後編
「・・・んあ。もう朝か・・・」
うっすらと目を開く。
自分の部屋だ。
昨日はすぐに眠ってしまった。
「そうだ、今日は事情聴取があるんだっけ・・・」
・・・そういえば、昨日。
・・・まさかな。
「おはよう」
ドアがゆっくりと開いた。
アレクシアが中を伺うようにそう言った。
「ん・・・慎也起きてたのね。どう身体は?」
「だいじょうぶだけど・・・」
「そう、ならよかった。ご飯はできているわ。用意が出来たら来て。それと、今日は一緒に出かけましょう」
「ああ、わかった」
「それじゃあ」
・・・一緒にかあ。
デートみたいだな・・・なんて。
そんなことはないとは思うが・・・少なからず期待しているんだよな・・・俺は。
あほだな・・・。
「さてと、用意をするか・・・制服でいいかな?」
クローゼットを開ける。
中にはワイシャツと制服の上下と上着の類が入っている。
「・・・やっぱり、私服でいいかな?。いや、防弾服を着るわけだし・・・制服か」
中から防弾服を取り出す。
昨日は眠かったのに整理がしてあるとは・・・。
なんでだろうな。
緊張していたせいだろうか?。
用意ができたのでテーブルへ向かう。
「おはよう紗奈、アレクシア」
「おはよう」
「寝坊だよ、バカ兄貴」
「日曜日だろ今日は・・・」
「うるさい、昨日遅く帰ってきたくせに・・・」
紗奈はご機嫌ななめだ・・・。
まあ、無理もない。
何か甘いものでもあげてご機嫌を取ろう。
太宰治だって小説に書いてるじゃないか。
女性には甘いものって。
それを、ホワイトデーでやったらシルヴィアには効かなかったけどな・・・。
・・・かき氷練乳がけはナンセンスだったな。
「悪かったって・・・忙しかったんだよ」
「言い訳とは情けない。それでも、立川家の長男ですか?」
「長男だ」
「開き直んなくそ兄貴」
紗奈の蹴りがすねにクリティカルヒットする。
前よりも痛い・・・大きくなっているのだろう。
まだ、小さいけど。
あと、アレクシアがさっきからこっちをあたたかい目で見ているんですが・・・。
はあ、今日も災難だ。
ニュースを見ようと思ったが、チャンネルの支配権は紗奈が握っているので見れなかった。
・・・・・。
・・・・・。
「どうぞ」
「・・・ありがとうございます」
朝食を食べたあと、俺とアレクシアは警察署へ向かった。
事情聴取なので部屋に通されると思ったのだが会議室だった。
「君たちは本当に犯人を見ていないんだね」
「見ていません」
「不審な人物は?」
「見ていません」
「ふむ・・・」
「・・・・・」
「君たちを決して疑っているわけではない。しかし、情報が必要なんだわかるだろう?」
「はい・・・」
「防衛省を攻撃した犯人かもしれないんだ」
「防衛省が・・・」
「そうだ、見ていないのかね?」
「妹がそういうのが嫌いなので・・・」
「・・・そうか」
「あの・・・」
「なんだねお嬢さん?」
「犯人は単独犯なのですか?」
「今のところそう見ている」
「しかし・・・」
「わかっている・・・余りにも距離が離れている。第一そんな重武装をしていたらすぐに見つけたられるからね。しかし、厄介だよこれは・・・。犯人が火器を使っていない。それどころか投げたって話もあるから大変だよ」
「そうですか・・・」
「さて話は終わりだ。次に、特科の奴らが来るがまあ心配することはない」
「わかりました」
「ああ、それじゃあ」
さっきの刑事と入れ違いになるようにまた刑事がやって来た。
これで、三人目だ。
何度も同じことを聞く。
証言が矛盾が生じないかを見ているのだろう。
「あなた達が、現場にいた統合戦技生ね。高月夕陽よ。よろしく」
不思議なことに女性だった。
赤いフレームの眼鏡をかけている。
「よろしくお願いします」
「よろしく」
「ええ、よろしく。早速ですが、質問です。この事件にあなたはシルバーバレットが関係していると思いますか?」
いきなり彼女はそう言った。
急なことなので驚いてしまう。
「関係していないと思います」
「私は、関係しと思う」
「そう・・・。慎也くんは何でそう思うの?」
「この前もシルバーバレットが犯人じゃなかったから」
「そうね、あなたは一度巻き込まれているからか・・・。そして、犯人であった獅子塚ハヤトもシルバーバレットによって殺された。今度もシルバーバレットを真似た犯行ならすぐに解決するかもしれないわね。私たちとしては屈辱的だけど・・・アレクシアさんは?」
「私は、犯行に使われた玉が純銀製の玉だったらという話です」
「そう、でも残念。鉄製だったわ」
「・・・・・」
「あの・・・」
「何かしら?」
「特科ってなんですか?」
「えっ、あれ知らないのか・・・」
「夕陽さん、慎也は昨日が着任初日だったもので・・・」
「あら、それは災難ね。いいわ教えてあげます。これからも付き合いがあるかもしれないからね」
「それは、避けたいです」
「ふふ、私もよ」
夕陽さんは笑った。
上品に。
「ええとでは、特科とは。光の姫事件のあとに組織されたもので、対能力者用の特殊捜査班です。今は、シルバーバレットを追っています。しかし、光の姫がいつ現れるかはわかりません。私たちは、善良な市民の生活を守るため日夜捜査を行っています」
・・・っといかにもホームページで書かれていそうな大義名分を堂々と口にする夕陽さんに笑ってしまいそうになる。
「能力者?」
「はい、決して中二病ではありません。そして、都市伝説でもありません。世界融合以後、最前線ではその能力を持つ人が現れたと聞きます。そして、その世界の人たちも前までは魔法が使えたが今は、使えないようにしたとも言っています。現にそこではこちらと同じように争いが繰り広げられいたこともわかりました。技術は私たちよりも遅れて・・・いっ、今のは無しです聞かなかったことにしてください」
「いえ、大陸の話は聞きますよ。今日本の人たちはみんな私たちと・・・」
「慎也、それは間違いよ。彼らは今も戦場にいるわ。アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、そして日本の兵として」
「何言ってるんだアレクシア?そんなことあるわけ・・・」
「はい、今でもそうなっています」
「えっ・・・夕陽さん?」
「はい、今も彼らは私たちの国旗抱え戦っています。もう何年も前からずっとそうです。身体に薬品を打たれて改造されたあとも、それから解放されたあとも・・・」
「噓だ・・・そんなの・・・」
「本当のことよ、彼らはあそこにいるわ。日本にいるのはほんの一部よ」
「・・・・・」
「はあ、言ってしまったものは仕方ありませんね。一応機密ですので決して口外しないように」
「・・・わかりました」
「はい、大丈夫です」
「ええ、では。今から20年前私たちの世界とは違うもう一つの世界がこちらに転移しました。日本に来た人たちからの情報ですが、粒子の衝突実験で新しい粒子が誕生したそうです。その粒子はまあ電池みたいな役割でした。その粒子は研究施設を抜け増加し世界中に拡散したそうです。そして、人々は魔法みたいなものを手に入れたそうです。それからは地獄、特に日本がひどかったそうです。その粒子を消滅させる機械が届くのが一番後だった。それにより人々とは魔法を失いました。しかし、まだ魔法が使える人が残存していたので最後は自衛隊と警察が殺害したそうです。犯罪者でしたが・・・。しかし、その間に魔法を使って過去を変えようとした人達もいました。その結果時空が歪みこの世界と融合したそうです。また、彼らもその時元いた世界に戻ってきました。おそらくは並行世界として存在していると私たち特科はみています。その後、アメリカが大陸、いえもう一つの日本に侵攻し彼らに薬物を投与するなどして戦場に送り込みました。ロシアも同じく戦場に投入しました。それが、シベリア戦争、ヨーロッパ焦土戦争です。その後彼らは私たちと共に暮らしているか、今も戦場にいるかです・・・」
