初めての指名依頼。
ジン達が『クラシラス』で暮らし始めて数か月
毎日の朝練と薬草採取を繰り返す日々を送っていた。
冒険者ギルドでは採取系の依頼しか行わずにいたので
ジンはギルドランクがEのまま黙々と薬草を納品するのであった。
そんなある日、冒険者ギルドへ薬草を納品していると
ギルドの受付嬢から1つのお願いという名の依頼をお願いされるのだった。
「いつもジンさんには薬草を納品していただきありがとうございます。」
それは夕方に薬草を10本1束で合計3束納品した時にお礼を言われ・・・。
「それでジンさんに1つお願いがあるのですが宜しいでしょうか?」
受付嬢はにっこりと微笑みジンに話しかけるのだった。
ジンは薬草の納品報酬を受け取り帰ろうとして声をかけられ・・・
「え、あ、はい?」
ジンは「今日の晩御飯はなんだろなぁ~」と考えていたので
突然声をかけられ驚きよりも戸惑いを隠せずにいた。
受付嬢は間髪入れずにお願い事を告げるのだった。
「実は冬期間前に『風邪薬』を調合してもらいたいんですが・・・」
「『風邪薬』を調合ですか・・・
あの調合のレシピといいますか・・・
その『風邪薬』の作り方を知らないんですが・・・」
「・・・え、知らないんですか?」
「はい、『調合』スキルは低くはないんですが
肝心のレシピと言いましょうか、作り方は知らないので・・・」
受付嬢は「まじかよ・・・」という感じでジンを見つめ・・・
首を傾げながら「さて、これは予想外だぞ・・・」と呟き・・・
「それではジンさんの調合のレシピは誰から教わったんですか?」
「僕の場合は教わったというより『調合』スキルを習得したときに
亜生の中に閃いたといいましょうか・・・
実際にはよくわからないんですが『調合』スキルでポーションを調合し完成したという感じ?」
そう言ってジンは過去に『調合』スキルで完成させたポーションを1つテーブルに置いた。
それはポーション屋や道具屋で販売してある『ポーション』と同じものだった。
受付嬢は自身の『鑑定』スキルでポーションを『鑑定』し
「ジンさんの『ポーション』は店売りのものと同等の性能がありますね・・・
『調合』スキルの恩恵というべきなのか・・・さてさて」
「それに他の調合師の方々の『ポーション』の調合レシピを知りませんし
その『風邪薬』の調合レシピはギルドでも資料は無いんですか?」
「ギルドにある資料には『風邪薬』に必要な薬草の種類しかわからなくて・・・」
「道具屋とかポーション屋では『風邪薬』を販売してるんですよね?」
「はい、してますが・・・ギルドでも独自に『風邪薬』を販売したいなぁっと・・・」
ジンは「はぁ~」と息を吐き「さて、どうしたらいいものか・・」と呟き
「とりあえず、調合レシピは不明という事で『風邪薬』に必要な薬草を収集しましょう。
『風邪薬』に調合するのはレシピが見つかってからとか・・・
もしくは、薬草を提供するから・・・その他もろもろの事はお任せします。」
「あのジンさんの調合できるポーションを教えてもらえますか?
テーブルの置いてあるポーション以外も知りたいんですが・・・いいですか?」
「まずは、テーブルの置いてあるポーションは一般的な物です。
傷を治し体力を回復する・・・性能としては中級かな。」
テーブルのポーションを『鑑定』し受付嬢はコクコクと頷く。
次にジンが取り出したポーションは先ほどのポーションよりも小瓶の物で・・・
「これのポーションは毒消しの効果があります。
実際には毒に侵されたことがないので解毒効果は未定ですが・・・。」
「確かに解毒効果があるポーションですね。
実際には毒に侵される前に飲んで耐性を高めるというのが一般的な活用法ですが。」
毒消しポーションを『鑑定』し受付嬢はジンに話しかける。
「このポーションと同じものはギルドでも取り扱ってます。
今度からギルドへの納品をお願いします。
「それとポーションとは違うと思うんですが・・・
こういう物も調合してあります。
そう言って3つの小瓶に入ったあポーションを取り出しテーブルに並べる。
土魔法で作られた小さな小瓶に詰められたポーションは・・・。
「この3つのポーションは『虫よけ』『熱さまし』『胃腸薬』となっています。」
「『虫よけ』や『熱さまし』は名前の通りだと思うんですが・・・
『胃腸薬』というのは何ですか??初めて聞く名前なのですが???」
「食べすぎや飲み過ぎの時に飲む薬と思っていただければ・・・」
「飲み過ぎになどに効くなら『二日酔い』の薬・・・ポーションという事ですか?」
「飲んですぐ効くわけじゃないんですがね」
「あの『胃腸薬』を1つ譲ってもらえますか?」
「はい、いいですよ?」
ジンはそう言い受付嬢に『胃腸薬』を渡し
受付嬢は『胃腸薬』を『鑑定』し、『食べ過ぎ飲み過ぎでの体調不振の回復』という『鑑定』結果を知り、「体調不振の回復ですか・・・」そう言いながらジンに追加で『胃腸薬』を3本追加でお願いするのだった。
「あの一度に3本も『胃腸薬』を飲んでも効果は一緒ですよ?
