春を迎えて①
黒飛蝗襲来後『アストランタ』の街は周辺の山村や農村に冒険者を派遣し
もしもに備えて柵の拡張や強化をしていた。
そして、柵の拡張と同時に作付面積を広げていく
山村や農村の派遣はギルドからでは無く『アストランタ』からによるものだった。
本来、山村や農村の運営は村単位の代表『村長』が行うのだが
『アストランタ』の周辺の『村長』は元冒険者であったので
『アストランタ』は他の地方よりも物量の流れや人の流れが管理されていた。
黒飛蝗襲来時も山村や農村への伝達がキチンと機能していたので
襲来後による食糧不足の心配はあったのだが
街や村との食糧の管理により小麦不足はあるものの
ジャガイモやソバなど代替えで食糧で賄う事で乗りきる事になった。
東の草原に作られた『開拓村』は春前に完成していた。
住居区の川辺の陣地と橋は頑丈に作られていた。
農場の畑は杭とロープで作られており随時『土壁』へと作り直される。
10mx10mを一区切りとし柵とロープで野犬などの警戒する事になる。
柵とロープで野犬から襲撃を防ぐ事は無理なので
住居区へ避難するまでの足止め程度に考えていた。
春の種まきをする頃には畑が五つに増えていた。
川辺の陣地から橋を通り畑の中央に荷馬車が二台通れる通路を確保し
畑と畑の間にも荷馬車が通れる通路を作り。
通路にも杭とロープで柵を作り安全面を確保しつつ野犬などの襲撃に備える。
水に関しては井戸を掘る計画があったが
川辺が近くにあると言う事で井戸を掘らずに荷台に樽で水を運ぶ事になる。
この頃から東の草原の『開拓村』は通称『東の開拓村』と呼ばれる事になる。
『東の開拓村』は黒飛蝗襲来時の冒険者の遺族たちが多く生活し
ギルドからも『開拓村』への長期護衛と開拓依頼が発行され
引退前の冒険者や初心者冒険者が『開拓村』で働く事になる。
『開拓村』では自分達で農場を拡張し維持する事が可能な為
数カ月で数十人の住民が暮らす村へと成長を遂げる。
『アストランタ』から『東の開拓村』へは街道が通っておらず
来年度はギルドと街との共同工事として街道を繋ぐ事になる。
草原や林を通るので草を刈ったり木を切り倒したり
道路工事と言うか歩くのに邪魔な物を取り除くだけの仕事になる。
それと杭を打ち街から陣地までの道筋を決めたりしていた。
その道筋を仮の街道とし冒険者が何度も歩きながら道を固めていく。
ジン達の住まう『開拓村』も同じように道を作っていた。
春になり山羊が『開拓村』へ番で六頭と子山羊が三頭やってきた。
最初こそ警戒していたが山羊の遊び場の生活に慣れてくると
警戒する事無くジン達に甘えてくる。
山羊たちは遊び場の小屋で眠り一日の大半を休耕地で過ごす事になる。
種蒔き前の数カ月を山羊たちに開放し雑草の処理をお願いし
山羊の世話はルカ・カミル・ミミル・ルルス・ロシンの五人が担当した。
五人とも子供の頃から山羊と触れ合っていたので
乳搾りやチーズ作りも彼女達が率先して行う事になる。
定期的にポーションの納品をしていたので生活費に関しては不足は無いのだが
草原や川辺では黒飛蝗襲来以降に黒犬や大蜥蜴の数が減り
ジン達も倒す事が減り肉不足になっていた。
それでもアイテムボックスには未解体の黒熊や大猪が保管されていたが
いずれ食べ尽きる可能性があったので倒しに行く必要があった。
「夏頃には森へ行きたいなぁ。」
晩酌時のジンの一言にソラとシロが行きたそうに
食べる事を止めジンを見つめている。
チコとリコも嬉しそうにしている。
リーナとリンダ達は酒を飲む手を止め
「森へですか?ここからなら一日もあれば四方の森へ行けますが?」
「東西南北・・・四方に森がありますが??」
「黒熊や大猪の生息域がある北の森
湿地帯があり大蜥蜴や毒蛙や毒蛇が生息している東の森
深い森で高ランクの冒険者の狩り場の東の森
南の森は人をも飲み込むほどの蛇が住む森。」
「ギルド職員としては北の森をお勧めします。」
「毒を持つ蛇や蛙は食糧としては不向きですし
何より毒による後遺症が怖いです・・・。」
「東の森は深い森と言う事で広大すぎる面積を有し