「・・・すみません何を言っているのかわかりません」
「そうですね。私も何が起きているのかはわかりません」
・・・おいこら。
「あの夕陽さん?」
「なんでしょうかアレクシアさん?」
「今回の事件は・・・」
「ええ、あの世界の人たち・・・もしくはあそこに行った日本軍人の一人でしょう」
「・・・やはり」
「はい、現にいま立川の陸軍基地から消息を絶っている兵士が一人、そして彼の武器も消えていると連絡がきました。彼が彼の地で能力を得たのならおそらく彼がこの事件の犯人でしょう・・・」
「・・・噓だろ。まさか軍人が?」
「はい、おそらくは。そして、お二人には箝口令が出されました。くれぐれもお気を付けください」
「・・・そんな」
「ええ、今日は事情聴取をするはずでしたが・・・」
「・・・わかりました。しかし、外出は?」
「許可します」
「ありがとうございます」
「いえ、あなた達はもう十分働きました。くれぐれもお気を付けて」
・・・・・。
・・・・・。
「いやあ、こいつは派手にやられたものだな」
「これが・・・軍用手榴弾の威力ですか」
部屋は黒く染まっていた。
火はすでに消されている。
壁の一部が溶けているどれほどのものか、ぞっとする。
「それで・・・遺体は何処へ?」
「すでに運ばれたと聞きました。これより検死解剖されると思われます」
「死因がわかっているのにな・・・遺族への説明か・・・自分が可愛いか」
「そうですね、あと・・・」
「なんだ?」
「捜査を特科に行わせるようにと・・・」
「我々の手に負えないと・・・な」
「はい、おそらくは・・・」
「この事件はどうなる?」
「電気系統による火災とされるでしょう・・・許しがたい」
「いつまで隠し通せるのだろうな・・・」
「もう・・・隠せはしないでしょう。あとこの事件には陸軍が・・・」
「そういうことか・・・」
「自軍の兵が国民を殺したとなると反対派が騒ぎますよ」
「だから・・・事故にしろと」
「ええ、軍から圧力がかけらていますから私たちはここで終わりです」
「・・・これからも増えるか?」
「増えると考えた方が自然です」
「警察は死したか・・・」
「死にませんよ。守るべき市民がいる限り」
「そうだな、もう行こうか」
「ええ、ここに居場所はありません」
「なあ?」
「なんですか?」
「犯人が使った手榴弾って・・・」
「二十七式火焔手榴弾です」
「即発式か?」
「いえ、それでは防弾ガラスに当たった時点で爆発してますよ」
「それじゃあ?」
「ええ、時限式ですよ。あなたも使っていたでしょう?」
「前の話だ。7秒か?」
「10秒です」
「フルカウント・・・か。どこから投げたんだろうな犯人は?」
「・・・・・」
・・・・・。
・・・・・。
「はあ、やっと終わった・・・」
「そうね、日本の事情聴取は長いのね」
「ドイツは短いの?」
「統合戦技生はだからよ。一時間で終わるわ」
「そっか」
空には太陽が輝いている。
眩しい。
白い雲が風になびいている。
「ねえ、慎也?」
「なに?アレクシア?」
「これから出かけない?」
「いいけど・・・どこへ?」
「水族館がいい」
「・・・水族館か・・・近くはないけど」
「ええ、行きましょう」
「わかった」
・・・水族館か久しぶりだな。
いつ以来だろう。
覚えてないな・・・。
あっ、そういえば・・・。
「アレクシア、紗奈に電話するわ」
「ええ、わかったわ」
S N S で紗奈に連絡する。
携帯をいじっていることが多いのでこっちで連絡をしている。
案の定すぐに紗奈はコールに答えた。
「紗奈?」
「ん?何、お兄ちゃん?」
「ああ、紗奈。ちょっと出かけるんだけど」
「どこへ?」
「アレクシアさんと水族館へ」
「そう、行ってらっしゃい」
意外なことに紗奈はすぐにオッケーを出してくれた。
通話を切るときに笑い声が聞こえた気がする。
どうせデートだと思ってニヤニヤしているんだろう。
まあ、いいか。
「・・・もういいの?」
「ああ、行っていいってよ。それじゃあ、行こう」
駅に向かって歩く。
同じ年の女性と一緒に歩く。
ふと、横を見るとアレクシアの綺麗な顔が見える。
なぜか汗をかく・・・。
不覚にもドキッとしてしまう。
だって仕方ないだろう。
こんなにも可愛い子が隣にいるのだから・・・。
アレクシアみたいな人が彼女だったらなあって、叶いもしないものを思ってしまう。
・・・・・。
・・・・・。
「・・・着いたー。意外と早かったな」
「そうね、ショーには間に合いそうよ」
「ああ、早く行こうか」
「ええっ・・・」
今のところ異常はなさそうね。
よかった・・・。
これで少しは楽になっていてくれたらいいのだが・・・。
まあ、私も楽しみなのだがな。
駅から少し歩くとそこには水族館がある。
大規模な改装工事を終えて施設も一新、客足は今も多い。
昔は夏になると良く行ったものだ。
そして、今日は日曜日たくさんの人がいる。
もちろん警備の人もたくさんいる。
こういうソフトターゲットは今も昔も事件が起こりやすい。
少しの爆弾でもたくさんの人を巻き込めるし、刺し逃げもしやすい。
そのため、なるべく人ごみを避けるようにしろと教わった。
まあ、さすがにこの時間だと入り口には人がいない。
お腹がすいたから先にご飯を食べてから水族館に入ろうとアレクシアにいい、近くの店でご飯を食べた。
マルゲリータピザは美味しかった。
アレクシアはランチメニューのカルボナーラを頼んだ。
店を出てまっすぐに水族館へ。
券売機で買うことになったがペアチケットの方が安いのでアレクシアがそっちを買った。
そのおかげで、入り口のお姉さんがニヤニヤしていた。
・・・カップルと思われたのだろうか。
そんな関係じゃないんだけどな。
それと、ペアチケットの方が入場料が安いのってどうかとは思うんだけどね・・・。
それも男女一組・・・。
夏はこれ見よがしとばかりに女子のグループがここに来る男子を待ち伏せしたりしているとかしないとか。
しかも、料金は男性持ち。
どうなんだろうな・・・カモにされているのか。
それでも、気がつかないんだろうな・・・。
男っていうやつは・・・。
単純なんだよな・・・。
・・・・・。
・・・・・。
中は海をイメージした青い色だ。
進むたびに水槽の生き物も変わっていく。
クラゲは幻想的だった。
様々な色のライトに照らされてゆらゆらと泳ぐクラゲは綺麗だったし、おかしくもある。
そのあとも進んでいき大水槽の前まで来た。
巨大なジンベエザメがゆうゆうと水槽を行ったり来たり。
エイも漂っていた。
いいよな、水族館って。
落ち着くし。
母なる海か・・・。
ちょうどショーが始まる時間だったので屋外プールへと移動する。
飼育員に合わせてイルカやシャチが跳ぶ。
そのたびに水槽から水がこぼれ、前にいた観客にもかかる。
前にいた男性は全身びしょ濡れだ。
そして、それがスクリーンに出される。
観客の笑いがこぼれる。
アレクシアも楽しそうに笑っていた。
自然と俺も笑顔になれた。
「ねえ、慎也?」
「なに?アレクシア?」
「「私たちがやることはすべて正しいこと?」」
「えっ・・・」
水族館を出たあと帰ろうと思った俺はアレクシアに行きたい場所があると言われたのでそこに向かった。
そこは海辺で鐘が一つあるだけの広場だった。
