もうすぐ南の街④。
次の日は大蜥蜴の肉の塊を受け取り
チコとリコが嬉しそうに『串焼き』を調理していく。
露店で食べた味の再現をしようと試行錯誤していくのだが
試食と称してソラとシロの目の前に次々と『串焼き』が焼き上がり
嬉しそうに頬張っていく・・・。
ジンとクロも最初の1本を頂き『美味しいよ。』と2人に告げてからギルドへ戻る。
クロに荷台を含む簡易陣地の警護をお願いし
何かあれば『『魔法障壁』を展開してみんなを守ってね』と言ってあるので大丈夫だと思うが・・・
「下手に攻撃でもしたら怪我程度じゃすまないしな・・・。」
クロも基本的な魔法は習得してはいたが
最も得意な『魔法障壁』は今では多重で障壁を展開可能になり
『青空旅団』の中でも最も護り特化になっていた。
攻撃魔法も習得していたが法範囲魔法の『土槍』は任意に無数の土でできた槍を作り出し
攻撃するというより向かってくる敵にカウンター気味にダメージを与える魔法になっていた。
チコやチコを護りながら防衛するという面では『魔法障壁』と『土槍』だけで
野犬の群れを相手に無傷で鎮圧することが可能で
野営時の寝ずの番ではジンとクロで長時間担当しチコ達の安眠を護っていた。
再び冒険者ギルドへ戻ってきたジンは受付カウンターへ行き
「冬期間の事で相談に来たんですがいいですか?」
「はい、大丈夫ですよ。」
相談と言う事は冬期間の依頼の事でしょうか?」
「それもありますが、冬期間中の宿泊場所についてです。」
「宿泊場所ですか・・・街の宿屋とか相談ですか?」
「はい、うちのパーティーは子猫や子犬もいますし
大きめの黒亀のいることで普通の宿屋では断られることも多く
最近は草原などで野営することが多々あります。」
「そういえばそうでしたね、テイマー御用達に宿屋は割高という話ですし・・・
そういった方々は貸家などをご利用されると聞いたことがありますが?
ジンさんなら貸家で生活できるほど稼いでいると思うのですが・・・?」
「貸家を利用することは可能ですが街の生活に慣れていないと言いますか・・・。」
「なるほど、それで相談というのは街の外で暮らすにはと言う事ですか?」
「はっきり言えばそうです。」
「確かに宿屋に泊まれない冒険者たちは街の外で小屋建てすると聞いたことがありますが
街の中と違って野犬に襲われたり危険と隣り合わせです。
ギルドとしましてはお勧めしていないのですが・・・・。」
「それなら大丈夫です。
去年も雪降る中の草原で冬期間中無事に過ごしましたし。」
「それが本当だとしてもギルドとしてよく許可しましたね・・・。」
「黒亀のクロが仲間になって初めての冬眠だったので住んでいた森の近くで過ごそうと思い・・・
白狼や大狼の襲撃もありましたが最終的に大量に毛皮と肉を入手出来ましたし。」
「なるほど・・・白狼や大狼の襲撃に対抗できると・・・。
それなら冒険者ギルドとしては反対することは出来ないですね。」
「それで街の周辺で野営するとしてギルドの許可とか必要ですか?」
「小屋建てするとしたらギルドの方に場所を教えてもらえれば大丈夫です。
その場所が危険な場合もありますし野犬や黒犬達の縄張りの場合があるので
極力危険な場所と思われる場所には最初から小屋建ての候補から外して貰いたいです。」
「なるほど・・・それでは小屋建ての候補は危険な場所以外と言う事でいいですか?」
「基本的にそうです。
ジンさん達が今考えている小屋建ての候補の場所などはあるんですか?」
「まだ街の周辺を見たわけではないのですが・・・
薬草採取場所が近く釣りができる場所の近くがいいですね。」
「薬草はポーション作成するからだと思いますが・・・
釣りができるというのは・・・どういうことですか?」
「チコちゃんとリコちゃんが焼魚が好きなので
なるべく食べさせてあげたいなと思いまして・・・。」
「それでしたら街の南東ではどうですか?」
受付嬢はそう言いながらカウンターの上に地図を広げる。
地図と言っても手書きで大まかな街の位置や街道に河川が記されているだけの物だった。
確かに街から南東に無数の川が書かれていた。
「この河が釣り場としては有名ですね。
もっとも河原には大蜥蜴など生息しているので
冒険者でもあまり立ち入ることがないんですが・・・。」
「釣りで有名という割にギルドには河魚を求める依頼がないようですが?」
「依頼報酬に見合うことがないと言う事でギルドとしてはお断りしてます。
釣りしながら大蜥蜴を相手するなど無謀ですから・・・。」
「この河で小屋建てした冒険者は今までいるんですか?」
「・・・いませんね。
危険な場所にあえて小屋を建てようとする冒険者はジンさんが初めてです。」
「小屋建てするとして大きさに制限はありますか?」
「小屋建てをする場合は木造で建てることになります。
大きくすればするほど手間がかかりますし・・・。」
「そっか、今までの冒険者は木造で小屋建てしてたのか・・・
それなら制限以前に大きく作ろうとかは無理ですね。」
「ジンさん達もそうなのでは?」
「僕らの場合『土魔法』で荷台を囲みつつ小屋を作ろうかと思いますけど?
