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猫耳少女始めました


もしこの声が誰かに届いているなら、聞きたい事がある。

普通に大学に通って、普通に野郎友達と駄弁ったりゲームしたりして、普通に今日も一日疲れた〜って家で寝る。

そしたら次の日の朝ってどこで目覚めると思う?

…お前の家じゃないのか、そう思うよね、うん。

だったらなんだけどさ

 

 「それがこんな状況だったらどうすればいいんだ?」

 

 

そう可愛い声で呟いたのは猫耳と尻尾が可愛らしい女の子。歳は12歳くらいに見える感じで、頭はボサボサなただ適当に肩まで伸ばしたかの様に見える銀髪、瞳の色は青。その女の子は少し気だるそうな、それでいて呆れたような顔をしている。

 

そう、この外から見た外見がこんな感じの可愛い猫耳少女、これが現在の俺である。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 (…鏡とか無いから全身見れないけど、触ってみた感じこれ完全に猫耳と尻尾だよね?…いやまぁ猫耳美少女とかめっちゃ嬉しいけどさ。それとこれ状況的に考えて転生か?別に前の世界にそこまで未練無かったから落ち込んだりとかしないし、別に構わないけど…まぁとりあえず他にも色々状況確認しますか。)

 

ひとまずそう考えた俺は、自分の事以外の今の現状を調べてみる事にした。

…この体の事も気になるけどとりあえず後!多分触ったらそのままエスカレートしちゃうから!

 

まず視界に映るのは木で出来た部屋、あまり広くなく、でも人が幾人かは入りそうな部屋だった。

これだけだと一体何の部屋なのかわからないが、この部屋全体がガタガタと揺れつつ前に進んでいる感覚、そして外から聞こえるパカパカと言う音。これらからおそらく馬車の中だろうと俺は推測した。

だがその馬車には不思議な点があった、窓が無いのだ。

一応所々に小さい穴が空いているので真っ暗闇ではないが、明らかにこれは不自然だ。

だがその疑問も直ぐに解けることになる。


 (何か苦しいと思ったらこれ首輪か!しかも足枷まで付いてるし、おまけにきちんとミニサイズな鉄球付きで。

…ってか服装とかも酷いな、ボロ切れ着てるみたいな感じじゃんこれ。体も服もめっちゃ汚れてるし)

 

まさにそんな俺の姿は、端から見れば奴隷その物の様だった。

 


 (とりあえずこれで何となくは解った、これ完全に買われた奴隷が運ばれる図だよ。だから外から観える様な作りして無いんだ。…えー、まじかよ。俺異世界転生物はシリアスとかバトル物より日常物が好きなんだけどなぁ…しかもTSだろ?余計にほのぼの出来ないのが悔しいんですけど!…あぁ、女の子と戯れるだけの日常が送りたかった。でも叶わないよなこのスタートじゃ、仮に叶えるとしても絶対大変そうだし。

まぁ強いて言うなら猫耳少女だった事、これだけは良い事だったけどさ。

俺猫飼ってて猫好きだし。…そういやあいつ大丈夫かな、俺いなくなった後一人で。まぁずっと学校にも来なかったら誰か来るか、向こうの世界で俺どうなってるか知らんが。頼むからあいつが餓死とかは勘弁してくれよー。それだけはまじで悲しい。)

 

そんな事を考えつつ揺らされる事数十分、この世界(まぁまだ本当に異世界か確証は無いけど)でも分、で時間を数えるかは置いておくとして。俺の感覚でそれぐらいの時間が経過した頃。

 

だが、その馬車は一向に着く気配は無かった。

 

 (随分遠くまで行くんだな、さすがにちょっと怖くなってきたぞ。一体どんな奴に買われたんだ俺…ん?待てよ、馬車なら馬を引いてる人いるじゃんか。声かけてみよ。)

 

そう考えた俺は声が届くかはわからないが、ひとまず進んでる方向向きの壁に向かって声をかけた。

 

 「すいませーん、この馬車は何処に向かうのか教えてくれませんか?」

 「…ああ!?うっせえな黙ってろよ獣が!奴隷の癖にいっちょ前な口聞いてんじゃねえ!ったく、これだから獣人族は…」

 

滅茶苦茶怒られてしまった。

 