そして、そこに着いた途端にアレクシアはそう言った。
「私たちは統合戦技生。私たちが掲げる正義は国のもので個人のものではない」
「それはわかっている・・・」
「いいえ、わかってないわ」
「そんなことは・・・」
「私たちはこれから自分と同じ国の人も裁かなければならなくなる。」
「それは覚悟しているって・・・」
「そこからよ、それがたとえ正義(正しいこと)であっても、私たちの正義(間違っていること)を貫き通さなければならない」
アレクシアはそのまま続けた。
「アメリカは経済の悪化から世界から手を引いて行った、そして彼らは壁を造った。理由は国を守るため、犯罪者の流入を防ぐため、雇用を守るためよ。知っているでしょ?」
「ああ、知っているよ」
「そのことは確かに正義よ、しかし、正しくはなかった。他の国の人たちはアメリカに壁を取り払えと言ったわ。けど、そうじゃなかった。彼らの本音は「難民を受け入れろ、金をまわせ、お前の国がどうなろうと構わない俺らの国に押し付けるな!。」だったのかもしれないわ。やっていることは正しいはず、現に不法移民が多かった。彼らを強制帰国させても反対される。「「私の国に犯罪者はいない。預かってろ。これはあんたらの問題だ、関係ない!。」」とか・・・そういうものばっかよ。結局のところ、人種差別だとそんなこと違法だってことじゃなくて迷惑だったのよ、自分の国にアメリカからつっぱなされた人がやって来るのが・・・。そして、アメリカは国際社会から孤立して行った。皮肉なことに日本はそれで独立した国としての威厳を回復できた。日本は精神的にも物理的にもアメリカの支配から解放された。それが、今よ。
アメリカは日本から撤退したあとモンゴルと共にロシアから領土を奪った、ロシアの南下と中国との同盟関係を深くしないようにするためにね。中国、北朝鮮はアメリカがいなくなったあと朝鮮へ侵攻、日本はただそれを見守っていた。韓国からの難民を受け入れる際条約を結んで竹島を日本の領土にした、韓国旗を日本の旗に変えた。受け入れた韓国人はアジア連合との共同反抗作戦の際朝鮮へ送り返した。そして、旅順まで占領。そして、そのまま香港にアジア連合は移動、香港の独立に成功した・・・。
アメリカが自国の保護に集中した結果世界では激動が生じたわ。
アジアだけでもこんなにたくさんの事が起った。
それが、アメリカにとって正しいことであった。
しかし、傍から見れば正しいことではなかった。
「「私たちは、正義の味方でも、英雄でもない」」
「「英雄とは民主のものであって犯罪者」」
「「私たちは、その英雄を裁く者」」
そう・・・私たちは法に従って動くだけ、それが間違った法でもね・・・」
・・・・・。
・・・・・。
「なあ・・・」
「なんだよ・・・」
「補給部隊はまだか・・・」
「もうすぐじゃないのか・・・」
「もう兵糧も持たないぞ・・・長すぎる」
「時間がかかるんだろうよ、なんせこの揚陸艦(陣馬)だけじゃないからな」
「弾はあるんだ・・・あとは・・・」
「焦るなよ、なんもいいことないぜ」
「口を慎め!」
「わかりましたよ隊長」
「たくっ・・・司令部は何をしている補給もろくに出せないのか」
「あらら、隊長も俺らと同じかあ」
「それにしてもなんだよ203って、訓練兵でも送り込むって言うのか」
「知らねえよ、待ってればいいんだろ」
「お前ら、いい加減に・・・」
「わかりましたよ、隊長」
「補給は来るんですよね」
「信じるしかないだろう、どうせくそまずい飯だろうよ」
「台湾製ですか?。」
「違うな、ベトナム製だろうよ。」
「あ~、兵舎に戻りて~。陸に上がりてえ・・・」
「嫌でも、陸につくぞ」
「おっと、達磨が待ち伏せている陸は知らないね。護衛の戦闘機はありますよね?」
「・・・そんなものはない」
「・・・そんな」
「あるのは海軍の支援だけだ」
「役に立つわけないだろ、昔の戦艦じゃないし対地攻撃なんて・・・」
「・・・・・」
「・・・わかりました」
暗い機内に一層闇が満ちた。
突撃命令はまだない。
しかし、ここにいてはいつかは狙われるだろう・・・。
ここでは死ねない。
・・・・・。
・・・・・。
「艦長用意が出来ました」
「了解、面舵」
「面舵」
「司令部に通達、我目標捉え、砲撃許可を待つ」
「了解、司令部より御霊は内地へ帰った」
「磁気投射砲すべて問題なし、機関安定、電力供給・・・問題ありません」
「全システム問題なし(オールグリーン)」
「砲撃開始」
「第一射装填、目標地点入力、G P S - J 、オンライン。誤差修正・・・発射」
目標に艦首を向け、砲を放つ。
長い砲身は40メートルに及ぶ。
そして、その砲にあった巨大な音を放ち弾は飛んで行った。
「次弾装填・・・発射」
再び音が鳴り響く、近くにいたら鼓膜が破れるだろう・・・。
聞いたことがある音だ。
敵の支援砲撃の音にそっくりだ。
「・・・了解。総員、立て!」
隊長が怒鳴り声をあげる。
耳が痛い。
「・・・ついに・・・来ましたか・・・」
「隊長・・・あの音は?」
「203だ」
「・・・203?」
「大砲だ。ただし、250キロメートルは飛ぶ」
「なんですか・・・それは?」
「兵器だよ」
「ははっ、そりゃあ笑えませんよ。なんですか、あんたのところは戦艦を造っていたんですか?」
「そうだ・・・あと戦艦ではない陸上砲艦だとよ」
「203か・・・」
「203・・・それって・・・ははっ、笑えるねえ過去の栄光とでも?」
「そうかもな、あいつらにはちょうどいいかもしれない」
「なんせ悪魔ですからね。達磨には」
「さて、仕事だ」
「この支援攻撃は?」
「あと45分だ、それで無くなるそうだよ」
「結局のところ、俺らの仕事ですか・・・。ああ~、早く人権が欲しい」
「まったく、やってらんねえわ」
「おい、大丈夫か?元気ねえな?」
「・・・大丈夫だ」
「これだから新兵は・・・。行くぞ」
ヘリが母艦から離れる、これからいくは地獄・・・。
まだ死ねない・・・死にたくない・・・。
・・・・・。
・・・・・。
「・・・夢か。・・・たくっ、嫌な夢だな」
「・・・早くしないと」
彼は、持ってきた荷物を見た。
かっぱらってきた手榴弾も、自分のライフルもある。
怖いことはない。
あとは、殺るだけだ。
・・・・・。
・・・・・。
「・・・英雄を裁くものか」
「ええ、そうよ。法の番人かしら?」
「そうだな・・・いいものではないんだろう・・・」
「ええ、そうよ。理解が早くて助かるは・・・」
・・・アレクシアが言っていることは正しい。
だとしても、納得できないものもある。
民衆が犯罪者を英雄に仕立てる・・・。
あながち間違っているわけではない。
すべての人が法に従っていたらもうその世界はお終いだろう。
誰かしら反抗をする。
それに人々が乗っかって大きな波紋を広げていく。
それが、反逆者、復讐者であってもだ。
その人たちに、惹かれる、あるいはあこがれるのもあるのかもしれない。
けど、アレクシアの言葉は・・・。
まるで・・・。
「「それじゃあ、俺らが守っている人達はみんな犯罪者なのか?」」
「「ええ、そうかもしれないわね」」
アレクシアは悩むこともなくただその言葉を口にした。
俺は、アレクシアがわからなくなった。
彼女は犯罪が嫌いなのか、人が嫌いなのか・・・。
もしくはその両方か・・・。
冷たいな・・・それは。
「・・・だとしてもよ」
アレクシアは続けた。
「私たちは、間違ったことをしてはいけない。人殺しだけじゃない。噓もよ・・・」
「・・・アレクシア」
アレクシアの肌が月の光に照らされる。
雲間からのぞいたその光はアレクシアだけを照らしていた。