通称『迷いの森』と言われてます。
慣れているはずの冒険者でも迷う事もあり
ガイド役がいない場合はギルドでは進入不可としてます。」
「人喰い蛇を相手にするには実力が伴わないと切り裂く事も出来ないと言う。」
「四方でも北の森以外は無理な気がするな・・・。
毒持ちの相手にするのも嫌だし、人喰い蛇も倒せそうにないな。
行くとしたら北の森が一番いいか。」
『どこへ行っても大丈夫よ!』
『そだね、どこへ行っても大丈夫!』
『食べた事無いのは蛇かな?』
『そういえば蛇は食べた事無いね?』
『毒蛇は食べれそうにないし・・。』
『人喰い蛇なら食べれるんじゃない?』
ソラ・シロ・クロは食堂のテーブルの上で相談をしているのだが
ジン以外には「にゃー」「わん」「キュー」としか聞こえていなかった。
最終的に人喰い蛇のいる南の森に行きたそうにしている。
チコやリコも何となくではあるがソラ達の声と言うか思考を理解しており
危険を伴う南の森へ行きそうな雰囲気を感じ
「もしかして、ソラ達は南の森へ行きたいの?」
チコの一言にソラ達はコクリと頷き
リコは「やっぱりそうか~。」と呟きながらも
「蛇の調理は初めてだけど楽しみかも。」
チコとリコもまた南の森へ行く気満々である。
ジンもまた南の森にいると言う蛇の事を考え
「新しく『革の腕輪』に『魔法障壁』Lv3を付加すれば大丈夫だろう。
護りを固めておけば襲われても対処出来るだろうし。」
「確かに『魔法障壁』を展開しておけば襲撃に備えておけますが・・・。」
「それでは魔力が尽きてしまうのでは?」
「付加した魔法は普通に魔法を展開するより魔力を抑えるはずですが
それでも常時障壁を展開するのは問題無いんですか?」
「大丈夫だと思いますよ。
ソラ達は周辺の感知に優れているし襲われる前に対処できると思う。」
「私達も周辺の感知する事が出来ますし大丈夫です!」
「はい、ソラ達よりは劣りますが感知する事が出来ます!」
チコとリコもまたジン達と行動を共にするうちに
周囲感知能力が優れ接近する外敵には敏感に反応する事が出来た。
ソラ達は400m離れた距離の外敵を知る事が可能なのだが
チコとリコは100mの範囲内なら感知する事が可能だった。
ジンはMAPを使えば距離に関係なく感知する事が可能だが
MAP無しではチコ達と同じように100m圏内しか感知する事しか出来なかった。
『青空旅団』のジン・チコ・リコの三人の話を聞きながら
ギルド職員のリーナ達は「どうしたらいいものか・・・。」と考え
「あの話の流れ的に南の森へ行く事になってますが?」
「ギルドとしてはジンさん達には北の森へ行ってもらいたいんですけど?」
「いくら感知能力が優れていても人喰い蛇の攻撃は防げないと思います。」
「感知しても防げない?」
「人喰い蛇の攻撃が問題なんです。
動物でも人でも近づき噛みつき毒で弱った所を絞殺し丸呑みする。」
「噛みつかれなくても巨大な身体で絞殺す。」
「ジンさんらの障壁でも耐えられるかどうか・・・。」
「絞め殺しに来るとしたら対処次第では大丈夫だと思いますけど?」
「そうなんですか?」
「蛇の移動速度は巨大な割に高速で森の中を動き回ると言います。
草木を避けながら音も無く近づく・・・気が付いた時には絞められていると言う。」
「武器を構えて対処しても蛇の外皮を傷つけること叶わず・・・。」
「『土壁』で守りを固めても『土壁』ごと締め上げるという。」
「やはり武器や魔法を使用しても締め上げるか・・・。
『土槍』や『茨の森』で突き刺せば何とかなるかもしれませんよ?
それより噛まれる寸前に頭を落とせば倒せそう気がしますが?」
「余程の熟練者でなければ蛇の首を落す事は叶わないと思います。」
「私達でも首切りが出来るかどうか・・・。」
「魔法で首切りをするには『風魔法』が一番です。」
「同じく魔法での首切りは出来そうにありませんが・・・。」
「何はともあれ夏頃に南の森へ行くまで装備を整えれば良いかな。
『革の腕輪』と『銀の指輪』の付加魔法の更新も考えるとして
『格闘』スキルでも斬り裂く事を覚えないとな。」




