住む場所の完成。
夏の終わりに『青空旅団』の簡易陣地は敷地を拡大していた。
『土壁』で作られた外壁は改造を繰り返して
チコとリコの手によって『岩壁』へと姿を変え
高さ3mの厚さ1mの防壁になっていた。
扉だけはジンの手作りの木製の扉になっていたが
3mのクロが通れる大きさにした為に重く
正面の扉を開けるのにも一苦労な代物になっていた。
もっとも扉とは別に人一人通れる小さな扉があり
ジン達はそこから外へ出る事になる。
簡易陣地と言っても20mx20mの敷地は100mx100mに拡張しており
建物よりも畑が敷地の7割を占めていた。
畑にはクロが好きな葉野菜が主に植えられていたり
トマトやナスなども数多く育てられ収穫と消費のバランスがおかしなことになっていた。
チコやリコの2人は毎日の『土魔法』の修練により
『土壁』の上位魔法『岩壁』を修得した。
ジンの様に思い描いた様な建物を作り上げる事は出来なかったが
『土魔法』Lv2になったことで『土弾』や『土槍』を修得し
遠距離魔法で大蜥蜴や野犬を倒す事が出来るようになった。
ジンは2人が魔法を覚えた事より遠距離魔法を自在に扱える事を自分の事の様に喜んだ。
『青空旅団』の住む場所を中心に300mx300mを『土壁』で囲む事に成功した。
チコやリコが中心になり『草原の風』のリンダ達の成果なのだが
毎日の『土壁』作成ばかりやっていて・・・
それ以外の事はジンが担当していた・・・主に食事の世話を。
大蜥蜴や野犬に野うさぎは見つけ次第ソラとシロが倒していたので
食糧不足になる事にならなかったが解体作業が追い付かず
解体作業に関しては『土壁』作業の手を休めて
『草原の風』の4人がギルド職員達の指導をしながら解体していく。
『草原の風』のリンダ達には冒険者には必須の技術だと教え
アリス・イリス・ウルド・エトナの4人は街周辺に出現する
大蜥蜴・野犬・黒犬・野うさぎ・川鳥の解体を覚え実践していく。
チコやリコは解体作業中は川辺で釣りをする事になる。
ジンが畑仕事を始めてから釣りをする時間が無くなり
『焼き魚』を食べる機会が減ったので
仕事の合間の釣りは2人にとって楽しみの1つになっていた。
護衛役にソラとシロが同行していたので
集中して釣りをし毎回10匹以上の魚を手にしニコニコしながら帰る事になる。
ギルド職員のリンダ・リスター・リムルの3人は
『草原の風』の護衛として街の南東に来ていたはずなのに
気が付けば『草原の風』と一緒に開拓作業をしていた。
『土壁』を作り敷地を拡張してからは
住む場所を作る事にしていたがリンダ達には建物を作る事が出来ず
ジンにお願いして3人の寝室などを作って貰ってからは
帆馬車で寝泊まりする事無く眠る事になり
街での生活よりも快適な暮らしに嬉しくもあり複雑な心境でいた。
『草原の風』は『土壁』完成後にはパーティーが住まう小屋建てを始める。
最初こそ帆馬車を『土壁』で囲っていたのだが
最終的には『土魔法』で小屋を作り上げる事に成功し
4人の寝室を作り街での宿屋暮らしよりも寝やすい部屋を作り
毎日ぐっすり眠る事になる。
街南東にある『青空旅団』の小屋建ての場所は
冒険者が作る小屋建てとは1つ違った所があった。
それは冒険者達の小屋建てを『土壁』で囲う事にあったのだが
それよりも住む場所以外の事は冒険者達が共同で行うと言う事にある。
共同のトイレがあったりお風呂があったり・・・
これは共同の女子トイレの事であり
お風呂もジン以外が利用する大浴場の事である。
管理は冒険者達が交代で行う事になる。
食事はジンが料理しチコとリコが助手として調理場を切り盛りしていた。
育てた野菜や倒した獣たちの肉が食べきれないほどある事から
食料に困る事が無いんだが育ち盛りの『草原の風』のメンバー達は
毎日好きなだけ食べれる事に感謝しながらジンの手伝いをしていった。
この日も焚き火のある部屋で全員揃って食事をしていた。
食事と言ってもパンやサラダを大皿に盛りつけられているのだが
何故か焚き火で焼き上がっている『串焼き』や『焼き魚』を食べる者が多く
アリスやイリスは両手に『串焼き』を手にし頬張って食べているし
ウルドはパンに『焼き串』をはさんで美味しそうに食べている。
エトナは『串焼き』と『焼き魚』を交互に美味しそうに頬張っている。
リンダ・リスター・リムルの3人は『串焼き』を肴に果実酒を飲んでいる。
「ここの暮らしは野営とは思えないほど充実してるな。」
「まさか夜に酒を飲んでも大丈夫と言うのは考えられんな。」
「ここは野営地と言うより街と同じくらいの安全な場所になっています・・・。」
「無いのは酒場と店舗くらいか・・・。」
「大浴場は街には無いけどね・・・。」
「そういえば数カ月街へ行ってないけど食糧はあるけど
調味料とか不足した物資は無いんですかジンさん?」
「そうですね、調味料の消費は気になりますね。
調味料が塩だけでも料理は出来ますが・・・
味を整えるには他の調味料は必要ですね。」
「それなら街へ買い出しに行った方がいいかな?
