黒飛蝗襲来④。
東の草原にて黒飛蝗の襲来から一時間後
広範囲の魔法攻撃により飛翔する黒飛蝗はいなくなったが
代わりに草原を覆い尽くす黒飛蝗が前方に群がっていた。
膝高さのある黒飛蝗がカサカサカサカサカサカサカサ・・・・と
そして、魔法攻撃で息絶えた黒飛蝗を黒飛蝗が捕食していた。
最初に異変が起きたのは黒飛蝗の動きが速くなった事
次に剣の切れ味が落ちた事
最後に魔法が効きにくくなった事
ランクA冒険者『紅蓮の狼』のラグナは黒飛蝗を斬り裂きながら
ランクB冒険者達を撤退させた事を結果的に良かったと思っていた。
「攻撃魔法は使わず支援と回復魔法を頼む!」
「俺たちは黒飛蝗を斬り刻むか!」
ラグナと同じくランクA冒険者『大切断』のオードリーが大剣を構えながら吠える。
大剣を構えた冒険者が黒飛蝗を斬り飛ばしたり叩き潰していた。
「それにしても・・・あれは黒飛蝗なのか?」
背丈ほどの魔法の杖で黒飛蝗を貫きながらランクA冒険者『聖上の要』のアマノが首を傾げる。
魔法で強化した杖の攻撃は本来ならば数匹を貫通する威力があるはずなのだが
一匹を貫通するのがやっとの状態だった。
ラグナとオードリーが前面に立ち黒飛蝗に向かい討つ。
『紅蓮の狼』と『大切断』のパーティーで二人のサポートをし
アマノが『聖上の要』を守るようにし
『聖上の要』のメンバーで二つの冒険者達に魔法で『身体強化』や『速度強化』をし
いつも以上の動きを見せていたが・・・それ以上に黒飛蝗の攻撃は止む事無く続いていた。
「黒飛蝗の死骸を喰うとか聞いてないぞ・・・。」
「それより喰った黒飛蝗の様子がおかしいんだが?」
「それとも剣の斬れ味が落ちたのか?」
「斬れ味が落ちたんじゃない!やつらが硬くなったんだ!」
魔法で強化された状態でも一撃で倒す事が出来たが
倒す数より向かって数の方が多くなっていた。
「あまり使いたくないが!」
ラグナは『火属性』の魔力を自分の剣に纏い『火炎剣』を作り上げ
黒飛蝗の群れに駆け出し剣を振るう!
斬られた黒飛蝗は斬り口から炎を上げ燃え尽きる。
それを見ていた他のメンバーも魔力を纏い『火炎剣』で黒飛蝗を斬り刻む。
「魔力枯渇には気を付けろよ!」
「「「おぅ!」」
燃えさかる黒飛蝗の死骸には群がる事は無く。
近づいた黒飛蝗が燃え騒いでいるが『紅蓮の狼』達は次々と黒飛蝗を倒していく。
それを見ていた『大切断』のオードリーも魔力を纏い『疾風剣』を作り上げる。
黒飛蝗を叩き潰していた大剣は・・・黒飛蝗を『切断』するほどの斬れ味を発揮し
『疾風剣』の一撃で数匹を切断していく!!