彼女の持つ白磁のような白い肌に、月光は妖艶なものを与えていた。
おぼろげで、霞がかっているようだ。
ただ、悲しかった。
「ねえ、慎也?」
「なんだ?」
「あの鐘を鳴らさない?」
「あれって・・・結婚式ようのじゃないのか?」
アレクシアはこの広場にある鐘を指さしていた。
電灯で照らされている。
手入れはされているようだ。
薄暗いこの広場にぽつんと置かれている。
「そうよ。何?一緒にならしたい人でもいるの?」
「なっ、何を?」
「どうせシルヴィアか玲奈でしょ。別に他意はないから!。記念よ、き、ね、ん!。何期待しているのよ?」
「いや。俺は・・・」
「・・・ったく。何よ声掛け一つできないの?」
「こういう時は・・・そんなことない、彼女たちには報告が遅れるだけさ♪。とか、でしょ!」
「いや・・・アレクシアの方こそ期待して・・・」
「うっ、うるさい!。ほら、早く!」
「はあ~・・・」
ため息をつきながらも俺の脚はそこへ向かう。
一人で鐘を鳴らす紐を引っ張ろうとするとアレクシアが一緒にと言った。
それで、結局俺は右手で、アレクシアは左手で重なるようにして紐を引っ張った。
本当は、逆のような気もするが今日はこれでいいだろう。
俺もいつかは・・・。
そう、思ったのだが・・・。
・・・相手いなかったわ。
「「はあ~、こうやって夢見ているうちが一番幸せなのかもしれないな」」
そう、心の中で思った。
・・・・・。
・・・・・。
「はあ~あ・・・。もう朝か」
目覚まし時計のアラームを止めるため思いっきりボタンを叩いた。
前はスマホだったのだが・・・。
アラームを止める時に思いっきり叩いてしまって、床に落ちて・・・。
画面にひびが入ったという悪夢がある・・・。
指でスライドするのだったのだが・・・。
「「うっるせえ!」」
と思って・・・やってしまった・・・。
なので、スマホを画面が割れにくいものにして、目覚まし時計を買った。
高くついたよ、ホント・・・。
そうこうしているうちに時間は過ぎていく・・・。
急いで着替えてリビングへ・・・。
「おはよう、紗奈、アレクシア」
「おはよう、慎也」
「おはよう、ばか兄貴。ご飯はできているよ」
「ありがとう、紗奈」
鮭とご飯と味噌汁か・・・。
まあ、いいだろう。
「いただきます・・・アレクシアはもう食べたの?」
「ええ、いただいたわ。それじゃあ、先に行くわね」
「・・・早くないか?」
「あなたは遅刻ギリギリに学校に着くつもりなんでしょう?」
「そうだけど・・・」
「私は、日本に来たのが観光が目的だったとは思われたくないのよ」
「あっ、そういうことか・・・」
・・・忘れていたな。
アレクシアはドイツから来た統合戦技生だったってことを。
確かに日本に来て、登校2日目から遅刻はまずいってことか。
俺も最初のうちは、ちゃんとしていたんだけどな・・・。
一週間くらいで、まあいっかってなった。
颯は3日目からだったから、比べると遅い。
まあ・・・基準がひどいだけだが・・・。
そのため、シルヴィアから煙たがれている。
怒るに怒れないからな・・・。
「あと・・・」
「ん?なんだ?アレクシア?」
「昨日、シルヴィアと颯が統合戦技生に着任したわ。おそらく、彼女はすごくはりきっているから。それじゃあ、お先に♪」
・・・・・。
それって・・・。
「「要約」」
「「いつも通りの時間に行くとものすごく怒られますよ」」
「へえ~、シルヴィアおねえちゃんも統合戦技生になったんだ。良かったねお兄ちゃん♪」
紗奈・・・。
いいことじゃないんだ・・・。
・・・しんどいわあ~。
「「学校の前で、ライフルかサブマシンガンを持つ、風紀委員って何だろうな・・・」」
しかも・・・。
「「これから仲間ですよ!」」
・・・ああ、しんどいな。
・・・・・。
・・・・・。
「なあ、譲二?」
「なんだよ?」
「板井のやつを見たか?」
「いや、見てねえけど・・・どうかしたのか?」
「あいつ、いつも二日前ぐらいになると一度戻ってくるじゃないか」
「そうだな。ついに、あいつも女遊びに走るようになったか。まあ、いいんじゃねえの?。どうせまた女とは無縁のところだしよう」
「それが、あいつの武器も見当たらないんだよな」
「異動じゃあねえの?。まだ、任期終わってねえし」
「そうだろうな・・・」
「だいたい俺らとあいつは違うんだからよ。年じゃねえの?」
「お前はあいつが新兵の頃からその口調だなあ」
「よせよ、お前がじじくさくなっただけだ」
「はあ、年をとれないのもつらいもだな」
「そうだな、娘が俺と同じくらいになりそうだったしなあ。」
「まあ、予想より短くなって良かったんじゃねえの?。これで、やっと始められるわけだしな」
「はあ・・・結局、歳をとるのか・・・。歓迎できねえよ。まあ、相手が店の嬢ちゃんって言うのも虚しいだけだしな・・・」
「俺らはまだましな方か・・・若いやつらは大変だったんじゃねえの?」
「学生にはなれなかっただろうな。いくらなんでも不自然すぎる」
「結局・・・俺らには戦場しかなかったわけか」
「なつかしいな・・・」
「ああ、力と金でなんとかできた。しかし・・・。はあ、俺も老いたかなあ・・・」
「身体はともかく、心は老いるか・・・。それでも、ここまで生きてきたか。この地獄から・・・」
「地獄はこれからだ・・・金はあるが持ち帰れるかだ・・・」
「ははっ、なんなんだろうな俺たちは?」
「バケモノだよ。前まで生きていなかった」
「最後の奉公と行きますか・・・」
「そうだな・・・ここに長く居すぎた」
「やっとか・・・」
「そうだな・・・」
他の生き方は無かったのだろうか・・・・。
そう嘆くようになったのはいつだろう?。
遠くの昔にそれはついえていた・・・。
・・・・・。
・・・・・。
「「どうして俺はここにいるのだろう?」」
「「さんざん人を殺してきたのに・・・」」
「「そして・・・次は・・・。」」
「「なんなんだろうな・・・俺は?」」
「「成長を見守って、一緒に笑って・・・」」
・・・・・。
・・・次は、警官か。
まったく人使いが荒いな。
もうすこしってところで・・・。
けど、戦場じゃないってところがいいだけか・・・。
さすがにもう飽きた。
つまらないし、本気になれない。
「「・・・魔法が・・・使ったらまづいよなあ・・・」」
とはいえ、何度も使ってきた。
そして、それを使って守ってきた。
正確には使ってもばれないのだが・・・不自然なこととされる。
これまでも、何回も使った。
殺しにも・・・。
「「・・・・・」」
「「これで・・・最後だよなあ・・・」」
男はそう思った・・・。
しかし、彼が生きていく限り受難は続くだろう・・・それでも彼は歩く続けるの。
彼が望んだ「「自分だけしか人がいない世界」」にはもういけない・・・。
天寿を全うする・・・「「死」」を待つだけである。
自分で「「終われない」」のは、心の弱さだろう・・・。
創りだすことはできた。
帰れないだけだ・・・。
・・・・・。
・・・・・。
「ぜえ~、はあ~・・・。まったく、なんでこんなに急がなきゃならいのか・・・」
・・・。
アレクシアやつ・・・。
まったく・・・。
月曜日の学校ほど憂鬱なものはないだろう・・・。
これからまた一週間が始まるだけだ・・・。
「「やったぜ、学校だ!ひゃっほーい」」
・・・なんていうやつはそうはいないだろう。
俺はその反対の・・・。
「「学校か・・・つらいわ~。金払っているんだから単位くらい出してくれてもいいのに・・・」」
っというのが感想だ・・・。
実際、家に居てもすることがないし、ゲームも退屈だしなあ。