それに一度に何本も飲むのは逆効果になりますので注意が必要です!」
「それなら大丈夫です、受付嬢4人で『胃腸薬』が効果があるか知る為ですので・・・
これで効果があるなら別途ギルドに納品をお願いしますね!」
「はい、わかりました。『胃腸薬』の効果は明日以降という事で・・・
まずは『風邪薬』に必要な薬草を教えてもらえますか?
出来れば薬草の種類と形状と分布地域を教えてもらいたいんですが・・・」
受付嬢はカウンターテーブルの引き出しから1枚の依頼用紙を取り出し
ジンの前に広げながら説明を始めるのだった。
依頼用紙には3種類の薬草が書かれてあり丁寧に分布地域も東の森と記載されてあった。
『クラシラス』の東に広がる森林地帯を通称『東の森』と呼ばれており
ギルドランクD以上に森への侵入を許されていた・・・。
当然ジン達は『東の森』へは行ったことも無く・・・。
「なるほど・・・この依頼は無理ですね。」
ジンはテーブルの依頼用紙のランクD以上というところを見つめながら
「僕はランクEなので他の冒険者に声をかけてください、ごめんなさい。」
受付嬢は依頼用紙のランクDと書かれた箇所に斜めに線を引きランクEと訂正しながら
「この依頼はギルドからジンさんへの指名依頼になります。
なお依頼に際して護衛の冒険者が必要な時は事前に教えてください。
ランクD以上のパーティーをジンさんの為にご用意させていただきます。」
受付嬢はニコリと微笑みながらジンの逃げ道を塞いでいくのだった。
ジンは「薬草採取の一環と思えばいいか・・・」と突然の指名依頼を受けることになる。
通常の薬草採取よりも高額で、尚且つ3種類の薬草を採取した本数分報酬額が増額する。
問題は冬期間前という事で『東の森』の獣たちが気がかりなのだが・・・。
「あの『東の森』には出現する獣を知りたいんですが・・・」
「そうですね、『東の森』は草原に獣に灰犬や黒熊に加え、大猪や一角うさぎや一角狼がいますね。」
「灰犬と黒熊と大猪はなんとなくわかるんですが・・・
一角うさぎと一角狼というのは?」
「一角うさぎと一角狼は獣というより魔獣と言われる生き物です。
通常の獣と違い魔法を唱えることが可能です・・・。
何より体内に『魔石』があり非常に危険な魔獣となっております・・・。
ちなみに『魔石』もギルドに納品可能ですのでよろしくお願いします。」
「あの通常ランクEの冒険者は一角うさぎや一角狼に遭遇した場合の生存率は・・・?」
「限りなくゼロですね。遭遇したら角での一刺しで致命傷でしょうか・・・。」
「僕もランクEなんですが・・・大丈夫でしょうか??」
「それについては『野うさぎ亜種』の攻撃を避け倒した実績もあるので
冒険者ギルドとしましてはジンさんのランクアップも視野に考えております。
「あー、うん、ランクアップは無くて大丈夫です。
今の現状に満足してますので・・・面倒な依頼はさっさと終了して
通常の薬草採取に復帰する事だけを考えて頑張ります!」
「それでは明日から『東の森』へ向かわれるんですか?」
「はい、薬草の採取する数も明記されてないので各10本ずつ採取して帰ってきます!」
「いきなりの事で混乱していると思いますが・・・
無理をせずに無事に帰ることだけを考えて薬草採取をお願いします。」
「はい、無理はしませんが・・・さっき話題にあがっら灰犬や黒熊、大猪は美味しいのかな?」
「『東の森』は食材の宝庫と言われるほどの森林地帯です。
その中でも一角うさぎや一角狼は別格の美味しさと言われております。
もしも討伐の際にはギルドへの納品をお願いします。」
美味しいと言われジンの頭の上で昼寝をしていたソラは「ガバッ」と起き出し
肩掛けバック中で丸くなっていたシロも別格の美味しさと聞きバックから顔を出し
『すぐに森へ行こう~』
『もりへにくをたべに~』
「あー、そうだね、美味しい肉があるみたいだね。」
どうやらソラとシロは危険な森という認識よりも
美味しい肉が豊富な森という認識でいるみたいだった。
受付嬢はジンとソラ・シロが騒いでいるのを驚き依頼を断ると考え・・・。
「あの・・・どうかしたんですか?」
「すいません、初めて『東の森』へ行くという事で興奮しているみたいです。」
「え、あの・・・、そうなんですか?
騒いでいたので断られるのかと思ってました・・・。」
「うちの娘達は美味しい物には目がないので
薬草採取よりも討伐を一番に考える可能性も否定できませんが・・・」
「あの出来れば多少は薬草の方もお願いしますね?」
「・・・もちろんですよ。」
ジンが苦笑いしながら答えているとソラとシロは『『にくにくに~』』と歌いだしていた。
次の日からジン達は『東の森』へ探索へ出かけるのだったが
『東の森』は緑マーカーの薬草採取場所が豊富でありながら
赤マーカーの獣や野獣・魔獣が無数に点在しており
慎重に森林地帯への探索をする必要があるのだった。
ソラとシロは数か月経過しても相変わらずジンの頭の上や肩掛けバックの中で寛いでいます。
ジンの調合可能なポーションも増えており調合師として頑張っています。
『ポーション(体力回復)』『毒消し』『虫よけ』『熱さまし』『胃腸薬』の5つ。