「まずは頭を潰せ!」
「「「おぅさ!」」」
「私達は彼らの支援を!魔力温存で戦場の維持に努めます!」
「怪我をしたら後方に下がって下さい。」
「ポーションはまだまだありますから無理しないで!」
『聖上の要』は本来遠距離魔法で黒飛蝗の討伐をしていたが
魔法による黒飛蝗殲滅の難しさを悟り『紅蓮の狼』『大切断』と相談をし
魔法による支援回復をし黒飛蝗討伐のサポートに変更した。
これにより『紅蓮の狼』と『大切断』は攻撃に専念でき
魔力も『火炎剣』や『疾風剣』に使える事になる。
数千の黒飛蝗の黒飛蝗を倒し
残り数百まで数を減らした頃には
負傷した冒険者達を守るように黒飛蝗と対峙していた。
ラグナやオードリーは負傷しているものの黒飛蝗へ斬りかかる。
後方ではアマノが『聖上の要』を守るように魔法の杖を構えている。
ポーションによる回復も疲労までは回復しきれず
次第に怪我をし負傷し戦線を離脱していく・・・。
その時、西の方・・・街の方から接近する土煙りをアマノは見つめていた。
最初は気のせいかと思ったら近づくにつれ冒険者だと気付く
ラグナやオードリーも同様に黒飛蝗を斬りながら土煙の方を見て「にやり」としている。
何故なら土煙から黒飛蝗への攻撃が見えたからだった。
「多分仲間だと思うんだが・・・。」
「黒亀に乗った冒険者に知り合いはいないぞ?」
「それより弓矢で黒飛蝗を倒していますが?」
「魔法でも倒している気がするが?」
「そのようですね、私より魔法が上手なんでしょう・・・。」
ラグナ・オードリー・アマノは黒飛蝗と戦いながら後方をチラチラ見ながら
何が起きているのか気になってしょうがなかった。
弓矢で黒飛蝗を倒しているのは確認出来た事で味方と考え
黒飛蝗を倒す事より黒飛蝗から倒されない事にシフトチェンジした。
頭を潰すより動きを止める前足を潰す事にし
ラグナ達は体力の温存と魔力の温存に努める。
次第に近づく正体を知り・・・やはり首を傾げた。
黒亀に乗った冒険者三人・・・二人は少女。
しかも子犬と子猫も一緒という戦場には似合わない感じがしたが
確かに少女の二人は弓矢で黒飛蝗を倒していたし
子猫と子犬は魔法で黒飛蝗を倒していた。
何より驚いていたのは倒した黒飛蝗を黒亀は撥ね飛ばしていた。
黒亀はランクAの冒険者達の周りにいた黒飛蝗を轢き飛ばし
安全地帯を作りラグナやオードリー達の前で停車する。
ジンは「よっこいしょっと・・・。」クロの甲羅から降り
「ギリギリ間にあったかな?
クロは魔法で黒飛蝗を逃がさないように囲って・・・。
ソラとシロはクロのサポートをお願いね!」
『『『任せて!』』』
クロは前方に群がる黒飛蝗の群れを囲う様に『茨の森』を唱える。
ソラとシロは群れの中に『土槍』を展開し黒飛蝗を倒していく。
「チコちゃんとリコちゃんはポーションを配って貰えるかな?」
「「はーい。」」
二人は負傷した冒険者の元へ向かいポーションを手渡していく。
ポーションを使い切り魔力枯渇の者や重症者な者達は
二人に感謝しながらポーションを飲んでいく。
全員にポーションが行き渡り「「おわったよ~。」」と二人の声が聞こえ
ジンはラグナやオードリー・アマノに体力・魔力回復ポーションを手渡し
「そういえば名乗っていませんでしたね。
『開拓村』『青空旅団』のジンです。
ここにポーションを届けに来ました。」
にっこりとイイ笑顔でジンが自己紹介する。
それに続いてチコとリコも「チコです!」「リコです!」と自己紹介し
黒飛蝗を魔法で囲ったソラやシロが戻ってきたので
ソラとシロを抱き上げてからラグナ達に紹介する。
「子猫のソラと子犬のシロです。
それと黒亀のクロです。
ここにいるメンバーで『青空旅団』です。」
「「よろしくです。」」
『『『よろしく~。(にゃー・わん・きゅー)』』』
