来る。
「この子なんですけど、駄目ですか?」
そして俺の事を指差しつつ、その美人さん…先生だろうね、先生に頼みこんできた。
「…昔から獣人が「猫ちゃん!」…猫の獣人が好きだとは聞いていましたが…本当に買われたのですね。」
「元々こっちに移り住んだ理由の少しはそれですから、それに先生はそこまで嫌ってはいなかったですよね?」
「…まぁそうですが」
途中移り住んだとか気になるワードもあったが、何とか俺の事を頼み込もうとしてくれてるレア様。
(…ちょっと俺からも言ってみるか。本人がやりたいって言う方が効くかもしれないし。)
「あの、私、レア様と授業を受けてみたいんです。どうかお願いできませんでしょうか?」
「え…?あ、そ、そうですか…。」
どうも先生は突然の発言で驚いた様だった。…まぁ教育なんて受けた事なさそうな奴がきちんとお願いをしてきたんだ、少しは好感度をあげられたのだろう。…ついでにちょっと守ってあげたくなる系みたいに喋ってみたしな!あーすげー恥ずかしかった!
「どうですか?」
「…なるほど、確かに頭は良さそうですね。」
「そ、それじゃあ!?」
レア様が目を輝かせながら先生に詰め寄る、俺は少し離れていながらも上目遣いで先生の方をじっと見てみた。
「うぅ…はぁ、わかりました。ただしその代わり勉強もしつつしっかりと面倒を見てくださいね、レア様の奴隷なんですから。」
「やった!ありがとうございます先生!」
「あ、ありがとうございます!(便乗感ありまくりだけどいっか)」
奴隷の身分なのに貴族と、それも自分の主人と一緒に勉強を受ける。これまた随分変わった展開になったもんだなと思いつつ、俺は席へ向かうレア様に付いて行ったのだった。
また気が向いた時に少しずつ挙げていこうと思います。