ひょっとしてギルド裏で僕たちが作った簡易陣地見てません?」
「・・・簡易陣地ですか?
それが『土魔法』で作り上げた小屋と言う事ですか?」
「はい、荷台を寝室にしたりトイレなども個別に作ったり
焚き火出来るように広くしてますし便利ですよ?」
「・・・後で見に行ってもいいですか?
それが本当ならギルドとしても『土魔法』を推奨する必要がありますので・・・。」
「それなら大丈夫ですよ。
調理場でチコちゃんとリコちゃんが調理中ですし
クロが待機しているので・・・
声をかけずに侵入しなければ大丈夫かと?」
「一緒に見に行っても大丈夫ですかね?」
「はい、大丈夫ですよ。」
受付嬢はそう言って部屋の奥へ向かい・・・。
「ギルド長の許可を頂いたので案内してください。」
「今からですか?」
「時間を取らせませんのでお願いします。」
「まぁ、いいか・・・それでは行きましょうか。」
ジンの案内でギルド裏に到着すると
受付嬢は目を見張り『土壁』に触りながら
「なるほど『土魔法』の『土壁』で周囲を囲ったんですね・・・。
なるほどなるほど・・・街の中と言う事で壁の高さが1mになってるんですか?」
「そうです、外から何も見えないのでは不審に思われると思い・・・。」
「あれがトイレですか?四角い箱にしか見えませんが??」
「そうです、女子もいますしトイレは必要と思い・・・。
『生活魔法』でトイレはいつも綺麗な状態ですよ?」
「四角い箱が2つあるみたいですけど・・・?」
「もう1つはお風呂です。着替える場所と浴槽の2部屋あります。」
「・・・お風呂ですか、宿屋より快適じゃないですか。」
「これと同じ感じで野営地に作るつもりです。
『土壁』と『岩壁』にし堅甲に頑丈にね。
地下室も作るつもりなので備蓄も豊富にするつもりですし
うまくいけば冬期間中は引きこもり生活かもしれませんね。」
「この作りなら野営するにしても安全は確保できるかもしれませんね・・・。
しかし、これは予想以上ですね・・・、ギルドへ報告するにしても問題がありすぎです。」
「問題ですか・・・面倒な事なら僕らはすぐに逃げるんで・・・。」
「逃げないで欲しいんですが・・・?」
「厄介な事は勘弁して下さい。静かに暮らしたいんで・・・。」
「了解しました。
騒ぎにならないようにしますので・・・また来てもいいですか?」
「大丈夫だと思いますが、明日から教えてもらった街の南東へ行ってみようと思います。
他のメンバーからの意見も聞きたいし場所決めは慎重にしたいし
なにより冬期間まで時間はありますが万全を期して活きたいですからね。」
「明日から現地を視察と・・・なるほどなるほど。」
「あのそろそろいいですか?」
「はい、大丈夫です。
小屋建てする時はギルドへの報告お願いしますね。
それと『土魔法』の活用については後日伺いますので宜しくお願いしますね。」
「はい?」
受付嬢はにこりと微笑みギルドへと戻って行く。
「さて、野営する場所を決めなきゃなぁ・・・。
明日は釣り場でも探しながら小屋建てする場所を探すか・・・。」




