南の森への遠征②
ジン達が朝食を済ませ『茨の森』を解除してから散策を開始する。
MAPを展開し周囲を確認すると見事に警戒しているのか
周囲200m圏内に赤マーカーの反応が無い。
「ソラとシロが魔法で草刈りをお願いね。
クロは昨日と同じく慎重に進もう!
チコとリコは周囲を警戒しつつ弓矢と魔法で対処を!」
「「はい!」」
『『『任せて!』』
「それじゃ、少し左に進行を変更して進もう。
雑魚っぽい野獣は目の前から消えたし・・・
これから遭遇するのは強敵だと思うから
チコとリコは無理しないようにソラとシロも二人のサポートお願いね。」
箱馬車の上部で待機していたチコとリコはコクリと頷き
クロの頭の上に座るシロは『お任せ~。』と返事をする。
ソラは『風魔法』を周囲に展開し20mの範囲の草を刈る。
『戦いやすくする為に周囲の草は薙ぎ倒す!』
『それなら前方もやる!』
シロも進行方向の草を広域で刈り取る。
即座にクロが魔法で刈り取った草を地中に埋め均していく。
立て続けに魔法を展開し猿に似や野獣は森の奥へ逃げていく。
孔雀に似た野獣は木々に隠れて姿を隠し
鰐に似た野獣は下流へ移動しているがMAPで確認出来た。
そして、全く動かずにこちらを経過している赤マーカー・・・。
午前中は野獣との遭遇戦は無くチコ達も魔法で草刈りをしていく。
草葉の陰から襲われる危険度合いが減り南の森の探索が進む。
ジン達は移動の合間に薬草採取をし
『虫よけ』や『虫さされ』『痒み止め』と言った夏場必須の薬草を採取する。
『虫よけ』に関しては軟膏と香を移動中に調合する。
南の森は見た事無い亜熱帯の森っぽく
今までの街で見た事無い果物が確認出来た。
バナナに似た果物やパパイヤに似や果実を見つける
MAPで果実を検索すると思った以上に果実を発見出来たので
午後からは森の探索と同時に果実と野菜の採取に向かう。
『鑑定』スキルで食べられるかを調べ一つ一つ確認しながら食べていく。
カラフルな果実が多く甘味が強い物や酸味が強い物など
多種多様な果物を試食しては収集しクロは小さくなって果実を頬張っている。
パパイヤに似た果実は甘い匂いと味でクロが夢中で食べている。
ソラやシロはチコとリコの膝の上で果実を食べさせて貰っているし
ジンは一つ一つ食べれるのを確認していたが味まではわからず
果実の収穫量は試食後にどれ程の量を確保するか相談する事になる。
「この赤い実は美味しいです!」
マンゴーに似た果実を手にしチコが話す
リコはパイナップルに似た果物を食べながら
「こっちの黄色い果実も甘甘くて美味しいです!」
天然モノなので甘味がありソラやシロがパクパクと食べている。
クロはライチに似た身を皮ごと種ごとパクパクと食べている。
『甘くて美味し~。』
『美味し~。』
『いっぱい集めよう~。』
「あいよ、チコとリコも気に入った果物は採取してね。
マジックバックに保管すれば大量に運べるし
『開拓村』へのみんなにも食べて貰おう~。」
「「はい。」」
「ソラとシロは果物を探すのを手伝ってね。
クロは魔法で広範囲に草刈をお願いしていいかな?」
『『お任せ~』
『草刈だけでいいの?』
「クロには周囲の警戒を引き続きお願い。
僕は草を買った場所を『土壁』で囲むからさ。」
クロは周囲100mの範囲の草刈りを完了し
ジンは草刈りを完了した範囲を『土壁』で囲っていく。
MAPでも200m以内に赤マーカーが無く安全な気もしたが
やはり壁で囲まれていれば視覚的にも安心出来る筈・・・。
ジンは周囲警戒と同時に『土壁』を補強しながらゆっくりと歩く
壁を厚く高くし果実採取に影響が無い様にしていく。
壁で囲った周囲にも果物がなる木々が確認できたので
ジンは少しずつ『土壁』で囲む範囲を拡大していく。
最終的に『開拓村』以上の広さを『土壁』で囲み
南の森の一部は『土壁』に囲まれた自然の果樹園になるのだった。
ソラとシロは囲まれた場所を順次草刈りを済ませ
果物を見つけてはチコとリコが回収していく。
数個のマジックバックや木箱に次々と果物を保管し
箱馬車内は果物の甘く美味しい匂いがする。
「南の森は人喰い蛇がいるらしいが・・・
それ以上に果物が豊富で嬉しい誤算だな。」
「森の深部に行かなければ人喰い蛇はいないんじゃ?」
「確かにここは森の入口だし・・・ここから危なくなるの?」
「凶暴な猿に似た野獣に襲われたし危険なことには変わりないよ?