目が疲れるよ・・・誰がヘッドギアを付けたままゲームしようぜって思ったのやら・・・。
首が痛くてしょうがないのだが・・・。
やっぱり新しいの買おうかな・・・。
なんて思っていると。
「あなた学校では、そういうアクセサリーは禁止よ」
例のあのお方がいた。
いつもより張り切っているのは目に見えてわかる。
「そうは言うけどさあ・・・お守りだよ」
「そうなのよねえ・・・私だって基準がよくわからないもの・・・」
「はあ~・・・あんたも大変よねえ。棒線2本が垂直に交わったのもだめなんでしょう・・・」
どうやらアクセサリーについて指導?をしているようだ。
「私のところはひどいものよ・・・卍もダメになったし・・・」
「たしか、家がお寺さんだったね」
「そうなのよ・・・もとはインドのものなのにね・・・。本当にどうかしていると思うよ。」
「うん、そうだよね。911も1989もだめだって・・・。神経質過ぎると思うよ。はあ~・・・こんなことで指導はしたくないんだけどね・・・。とりあえず今日は注意ね。今日からは隠しておいてね。持ってきてもいいから」
「うん、それじゃあ」
そういうと女子生徒は校舎へと向かった。
人が話しているところを見るのは褒められたことではないが・・・。
反射的に隠れてしまうからしたがない・・・。
何やっているんだ・・・俺。
別にやましいことなんて一つもないから堂々と横を通り過ぎればいいものを・・・。
「あれ、慎也?。なにしてんの?」
・・・。
見つかりますよねそりゃあ・・・。
ここは何事もなかったかのように・・・。
「あっ、あっ、シルヴィアさん、統合戦技生になったんだよね?」
コミュ障か!。
しっかりしてくれよ・・・なんで疑問系なんだ。
明らかに不審がられてるし・・・。
「慎也?。どうしたの?」
「いやあ、なんでもないよ・・・」
・・・今は。
「おはよう、慎也にシルヴィア」
「おはよう、颯」
・・・今のって?。
「それで・・・何なの?」
「統合戦技生になったの?」
「ええ、そうよ。だからここにサブマシンガンがあるのよ」
シルヴィアの腰のあたりを見ると、U Z Iがあった。
おそらく日本製のコピー製品。
それと、ガバメントがある。
俺と同じく貰ったグロックを使わないようだ。
「へえ~、そうなんだ」
「そうね、まさかもう使うことになるなんて・・・」
「シルヴィア・・・何を言って」
「遅刻よ、慎也」
キーンコーンカーンコーン
ああ、鐘がなっているよ・・・。
そうだ・・・。
颯のあだ名が「「刻死鳥」」だったな。
なんと、彼に会うとその人が100%遅刻するっていう・・・。
本当だったわ・・・。
「さあて、それじゃお仕置きね♪」
「何のことか・・・わかりませんねえ・・・」
「ふふ・・・」
ああ、サブマシンガンですか・・・。
本当にありがとうございます。
今日はいつもの拳銃弾じゃないんだ。
ははっ・・・涙が出てくる。
カタカタカタカタ
また、避ける動作に入る。
・・・正確には慌てふためいたふりをすれば「「勝手に」」弾が外れる。
「・・・ふう、これで完全に遅刻ね」
「・・・ぜえ、はあ。職権乱用だ・・・」
はあ、はあ・・・。
アレクシアのやつわざと外していやがったな・・・。
それと、やっとこの変な音の正体がわかったわけか・・・。
消音器 (サイレンサー)をつけての射撃か。
・・・遅刻者が少ない理由・・・上級生の欠席率の高さ・・・毎朝聞こえる変な音。
まさか・・・風紀委員がサブマシンガン、ライフルで遅刻者にお仕置きもとい制裁・・・ですか。
「シルヴィアちゃんおつかれ~。私は、もう上がるよお~」
「吹田先輩お疲れ様です。本当に大変ですねえこのお仕事」
「あっそっかぁ、今日が初仕事だっけえ?。そのうち楽しくなってくるよ~。けど、殺さないようにねえ~」
「わかりました」
「くう~、笑顔がまぶしいぜ。私も若かったらなあ~。いるのは毎日遅刻してくる宮崎だけだし・・・」
「えっと、たしか先輩の・・・」
「そんなんじゃないから、別にあいつのことが気になるわけじゃないし、遅刻したってかまわないし、学校を休んでもさみしないし」
・・・・・。
先輩・・・ポンコツすぎやしませんか?。
俺も人のことは言えないが・・・。
シルヴィアがおもちゃをもらった子供みたいに嬉しくなっているのがわかる。
・・・子どもはそんな邪悪な笑みを浮かべないが・・・。
「へえ~、そうなんですか~大変ですねえ~」
見事なポーカーフェイス・・・。
目が笑ってないぞ~。
っと遠目から見ていたが・・・。
「その子ってもしかしてシルヴィアのこれ?」
「ほへっ!!」
先輩からの思わぬカウンターがきた。
ものすごく同様している。
「わあ、ほわあ、ぽああ・・・」
謎の驚きの声をあげながら顔を真っ赤にするシルヴィアさん。
右へ左にまた右に・・・。
しばらくして・・・。
「えっと、先輩・・・そんなんじゃ。ただの幼なじみですよ」
「ええ~、本当でありんすかそりゃあ?」
ああ、逆に遊ばれてるわ。
っと心の中で笑っているとそれが顔に表れたのか?。
「慎也のばかあああ!」
カタカタカタ
ガッシ
コック
ガタ
カタカタカタカタ
ああ、神様・・・。
今日もどうかご加護を・・・。
昨日よりも一層のご加護をお願いします。
「「いつ死ぬかわからないや」」
謎の哲学・・・。
そういやさっきから、あの先輩が撃ってくるのだが・・・。
風紀委員ってそんなんだっけな?。
箒で掃除をしているじゃなくて・・・。
「「斉射(箒)で遅刻者(時間を守らなかったクズ)掃除ですか?」」
・・・・・。
・・・・・。
「おはよう・・・」
「おはよう颯。・・・大丈夫か?」
「何が?」
「顔が死にかけてるぞ」
「いや・・・これは・・・そのな・・・」
「まあ、いいや。今日は慎也が遅刻か・・・」
「ああ、さっき見たぞ」
「おっ、刻死鳥の颯が見たから遅刻なのだあ~。」
「「ん?」」
誰かと思えば雫だった。
あいかわらず光のない目をしている。
「なんだ藤堂か・・・」
「なんだとはなんだとは」
「別に・・何でもないけど」
「慎也!」
「・・・おはようセリア」
「はあ・・・おはよう、じゃありませんよ。まったく・・・玲奈さんと鈴音さんの言った通り遅刻ギリギリに来るんですね・・・」
「まったく・・・あなたは・・・」っとセリアは呆れて言った。
「・・・いいだろう。遅刻はしてないし・・・それに学校に早く来てもやることないし・・・」
「あ・り・ま・す。授業の準備とかいろいろ・・・」
「休み時間で大丈夫だ。それくらい」
「ですが・・・」
「大丈夫です」
「・・・私はですね。もっとお話をして仲良くなりたいんです!」
ガタっ
「話は家でもできるし、それに学校だったら俺の他にも話す人はいるだろう。仙谷さんとか・・・」
「そうですけど・・・私はあなたとお話がしたいんです。仲良くなりたいんです」
ガタガタガタガタっ
「あっ、彩音ちゃん大丈夫?」
「ええ、ちょっと寒気がしただけよ」
「えっ、今日はあったかくなる予報なんだけど・・・」
「そうだよねえ~、風邪ひいたのかな~」
「もう、気をつけなきゃだめだよ」
「わかってるって私には神様がついているもの。こいっ、風邪くらい何とかなるわ」
「・・・そうかなあ。まあ、気をつけてね」
いつも通りに進む日常、一見この前と同じように見える。
話し声が絶えず。
課題をやったやってないという何にもない会話だ。
スマホをばれないようにいじるとか、つまらない映画だったとか、食べたものがまづかったとか。
そういう話だ。
本当に何もないはずだったのだが・・・。
カタカタカタカタ
「ん?。何の音だ?」