 (悪口のつもりなんだろうけど、いっちょ前って言っちゃうとその部分は認めるって言ってるようなもんだぞーっと。てか普通に反応しちゃうのもあれだし、むしろ俺は口聞いてくれないかもと思ってたぞ。

…にしても今更だけど言語通じたな、普通に何言ってるかも解ったぞ。俺普通に日本語話したつもりだったんだけど…まぁそこら辺はいいか、多分本来は言語違うけどこの体が知ってるからだとかそんな理由だろうし。そもそもこの体の事…さっきの声の主が獣人族って言ったか?まだ全然知らないもんな。…色々と、うん色々と。)

 

 

それからはおそらく、聞いても答えてくれないだろうと考えた俺は考えるのを止めた。すると急に眠くなってきたので一旦眠る事にした。

 

 (起きた頃には着いてるかなぁ…どうか主人が怖いおっさんとかじゃ有りませんように、性処理用とかはまじで勘弁してくださいお願いします。)

 

そして俺は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おら起きやがれ!」

 

目が覚めた俺に聞こえてきたのは、あの時一度だけ声を聞いた馬引きの声だった。

急に起こされた為まだ少しぼけっとしていると、そいつは俺の体をひょいと持ち上げ、俺の体を外へと持っていき、無理矢理地面に立たせてきた。

そしてこの時俺は相当自分は体重が低いんだなと思ったりした。

 

 「うん、ご苦労様。後はこっちのメイドがやるから帰っていいわよ。」

 「…あ、へい!わかりやした、では俺はこれで。」

 

まだぼんやりとしたまま突っ立っていると、不意に女の子の声と馬引きの話し声が聞こえてきた。

そしてその口調から、もしかして自分の主人になる人はこの女の子か、と思った俺はよく目を凝らして声の主を見てみた。

 

そこにいたのはいかにも偉い立場にいそうな女の子だった。

歳は今の自分くらいに見え、綺麗なドレスのような服装、さらさらとしたロングの金髪、真っ赤でキラキラとした瞳。それでいて顔は可愛いらしく、まだ幼さを見せる顔つきをしていた。

 

今まで二次元でしか見た事が無かったような美少女で、俺は少し感動した。

 

 (え、まさかこの女の子が俺の主人?…いや待て、もしかしたら性格が最悪とかそんな展開かも知れないぞ。落ち着け、落ち着くんだ。)

 

そうして俺が自分を抑えていると、その女の子は自分の元まで歩いてきた。そして俺の前まで来て止まると、まるで品定めするような視線で俺を見た後。

 

 「うん!やっぱりペット用の中から選んだだけあって可愛い!これからよろしくね」

 

そう俺に向かって言った。

 

 (まじか、まじで性格良さそうな美少女じゃん!やったぁ…あ?待って途中何て言った?何か変な言葉が聞こえた気がしたが。)

 

だが、少し聞き間違えかと思うような内容があった為、俺は戸惑ってしまった。

だがそんな俺の考えなどこの女の子に伝わる理由もなく、女の子は不思議そうな顔をした。

 

 「…ん?どうしたの?」

 「…失礼ですがお嬢様、おそらくまだ自分の状況が掴めていない物かと。」

 

すると突然、いつの間にか女の子の隣にいたメイド服をきた女性が、女の子に助言をした。

 

 「あーそういう事ね…えーと聞こえてるよね?とりあえず後で説明してあげるから今はこの人達に従って。…この娘をお風呂に入れてきて、そしたら私の部屋に連れてきて頂戴。その時は部屋にメイドを入れないでね。」

 「…あの、申し訳ございませんが獣人族と二人きりと言うのは。」

 「いいから!私の命令がきけないの?」

 「…いえ、ではそのように。」

 

そこまで彼女達は話し合うと、急に俺はメイド服の女性に抱き抱えられた。

 

 (…え?もしかしてこのままいきなりお風呂イベント?…まじかもうか俺まだ心の準備が出来てないんだけどさっきの言葉だってまだ解りかねるしそれにまさかこれはメイドさんに洗ってもらえるとかいうあばばば)

 

その結果、俺は更に混乱してしまっていた。

 

 「うん、じゃあよろしく。…また後でね!私の猫ちゃん!」

 

そして最後に女の子の声を聞くと、混乱して硬直していた俺の身体はメイドさんの手によって運ばれていくのだった。


 


ちなみに作者は今現在、猫を一匹飼ってます。

オスですが(笑)

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