俊敏で凶暴・・群れで襲いかかる野獣は警戒しなければ全滅必死な気がするよ。」
「そう言われれば黒犬や灰犬よりも警戒すべき野獣な気がする。」
「警戒すべきだが実入りの無い野獣な気も・・・な。」
「見入りと言うか食糧として考えれば美味しくないよね。
せめて大猪や大蜥蜴の様な野獣がいればいいんだが。」
果実を集め終わりチコ達が晩ご飯の準備をしていると
MAPに急接近してくる赤マーカーに気が付く
草が刈られた状態にも関わらず目視で確認出来なかったので
「ナニカが接近中!周囲の警戒宜しく!」
チコとリコは料理の手を止め急ぎマジックバックに食材などを保管し
弓を構えていつでも矢を射る準備をする。
ソラやシロもチコとリコの側に待機し魔法を発動している。
クロも自身と箱馬車を『魔法障壁』で護り警戒している。
「距離20m・・・15m・・・10m・・・」
以前目視で確認できる範囲に敵影が無い
それでもMAPでは確実に近づく赤マーカーを捉えている。
ソラやシロもナニカの反応を感じているのだが姿が見えず
少しだけ緊張しながらチコの側で待機している。
「距離8m・・・5m・・・1m!」
次の瞬間、地面が割れナニカが姿を現す。
「下から来るぞ!」
クロが急ぎ箱馬車を繋いだままナニカの攻撃を避けるように
魔力でフィールを展開し空中へ緊急回避する。
チコとリコもナニカの攻撃を後方へ逃げながら避けていく。
ソラとシロは最初こそチコ達と一緒に逃げていたが
二人に攻撃が当たらない事を確信しジンの側へ駆けていく。
ジンは最初のナニカの襲撃時に逃げずに攻撃をしていた。
襲いかかるナニカにタイミング良く一撃を食らわす。
襲ってきた何かの数は全部で五つ・・・MAPでの赤マーカーの数が一つだったのに?
ジンに殴られたナニカは動かなくなったと思ったら地面に吸い込まれる様に逃げ
再び五つのナニカに襲われる・・・殴り倒しても地面に戻り再び襲いかかる。
ナニカの攻撃は単調だったので避けては殴りを繰り返し
ジン達を襲ってきたナニカは身体が黒く触手の様な姿をし
触手の先が無数の牙が確認出来たので凶暴だなと思い
「噛まれなければ怖くは無いな。
人喰い蛇じゃないと思うけど・・・なんなんだろ。」
「ジン兄さん、気を付けて下さい。
地面からの攻撃は土蟲です。」
「黒い触手で絞殺し捕食する。
無数の触手があり本体は地中深くで攻撃不可と言われていたはず・・・。」
「土蟲の触手には毒があり危険です。」
「麻痺毒で危険です。『毒消し』の対策が必須です。」
ジンの呟きに反応したのはチコとリコだった。
二人は触手の攻撃の当たらない空中から魔法を開始する。
『風魔法』で触手を切断する・・・
切られた触手は暫らく動いていたが数分後には息絶える。
切られたはずなのに触手攻撃が止まないところをみると
触手の数が多いのか触手が再生するのかは不明だった。
そして、五つの触手の攻撃がジンに襲いかかってくる。
一本目の触手を『掌底打ち(しょうていうち)』で動きを止め
『土槍』で地面に縫いつける。
二本目と三本目の触手を『ひじ打ち』と『ひざ蹴り』黙らせ
同じく『土槍』で地面に縫いつけ。
四本目の触手を『横蹴り』を連続で放ち逃げられないように
『土壁』で押し潰し逃げる事も動く事も出来なくする。
五本目の触手は左右交互に横殴りをし動きを止めたところを踵落としで黙らせる。
『土槍』と『土壁』で地面に縫い押し潰し
最後に本体に向け足元を殴りつける。
『全力の一撃!』
ドゴォ!!!
『身体強化』+『速度強化』+『鉄拳』+『剛拳』+『蹴撃』+『魔闘衣』
ジンの修得した戦闘スキル全てを乗せた一撃は地面を陥没する事になる。
ジンを中心に2mがペコリを沈み足元の反応が消える。
五本の触手も痙攣をした後に動きを止める。
「ふぅ、疲れた。」
疲れた身体を休みたい・・・そう思いジンはその場に座り込む。
ナニカの反応が消えた事を確認しクロはチコとリコを回収し地上へと戻る。
ソラやシロはジンの邪魔にならないように周囲を警戒し
戦いが終わった事を確認し一目散にジンに抱きつく。
ジンは嬉しそうにソラとシロを抱きしめ撫でまわす。
撫でながら「土蟲は何か面倒・・。」と呟くのだった。
久しぶりのジンの戦闘。
持てる戦闘スキルを用い反撃の機会を与えないままにボコ殴り蹴り。
無呼吸での連続攻撃、一瞬だけなら無敵な攻撃を可能にするのだが
体力と魔力の消耗が激しく、次の日は筋肉痛と魔力枯渇になるのだった。