酒も残り少ないし着替えも新調したいし・・・。」
「それなら大蜥蜴と黒犬を数体渡しますんでギルドへの納品をお願いします。
納品報酬で調味料を購入してもらいたいですね。
リンダさんの欲しいところの果実酒も大樽で欲しいですけど・・・。」
「大蜥蜴が2体あれば使いきれないほどの調味料が買えますし
果実酒を大樽で欲しいと言う事ですが買う事は可能ですが
ここへ運ぶのに問題がありますけど?」
「そういう事なら受付嬢のリーナさんに簡易陣地を見学してもらいましょう。
完成前の事は知っていても現在の簡易陣地の事は知らないはずですし
今の現状を知れば新たに若手の冒険者達が来る事もあるでしょうしね。
本当は畑の野菜が過剰に採取していてギルドへ納品したいと思いまして
何より大蜥蜴や黒犬も消費しきれないほど保管しているのも考え物ですし。」
「やはり過剰に保管してるんですね・・・。
襲われれば倒すしかないとはいえ・・・
確かにギルドへ納品出来れば生活費の補てんにもなりますか・・・。」
「しかしいいんですか?
大蜥蜴や黒犬はジンさん達が倒したはずですが?」
「簡易陣地の警護や獣たちの解体などは手伝ってもらってますし
ここの施設の管理費だと思えばいいですよ。
それと街へ行ったらチコ達と『草原の風』の方々に
ここでの維持管理の報酬として着替えなどを買ってきてもらえないかな?」
「え、いいんですか?
私達はここで『土壁』を作ってただけですけど??」
「維持管理と言ってもトイレ掃除とお風呂掃除のことかな?」
「もしくは野菜の収穫かな?」
「そうですね、ここで暮らしているアリスさん達が頑張っているから
ここの暮らしが快適になっていると思いますよ?」
「ここにいる内はアリスさん達『草原の風』のみなさんはギルドで依頼をする事が出来ません。
ジン兄さんは『草原の風』のみなさんを違う意味で雇っていると思っているんじゃないですか?」
「この簡易陣地での暮らしは共同生活に似ていますが
どう考えてもジンさんの負担が大きい感じがするんですが?」
「そうですか・・・考え過ぎだと思うんですけど・・
それにジン兄さんは嬉しそうに料理を作っていますけど?」
「それよりも野営地暮らしなのに寝ずの番が必要無くなって
ゆっくり寝れる事が出来るのが一番嬉しいんじゃないですか?」
「私はジン兄さんと一緒にゆっくり出来て嬉しいです。」
「そうだね、街ではのんびり出来なかったし
ここならソラちゃんやシロちゃんにクロちゃんものびのびと暮らせるし~。」
「黒亀のクロさんは街での暮らしは窮屈でしょうね。」
「ここなら好きなだけ昼寝できるし森や草原に似た環境だし
クロさんには嬉しい暮らしじゃないかな?」
「数カ月の長旅で見つけた場所で暮らせる事が嬉しいし
何より街と違い自分達で住む場所を好きな感じで作れるのは良いね。
この場所は薬草採取するにも釣りに行くにも最適な場所だし
何より街から離れていて人の目が届かないからのんびりゆっくり出来る。
冒険者としての考えじゃない気がするけど・・・。」
「そうですね、ジンさんの言う冒険者の方々は討伐依頼をし
ギルドでいう所のランクを上げて名声を得たいという冒険者然としてないんですね。」
「美味しい食事と雨風を防げる部屋で寝れればいいです。
ランクは二の次で考えれば採取冒険者でいいです。」
「ギルド職員としてはジンさんの様な実力者には討伐依頼をしてもらいたいんですがね。」
「ジンさんらしい考え方は今の冒険者には歯がゆい感じなんでしょうが
強さを求める冒険者がいる者がいるなかで
暮らしやすさを求める冒険者がいても良いと思います。」
この日焚き火を囲みながらギルド職員の3人と『草原の風』の4人は
冒険者のあり方についていろいろ話をしていた。
話の終盤には何故かみんな果実酒を飲み始め
朝になると消えかけの焚き火の周りに丸くなりながら眠る7人の姿があった。
最近では部屋に戻らず焚き火の部屋に寝泊まりする事も多く
焚き火の部屋は寝る事も考え床を板張りにしてあり
床やイスには毛皮を敷いてあったのが一番の問題なのかもしれない。