「サブマシンガンかな?」
「なんでそんなものが?」
「・・・あいつか」
窓際に行き様子を見ると・・・。
「やってまうね」
「やってるな」
「やると思いました」
「・・・まじかよ」
「早くも権利を使っている・・・しかもものすごいことで」
「お兄ちゃんも・・・ああなってたのか。ふふ、楽しみだなあ」
「颯は死すべし・・・神のご加護があらんこと」
それぞれが口々に感想を述べる・・・。
雫・・・お前まだ根に持っているのかよ。
そこには U Z I を手に発砲する昨日統合戦技生とその前の日に着任した統合戦技生がいた。
さっきの音はこの発砲音だったようだ。
サイレンサーをつけてはいるが・・・。
「動くな!」
ガンナーがうるさくはその意味はない。
「起立!」
号令がかかる。
「気をつけて、礼」
「「「「「おはようございます」」」」」
「着席!」
神田先生が教室に入ってきた。
「ええ、早速だが今日から風紀委員が本格的に活動を始めた。従って、遅刻者には制裁が行われる。ちょうど外にいる彼みたいにな。それでは、出席をとる。荒川・・・」
・・・。
それだけですか?。
先生?。
撃たれているのが俺じゃなくて良かったと颯は思った。
「「慎也、ファイト」」
刻死鳥は今日も被害者を増やしたというわけだ。
・・・・・。
・・・・・。
・・・朝から運動はつらい。
あのあと、教室に行き。
そのまま授業を受けた・・・。
「おつかれ、慎也」
「ああ、隼人か・・・おはよう」
「何発喰らった?」
「ゼロだよ・・・」
「おう、いいねえ。その調子で明日も♪」
「・・・やめてくれ」
「おはよう慎也」
・・・・・。
今朝、会いたくなかったやつが来た。
「おはよう、刻死鳥」
「・・・えっ?」
「いや、墓場鳥か」
「なんだよ・・・それ」
「お前のあだ名だよ」
「・・・マジすか?」
「そうだ」
しかし、颯は妙に静かだった。
「はあ、まああながち間違いじゃあないんだけどな」
「どういうこと?」
「ああ、俺の兵科は衛生兵だからな」
「・・・・・」
これはないだろう・・・。
一番なって欲しくない人が衛生兵になった。
軍にいたこともあるので適任だとは思うが・・・。
なんでだ・・・衛生兵ってもっとなんかこう・・・。
「「可愛い」」はずだ。
「本当なのか?」
「ああ、本当だよ」
「嘘じゃないないよなあ?」
「本当だって・・・」
「・・・怖いです」
「まあ、俺もお前らを運びたくはないからなあ。まあ、気をつけろよ」
いや、颯そういうことじゃないんだ。
お前だったら・・・。
「「脚をやられたのか・・・ここで切る。心臓を撃たれたか・・・少し待て血液型が同じだからこれから持っていくわ。」」
・・・敵の身体を切り刻んで、必要な部位をはぎ取って仲間の治療に使う。
死体から何も言わず奪うのは犯罪だが・・・。
「「壊して、治す!」」
・・・嫌だな・・・誰のものかも知らないものを身体に入れられるのは・・・。
颯ならやりかねない・・・。
「どうしたんだ慎也?顔色が悪いが・・・」
「いや・・・大丈夫だ」
「そうか、無理はするなよ。あと汗は拭いておけよ」
「わかったって・・・」
・・・・・。
・・・・・。
「起立!」
「気をつけ!」
「礼!」
「「「「「ありがとうございました」」」」」
・・・今日も一日終わったな。
一時間目から疲れていたので昼寝をする始末だ。
まったく・・・誰のせいでこんなことに・・・。
まあ、遅刻した俺が悪いのかもしれないのだが・・・。
「はあ~」
軽くため息をつく。
ただ座っているだけなのだが授業はつかれる。
明日もそうだろう。
そして、帰ろうと思ったその時・・・。
「・・・どこに行くの慎也?」
アレクシアがいた。
また、荷物を持っている。
「いや・・・帰ろうかと・・・」
「・・・残念ね、今日はお仕事よ」
「なんの?」
「・・・とぼけないで。初仕事よ」
・・・ああ。
そういえば統合戦技生になったんだっけ・・・。
お仕事か・・・。
どうせしょうもないことだろう・・・。
「何をするんだ?」
「・・・・・」
そう聞くとアレクシアは黙った・・・。
それって・・・。
っと俺が思ったとき・・・。
「「「・・・機密事項よ。施設で内容は言われるわ・・・」」」
・・・・・。
どうやら予感が当たったようだ・・・。
しかも・・・やばそうだ。
・・・・・。
・・・・・。
ガチャ
ロッカーからM-4(アサルトライフル)を取り出す。
「・・・・・」
さっきからアレクシアが見ているがなんだろう?。
「アレクシア、どうしたの?」
「いえ、そのライフルってクローン?本家のもの?」
「いや、違うけど・・・」
アレクシアは俺のアサルトライフルが、気になったらしい。
別になんてことのないものなんだけどな。
まあ、値段が安いから選んだだけなのだが・・・。
「・・・どこの会社の?」
「富士銃工製のものだけど・・・」
「あの無許可で造っているところのか・・・」
「そうだけど・・・」
「なんで本家のじゃないの?」
「別にいいだろ・・・」
・・・安いし、メーカー保証有るからって言いたくない。
安心と信頼の日本製
「はあ~、わかってないわねえ・・・そういう、ところから違法銃器が増えるんだってば」
「そんなこと、言われてもなあ・・・」
「私たちは統合戦技生よ、そしてそれは国を代表するものであるから・・・武器も・・・」
「いや・・・日本のは・・・高いし・・・」
「だからって・・・はあ~、もういいわ」
・・・呆れられても困るなあ。
だいたい64式や、89式じゃ無くてもいいじゃないか。
使っているところ訓練施設くらいしかないっていう話だぞ・・・。
あれって、重いし、弾でかいし、何故バイポッド付いているし・・・。
まあ、最近は外しているけどね。
それに今は海外モデルのコピー製品が造られていて、部品を変更するだけで日本人でも使いやすいものになるしな・・・。
企業努力大歓迎。
っとまあ、隼人から受け売りの情報で不満を頭の中で考えていたのだが・・・。
「あのさあ・・・アレクシア?」
「なに?」
「そういえば、昨日・・・」
「何よ?」
「H&K-416使っていたよね」
「・・・・・」
そうなんだよな・・・。
彼女はアメリカのM-4のクローン・・・H&K-416を使っている。
本来、彼女の武器はG-36を使うわけなのだが・・・。
アレクシアが今言ったように・・・。
「ひっ・・・人の揚げ足をとるなああああああああー」
ガチ・・・
カタ・・・
「ちょ、待てっ・・・」
アレクシアはよほどくやしかったのか、はたまた照れ隠しなのかピストルを抜いた・・・。
基本、学校などの公共の場では弾倉を抜いておくのがマナーとはなっているが、そんなことはよほどのことがない限りやらない。
武器は原則オープン・キャリー (むき出しのまま持ち歩くこと)なのだが、ホルスターに入れた場合弾倉がほとんど見えないので、弾を入れっぱなしにしている人が多い。
俺もその一人なのだが、アレクシアは違ったようで・・・。
「こんのおおおお、ばかばかばかあああああー」
ひたすらに連射してくる・・・いくら外だからって・・・。
アレクシアの撃った弾は四方八方に飛び、地面に当たる。
どうやら外しているようだ・・・。
しかし、そんなことはどうでもいい。
傍から見ればあほなことだと思うだろう。
だが、今俺とアレクシアは真剣なのだ。
当てるようになるのは簡単だが・・・上手く狙ったところを外せるようになるのは難しい。
今、アレクシアは俺が動くの予想しているのでこうやって弾は「「外れている」」のである。
そう考えるとアレクシアの腕は相当いいのだろう・・・。