自己紹介をしても驚いて動かないラグナ達にジンは後ろを指さし
「倒さないんですか?」と声をかけて慌てて武器を構え
『茨の森』の土槍に体当たりし絶命していく黒飛蝗を見ながら・・・
「どこから入ればいいんだ?」
ラグナは『茨の森』を触りながら進入できそうな場所を探している。
オードリーも同じく『茨の森』を見ながら入れそうな場所を探し・・・首を振る。
「俺では入れる隙間が無い。
ラグナはどうだ入れそうか?」
大柄なオードリーは早々に入れる場所を探すのを諦めた。
ラグナも同じく身体が通れそう場所を見つける事が出来ずにいた。
ジンは『茨の森』の上部を見ながら飛び越えれば直ぐなんだがなと思いながら
『茨の森』に手を置いてから人が通れそうな大きさに『土魔法』を解除した。
「よし!これならいける!!」
「魔力も回復したし全力でいく!!」
ラグナ・オードリーが『茨の森』へ駆け出していく。
それに続いて『紅蓮の狼』や『大切断』のメンバーが『茨の森』の中へ入り
『火炎剣』や『疾風剣』を用い、黒飛蝗との戦闘を再開していく。
アマノ達『聖上の要』の面々はクロの魔法に驚き
『茨の森』内部に入らずに『茨の森』の土槍を触り
土魔法の魔法構築や込められた魔力量を感じ
「これは『土魔法』の上位のものか・・・。」とか「半端じゃない魔力量だ・・。」とか言ってる。
それ以上に魔法を放ったのが冒険者じゃない事に驚き
「ありがとう、君達が来なかったら全滅するところだった。
それとこの子達の魔法は凄いな・・・。」
アマノに魔法の事を褒められソラやシロは『えへへへ』とニコニコしている。
クロは疲れたのかジンに撫でられながら「おなかすいた~。」と言っていたので
ジンは「はいはい。」と林檎を取り出しクロに食べさせている。
それを見たソラとシロも「「おなかぺこぺこ。」」と言われ
「もうすぐお昼ご飯か・・・。」と思いソラとシロに『串焼き』を取り出し
「静かに食べるんだよ?」と声をかけてからソラとシロは食べ始める。
「ポーションを届けたのはギルドから頼まれていた事なので気にしないでください。
この子達も魔法を十分に使えて嬉しそうでしたし
それよりも・・・もうすぐ終わりそうですね。」
ジンは『茨の森』の向こう側へ目を向けると
ラグナ達が黒飛蝗達を燃やしながら戦場を駆け
オードリー達が黒飛蝗達を両断しながら斬り伏せている。
体力と魔力が十分な状態な彼らなら百に満たない黒飛蝗がいくらいようと問題なかった。
飛翔出来ない・・・飛び跳ねる事が出来ない
ただ、食欲旺盛な雑食の大型の蟲如きランクAにとっては・・・。
暫らくして『紅蓮の狼』と『大切断』により黒飛蝗の襲来は終わりを迎える。
被害は東の草原を焼きつくし凍らせ魔法によりデコボコになった事ぐらいだった。
冒険者は休息があれば回復する程度の怪我をしたぐらいだった。
それほど今回のポーションの効果が良かったともいえるが・・・。
「終わった。終わった~。」
「今回ばかりは帰れる気がしなかったぜ!」
「ジンさん、ありがとう。」
「あぁ、命拾いした。ありがとう!」
「嬢ちゃん達もありがとうな!」
「君らが来てくれなかったら俺たちも黒飛蝗に喰い殺されていたよ・・・。」
全ての黒飛蝗を倒し『茨の森』から出てきた彼らはその場に座ったり
鎧を脱いで疲れたからか横になる者達までいた。
それを見てチコとリコは再び彼らにポーションを配り
一気にポーションを飲み干し「つかれた~」と声を上げるのだった。
「これで黒飛蝗の襲来は終了ですか?」
東の草原の黒飛蝗をすべて倒しラグナ達は
「全部倒したから終了じゃないかな?」
「この現状をギルド職員が見て正式に終了宣言すると思うが・・・何故だい?」
「いえ、終わったのなら帰ろうと思いまして・・・。
