夏の終わりと『開拓村』。
南東にある『青空旅団』の簡易陣地はギルドからは『開拓村』と呼ばれる事になる。
開拓と言われても『岩壁』で囲まれた小屋建てなのだが・・・
『青空旅団』の敷地内にある畑で収穫される葉野菜をギルドへ納品したり
周辺の大蜥蜴や野犬や黒犬なども同じくギルドに納品し報酬を得て生活していた。
最初こそ若手冒険者として生活していた『草原の風』の4人は
『開拓村』での修練の日々で魔法の腕も向上し
中堅冒険者並みの実力を身につけていた。
それでもアリス達は『開拓村』でみんなと一緒に野菜の収穫をしたり
時には薬草を採取してポーションを作成したりと
チコやリコと同じくジンから色々な事を教えられ
『草原の風』は採取系冒険者になっていた。
ギルド職員だったリンダ達3人は『草原の風』の護衛を終了し
冒険者ギルドから『開拓村』の管理をお願いされる事になるのだが
本来『青空旅団』の簡易陣地と言う事なので
リンダ達にはギルドと『青空旅団』のジンとの口利き役をお願いされる事になる。
「『開拓村』の管理は無理です。
『青空旅団』のジンさんにお願いして下さい。」
「ギルドからのその依頼は無理です。」
「あの場所は『青空旅団』の小屋建てですよ?」
冒険者ギルドからの依頼と言う名の『お願い』をリンダは一度は断り。
受付嬢のリーナからの妥協案でギルドと『青空旅団』の窓口をお願いされる。
リーナもジンさんの住む場所を奪う事に抵抗を示し
それなら『青空旅団』と交流をした方が得策だと言う事をギルド長に進言する。
冒険者ギルドとしても数カ月で若手冒険者が中堅冒険者並の実力になった事に驚きつつも
『開拓村』で冒険者に育成を行う事も一つの手だと考え始めるギルド職員もいた。
「リンダさん達には『開拓村』との取引をこれからもお願いします。」
「月に二度ほどの取引で大丈夫ですか?」
「取引と言っても葉野菜と大蜥蜴に野犬・黒犬の納品になりますが・・・。」
「冬期間までは葉野菜は収穫出来ると思いますが・・・。」
「それと大蜥蜴なども必ずしも納品できるとは思わない方がいいですね。」
ギルド職員達が『青空旅団』との取引について協議している間
リンダ達3人は『早く帰りたい・・・。』と考え話し半分で話しを聞いていた。
「『青空旅団』との取引ですがマジックバックの保管量が溜まり次第納品としては?」
早く帰りたいリンダは一つの案を提案していたが
頭の中では『面倒だな・・。』とか『いつまで続くのかな・・・。』と思っていた。
リーナだけは3人は話に飽きてきたのを察して
「複数のマジックバックを提供し順次溜まり次第ギルドへの納品にしましょう。
それと移動も考え馬を数頭と餌の準備をお願いします。」
ギルドの会議はリンダの案をリーナが手を加える事により
『青空旅団』との取引を荒削りではあるが開始する事になる。
最後にリンダはジンからのお願いを思い出し
「そだ、大蜥蜴などをギルドに納品を頼まれてました。
それと納品報酬で調味料や果実酒の大樽を持ち帰らなきゃ・・・。
後は・・・『草原の風』の4人に着替えも買わなきゃなぁ。」
「それなら直ぐに解体スペースへ取り出して下さい。
忙しそうなので鑑定後に納品報酬をお渡しします。」
そう言ってリンダとリーナは会議室から飛び出し
解体スペースに次々に大蜥蜴などを並べていく。
解体をしていたギルド職員達も並べられた大蜥蜴を見ながら
「これは数日は解体作業だなぁ・・・。」とか「一度に大量納品はめずらしいな・・。」と呟き
最後に籠一杯の葉野菜と薬草の束を取り出す。
「最後に野菜と薬草ですか・・・。」「それは受付カウンターにお願いします。」と言われ
リンダはマジックバックに再び保管し受付カウンターへ向かうのだった。
改めて野菜や薬草を納品しリンダは納品報酬を手にし『小金持ち』と言いながらニコニコしている。
「それでは調味料などの購入はどうしますか?