だとすれば、止まった方がいいのだがそうはいかない・・・。
止まったら弾が外れて「「当たる」」ということだ・・・。
弾が切れるまで動くしかない。
最悪だ・・・。
そして、俺はアレクシアの弾倉が空になるまでのたうち回るのだ。
弾が「「外れない」」ように・・・。
本日、二回目のお仕置き(ゴミ掃除)を受けるのだった。
・・・・・。
・・・・・。
「全員そろったか?」
「はい、居ます」
「・・・慎也がすでに死にそうなのだが何故だ?」
「・・・あっ、アレクシアにやられました・・・」
「違います、慎也は私に不当な扱いをしました。なので正当です」
「うむ、慎也が悪い」
「えっ、ちょ・・・それは・・・」
「なんだ、まったく情けないな・・・女性を傷つけてもなお己の潔白を証明しようとするか」
「・・・・・」
・・・話くらい聞いてくれ!。
だいたい、俺が悪くないのに・・・。
いや、たしかに失言だったけどさあ・・・。
心の中でそう思ってはいるが、実際には言えないものだ・・・。
男っていうものは不便なんだよなぁ・・・こういうときは・・・。
女性イコール弱いって言う方程式は万国共通どこでも同じだ。
そのため、男が一方的に悪いと思われるのものだ。
それに関しては、不満は感じるが・・・どうって言うことはない。
だが、今回は・・・そのな・・・アレクシアが撃ってきのが悪いとは思う。
そうだろう、原因はともかく力を振るった方が悪い。
それが今の時代なのだが・・・。
男女平等は遠いな・・・。
アレクシアが弾切れになるまで動き続けたあと、「櫓」までダッシュで走って来た。
とはいえ、どこに行けばわからなかった・・・。
とりあえずエントランスに入った。
カウンターに居たお姉さんにこの部屋を指定されて行ってみると隼人達がいた。
その後に、アレクシアがものすごく機嫌が悪い状態でやってきた。
そうだよ・・・俺のせいだよ。
そして、その後に隼人のお姉さん、神田先生がやって来てミーティング、会議が始まった。
あとこの施設の名称は「「関東特殊公務員地方協力本部国立横田基地」」だそうだ。
名前が長い・・・。
覚えるのが大変そうだ。
なんでわかったかって?。
バッジの裏にそう書いてあった。
「さて、ではそろったのでミーティングを始める、本来であれば全員が一度顔を合わせるものだが、今回は特例のためこの場での顔合わせとする。何か質問は?概要を説明する」
ちっこい部屋の中には見覚えのある人だけだった。
それもそのはず、今ここにいるのは、俺、アレクシア、玲奈、シルヴィア、鈴音、隼人、颯、セリア、雫、彩音、神田先生だけだ。
他にも統合戦技生が今も他の会議室にいるだろう。
「質問よろしいでしょうか?」
セリアが綺麗な声でそう言った。
フランスの統合戦技生であって手順を理解しているのだろうか・・・。
「なんだ、アポリネール?」
「はい、特例と言いましたが何が?」
「まあ、そう焦るな・・・これから説明する」
「わかりました・・・すいません」
「お前らもそれでいいな」
「はい」
「では、本題と行こう」
一瞬部屋の空気が引き締まるのを感じた。
「昨日、防衛省の施設が攻撃を受けた。現在報道機関を抑えてはいるが、時間の問題だろう。」
「「「・・・・・」」」
「しかし、今回の事件はすぐに一般に報道されるはずだが、訳ありでな・・・。犯人が陸軍の兵士だ」
「「「・・!」」」
・・・なっ。
今、なんて?。
「驚くのも無理はないだろう、今陸軍の兵士が戦時と同じ武装で犯行を繰り返しているのだから」
神田先生は、淡々と口にした。
陸軍の兵士が殺し歩いているか・・・。
もう物騒どころじゃない、そんな現実味のない話をされても誰が信じられるのか・・・。
「・・・続けるぞ」
神田先生はそのまま話を続ける・・・。
「現在、特科が事件の解決に向かっている。そして、私たち特殊公務員はその支援にあたるという訳だ。なに死ぬ必要はない、私たちは犯人を見つけて報告すればいい。簡単な仕事だ。」
・・・簡単?。
そんなわけないだろう・・・。
あっちは現役の軍人だ。
「諸君らの初めて任務としては良いものになるだろう・・・。改めて私たちがやるべきことは犯人の捜索、報告だけだ。もし民間人が殺害されたとしても報告を第一にせよ。今回は特例につき、場合によっては犯人の射殺も許可されている。以上だ、何か質問は?」
・・・質問したい事だらけだよ。
こっちは・・・。
「質問です」
「なんだヴュルツナー?」
沈黙のあとアレクシアが質問をした。
「特科が動いているということは犯人は能力者ということですか?」
「・・・そうだ」
部屋の中が一瞬で騒がしくなる・・・。
「犯人はどういった能力ですか?」
「わからない。しかし、君と立川は一度その殺人現場を見ている」
・・・なんだって。
突然のことで驚愕のあまり言葉を失う・・・。
それじゃ・・・。
「それじゃあ、あの時の事件は・・・」
「そうだ、君らが目撃した事件の容疑者でもある」
アレクシアは俺が質問するよりも早く言った。
「・・・・・」
・・・一度会っていたのかよ。
「もういいか?」
「はい」
「では、これより割り振りをする」
何事もなかったかのように会議は進む。
プロジェクターで地図が表示される。
「まず、ヴュルツナーは立川とだ」
「「はい」」
「君たちは現在警備を囲めている区画よりも遠くを捜すことだ。有事になったら応援を呼べ、発砲も許可する」
「「はい」」
「次に、鈴音と神田はマークEの屋上で待機」
「「はい」」
「シルヴィアと玲奈はマークDの屋上で待機」
「「わかりました」」
「颯、アポリネール、藤堂はアレクシア達とは別の場所を探せ」
「「「了解しました」」」
「仙谷はオペレータールームへ」
「わかりました」
「以上解散!」
・・・・・。
・・・・・。
やばいことになってきたな。
そう思った。
「用意はできた?」
ライフルとサブマシンガンを持った玲奈がいた。
すでに通信機を付けている。
「大丈夫だ」
そう答える、心の準備はできていないんだけどな・・・。
「そう、それじゃあ今回は自由行動だから私が行きたいところに行くわ」
「・・・観光じゃあないんだけど」
「ていっ」
「「ドス」っという効果音と共に痛みが走る。
「・・・痛いです」
「あんたがつまらないこと言うからよ!」
「だとしても・・・」
「ああ、また言い訳するんだ情けない」
「・・・・・」
そう行ってアレクシアはエントランスへ向かった。
少女には似合って欲しくない銃器を持って・・・。
・・・すっごいむかつきます。
なんで神田先生はこいつと組ませたのか・・・。
先行きが不安だ・・・。
「さてと行くか」
「よう、慎也」
・・・本当に間が悪いな颯。」
「なんだよ」
アレクシアへの八つ当たりとばかりに素っ気なく返事を返す。
「いや、大丈夫かなぁって様子見に来ただけだよ」
「・・・本当か?」
「疑うよりも、信じた方が楽だぞ」
「どうだか・・・」
「それにしてもいいなあ、アレクシアと組めて・・・」
「こっちの身にもなってみろよ・・・」
「それはお互い様だよ」
そんなわけないだろうが・・・。
って言おう思ったがさっきからの態度が悪いような気がしたので言わないでおこう。
「「友は金より高い」」だ。
「楽そうに見えるけど?」
少しオブラートに包んでそういう。」
「セリアはなぁ・・・いきなり俺の部屋を乗っ取るし追い出してもこの布団がいいって言って貰っていくし、俺が仕返しとばかりにセリアの部屋に行くと玲奈と鈴音に怒られる始末だ・・・」
・・・ずいぶんとほほめかしい内容だなぁ。
あと女性の部屋になんで入ろうと思ったんだ?