『開拓村』に戻って終わった事を教えに行きたいので・・・。」
「それなら『開拓村』にもギルド職員はいるだろうから
黒飛蝗は全部倒して事を教えてもらえるかな?」
「いいですが・・・みなさんは戻らないんですか?」
「我々は万が一にも生き残りがいないか確認をしてから戻る事になってるんだわ。」
「それにこのままにする訳にもいかんからな・・・・燃やすか?」
「黒飛蝗はギルドへの納品と言うか換金する部位はないんですか?」
「無いな・・・黒飛蝗は虫の中でも使い勝手の悪い種類なんだわ。」
「斬れるし潰れるし加工しやすいが防具としては革より下だね。」
「初心者防具としても不人気だしね。」
「肉食虫の方が防御力あるしね・・・。草食虫はギルドでの人気が無いから
ギルドによっては黒飛蝗の取引をしない所もあるらしいからね。」
「なるほど、色々ありがとうございました。」
「それは俺達のセリフだ、来てくれてありがとう。」
「本当に助かった、今度酒でも奢らせてくれい!」
「そうだな、今度一緒に飲もう!」
「ありがとうございます、その時は宜しくお願いします。」
「「またです~。」」
ジン達は『紅蓮の狼』『大切断』『聖上の要』も冒険者達に頭を下げ
クロに乗りゆっくりと『開拓村』へ向け歩き出す。
最初はゆっくり歩き・・・次第に速度を上げ・・・東の草原を駆けて行く。
ジンは離れてから後ろを向くとクロが放った『茨の森』が見えた。
「そういえば『茨の森』は消さないでいいの?」とクロに聞くと
『あの『茨の森』は一時的に殺傷能力を上げたから三十分で消えるよ。』と教えてくれた。
「時間制限で魔法を展開したのか・・・」と驚いたが
消える事を教え忘れたと思ったが戻るのも面倒と思い気にする事を止めた。
『開拓村』で作られた八割のポーションを消費し
『天災』と言われた黒飛蝗の襲来は終了する。
「黒飛蝗がいなくなれば大蜥蜴や川鳥が戻ってくるかな?」
「釣りが出来なかったし焼き魚・・・。」
「川魚が戻って来なかったら海へ行きましょう!」
「川魚と違うと聞きましたが・・・本当なんですか?」
「そういえば、チコちゃんとリコちゃんは海は・・・行った事は?」
「「ないです!」」
「それじゃ、暫らくして川魚が戻って来なかったら海へ行ってみようか~。」
「冬期間ですが釣りできるんですか?」
「南の街は海の魔物が出たんじゃ?」
「そういえば、南の街は海の魔物騒動があったね・・・忘れてたよ。
『開拓村』へ戻ったらリーナさんに聞いてみようか?」
「「はーい。」」
ジン達が去った後の東の草原での一コマ。
「『開拓村』って初めて聞いたんだけど・・・知ってたか?」
「街の南東で小屋建てしてる冒険者達の住む場所を『開拓村』と言う名称にしたと聞いたが?」
「それじゃ、『青空の旅団』の事は?」
「噂程度なら聞いたことあるけど・・・黒亀に乗って旅をする冒険者としか・・・。」
「採取系冒険者とも聞いたぞ!」
「俺が聞いたのは野営の専門家だと聞いたが?」
「採取をして野営が得意な冒険者ってなんだよ・・・。」
「そういえば子猫と子犬の使う魔法が凄かった気がするけど?」
「込められた魔力量の違いだと思うけど・・・。」
「そういえば黒飛蝗を一撃で倒していた気が・・・。」
「あの『土槍』は凄かったな。」
「確実に息の根を止めてたね。」
「それをいうなら黒亀の広範囲の『土槍』の方が凄かったんじゃ?」
「あれは『土槍』じゃないかもな・・・。」
「それじゃ、『土槍』の上位魔法ですか?」
「その可能性はありますね。私達の知らない魔法かもしれませんし・・・。」
「『土魔法』を有効活用し足止めとして使う・・・。」
「私達とは違う意味で魔法を使ってるんですね。」
「やはり魔法は面白い!」
「「「はい!!」」