ギルドでも取り扱ってますけど・・・・?」
「各種調味料を10人で数カ月分って感じでお願い出来ますか?」
「大体の消費量で考えて用意します。
追加で果実酒が大樽で・・・1つですか?」
「果実酒は・・・大樽で2つお願いします。」
「大樽は2つと・・・。
『草原の風』の4人の着替えでしたね。
一般的な着替えと言う事なら用意できますが・・・どうします?」
「ここで買える物は当たり障りのない着心地よりも丈夫さを重視した物ですよね?」
「・・・そうですね。」
「街へ早々戻る訳じゃないのでギルドで販売している物でお願いします。
それと4人分では無く9人分お願い出来ますか?
2人分は子供服でお願いします。」
「ジンさんの分はいいの?」
「忘れてました、ジンさんの着替えも追加でお願いしたいですが
この納品報酬で全て揃えられますか?」
そう言ってリンダはニーナに納品報酬の入った革袋を手渡す。
「購入リストの中でも調味料が一部高額ですが
納品報酬の8割で全て購入可能ですね。」
「余るようでしたら果実酒を追加でお願いします。」
「飲み過ぎでジンさん達に迷惑をかけないでくださいね。」
「大丈夫ですよ~。みんな仲良く暮らしてますから~。
そだ、ジンさんがリーナさんに簡易陣地じゃないや
『開拓村』を見学して欲しそうな事言ってましたよ?」
「見学ですか・・・それまたどうしてですか?」
「『草原の風』の4人の育成が終了した事で
新たに冒険者を受け入れても大丈夫だと言う事を知らせたいとか?」
「そんな事を言っても女性のパーティーの中に男のパーティーを送るのは無理でしょ?」
「無理と言うかイヤだね。」
「それで向こうの暮らしはどうなの?
育成が終わったのなら街へ帰って来てもいいのに・・・。」
「ご飯は美味しいし気が楽と言う事もあって帰る気は無いな。
焚き火を囲んで酒が飲める喜び・・・あれは街では味わえないな。」
「一緒に『開拓村』行くのも面白そうね。」
「一緒に行くのは良いけどリーナは何か出来たっけ?
魔法とか狩りとか得意だって聞いた事無いけど??」
「リンダさん達と違い戦える術はありません。
かわりに料理や裁縫は得意ですが・・・。」
「それなら丁度良いかも食事はジンさん達が担当しているんだが
明らかに人数不足と言うか大変そうなんでリーナさんが手伝いしてくれるなら大助かりだ。」
「家庭料理しか作れませんが・・・いいのかな?」
「大丈夫だと思うよ、ジンさんも野菜の収穫に手が回らない様な事言ってたし。」
「そういう事ならギルド長に進言して私も『開拓村』へ行きましょう。」
リーナはそう言って会議室へ向かうのだったが
「まずはリストの物を用意して~。」とリンダに言われ
慌てて他の受付嬢にリストを渡し代わりに買い物をお願いするのだった。
暫らくするとリーナが戻ってきて「準備してくる。」と言ってギルドを飛び出していく。
「あれは『開拓村』へ行く許可を貰ったみたいだな。」
そう思いながらもリーナが泊る部屋ないけど・・・どうしよ。
この日から簡易陣地改め『開拓村』の住民が増える事になる。
東方の内陸部で『黒飛蝗』の大量発生による食害が大陸を襲う事になる。
『黒飛蝗』の大量発生は数千数万の大軍が農地のみならず
草原や森に住まう野うさぎや黒犬などの生物をも襲い掛かり
人々は建物の中で『黒飛蝗』が飛び去るのをじっと待つ他無かった。
冒険者達も黙って『黒飛蝗』を見過ごす事は無かったのだが
数万の軍勢に冒険者ギルドの冒険者たちは反撃の機会を得る事が無いまま
弄られ蹂躙され内陸部の冒険者の数は激減していく・・・。
空を覆い尽くすほどの黒い軍団が次第に近づく事をジン達はまだ知らない・・・。