ホームステイだから何もないはずだとは思うけど・・・。
「それだけか?」
「いや、急にトラックが来たと思ったら家財道具だった・・・」
・・・セリアさん・・・それはホームステイじゃあありません。
・・・引っ越しです。
「・・・もはや引っ越しじゃん」
「そうなんだよなぁ~、玲奈と鈴音は了承済みだったからなんも言えないし、それに結婚とかガールズトークをしているしな・・・」
・・・颯・・・お前多分・・・セリアと結婚することになるぞ・・・。
それくらい・・・気付いてくれ・・・話されている結婚ってお前のことだぞ・・・。
ああ、俺の周りにはなんでポンコツが多いのだろうか・・・。
いや、鈍いんだろうな颯は・・・。
俺も人のことは言えないが・・・。
「・・・大変だな」
「ああ・・・」
「それじゃもう行くな」
「ああ・・・逃げ出したい・・・」
・・・颯激しく同意するよ。
そう言って俺は待たせているアレクシアの方へ向かった。
また、蹴られるか、発砲されるかはわからないからな・・・。
・・・・・。
・・・・・。
「はあ~・・・」
いきなりこれとはねえ・・・よりにもよってか・・・。
「悪ければ同士撃ちかぁ・・・いやだなぁ・・・」
セリアを待たせて行くので早く行かないと・・・。
そう思って颯は走って行った。
拳銃の弾と、衛生射手のポーチを揺らしながら・・・。
・・・・・。
・・・・・。
「はあ~・・・」
「・・・・・」
昨日から仕事から帰ってくるたびにここに戻らなければならないのか・・・。
窓一つ無い部屋の中には数人の屈強な男と自分が居た。
他にも数人知っている者がいる。
広いためむさぐるしさは感じないが・・・早く出たいものだ・・・。
「長官殿いつまで私はここに居ればいいんだ」
「事が収まるまでです・・・」
「はあ~、本州の事件がここまで来るとでも?」
「ええ、移動していますので・・・」
「九州まで来るとは思えないがね」
「犯人は兵士ですので行動が予測出来ません」
「それは、君らの責任だ。そいつに何を教えたんだ?」
「道徳ですよ」
「坂本くん、君の教育方針は大したものだよ。国の中で犯人を量産してくれたからね」
「少なくとも善意があるはずでは?」
「はあ~・・・」
「首相、これはあくまで軍、民の教育が問題ではありません」
「・・・では、何が問題なのかね」
「兵士の数です」
「つまり、地域が拡大したため兵が足りないと・・・」
「はい、そのために退役を申し出る兵を留めるように陸、海、空軍はしています」
「朝鮮、旅順にも兵を置いているためやむを得ません」
「・・・新兵調達のめどは?」
「今のところは・・・」
「民間から持って来るしかないのか・・・」
「いいえ、それでは前の時代の再臨です」
「・・・今ある兵を使う、大陸の人間を戦地に送る・・・あとはもう・・・」
「能力者ですか?」
「・・・そうだろう」
「首相、あなたは今その能力者に狙われている可能性があります」
「・・・そうだな。それにしても何故彼が能力者だと?」
「はい、戦地での彼の活躍は目を見張るものでした・・・」
「具体的にどういうものなんだ彼の能力は?」
「物を投擲することだと考えられます」
「それくらいなら・・・」
「いいえ、現に防衛省は攻撃されましたそして、まだ捕まっていません」
「・・・何が原因なのか・・・野球でもしてたのか?それか砲丸投げか?どっちにしても変わらないが・・・」
「はい、彼は野球をしていました。しかし、能力は別でしょう・・・いずれにしろすぐに捕まえられますよ」
「モノを投げるねえ・・・今やグレネードランチャーが主流なのだろう?」
「はい・・・しかし、今回使われたのは火焔手榴弾・・・一般的に屋内で使用されるまもので火炎放射器に代わるものとして造られました。破片手榴弾に比べ自軍への被害が少ないため、現在大陸で使用されています」
「・・・よくもまあ、そんなものを」
「そして、使用されたものは立川基地で盗まれたのでした」
「・・・・・」
「確認を取ったところ被疑者である板井トウキの25式小銃と弾丸も無くなっており盗まれた可能性が・・・」
「盗品で間違いないのだろう・・・」
「はい・・・」
まったく・・・なぜこんな事に・・・。
軍のメンツは丸つぶれだな。
「他に彼に関することは?」
「はい・・・彼はアジア連合との協同作戦に大陸から移民からなる混成部隊に配備されたため参加。その後、任期を満了したために退役を申し出ましたが却下されました。その後も何度か出されています。・・・心労かと」
「・・・兵が足りないか」
机の上には草案と人事と公共事業の資産、日程が書いてある紙の束、ペンだけだ。
今日もここに寝ることになるとは・・・。
今夜も長くなりそうだ・・・。
皮肉っぽく言ってみたが・・・どうしようもなく退屈しているせいだろう・・・。
命が狙われているか・・・。
「保護した者、ここに来た者は起こさず、もと居た者が起こすか・・・」
早く解決して欲しいものだ・・・。
そう彼は望んでいた。
「大陸は大きいものだよ・・・」
・・・・・。
・・・・・。
「こっちでいいのか?」
「いいに決まっているわ」
「何を根拠に?」
「直観よ」
「・・・・・」
・・・すごく心配だ。
アレクシアに引きずられながら歩いていた・・・。
空は茜色に移りつつある。
「そういえば、慎也」
「なんだよ」
「なんでライフル持ってきたの?」
「いいだろう、別に・・・」
「市街地だからサブマシンガンがいいのに・・・」
そう言ってアレクシアはこの前見た、サブマシンガンをこっちに見せつけてくる・・・。
「使い慣れている方がいいだろう・・・」
「だったら訓練しなさいよ、付いてあげるわ」
・・・アレクシアのやつ。
まだ根に持っているのだろうか・・・。
「ねえ、慎也」
「なんだよ・・・」
「シルヴィアのこと好き?」
「なっ・・・」
いきなりアレクシアがそんな事を聞いてきたので驚いてしまう・・・。
さっきまで気合い入ってたんだけどなぁ・・・・。
「その反応は・・・なるほどね」
「・・・ドーナッツにしてやろうか」
「あんたがなるわよ・・・」
・・・そうですよねー。
知ってました。
「それじゃあ・・・あたしのこと好き?」
「嫌い」
「・・・えっ」
俺がそう言うと急に静かになった・・・。
「へえ~、そうなんだよなぁ」
ものすごく暗い声のトーンで返してきた。
・・・これって・・・俺のせいなんだよなぁ・・・たぶん。
ああ、あとでどうなるのやら胃腸薬でも買ってこようかなあ・・・。
なんて、思っていてもしたがないので話をそらすことにした。
「あのさあ・・・アレクシア・・・」
「ふん、女の子を大切にしない人なんて何とも思ってないし、大っ嫌いだし、産まれた国も違うし、すぐにすねるし、嫌いって言うし・・・本当にあんたのことなんて何とも思ってないし、好きじゃないし、恩義も感じてないんだからね!」
・・・拗ねてるなあ・・・どうしよう。
とりあえず話はできそうだ・・・たぶん。
「いや・・・あの・・・アレクシアな・・・」
「なによ・・・」
ぐすんって音がしそうなほど涙ぐんでいる・・・何がまづかったのだろうか?。
「アレクシアってこういう話好きなのか?」
「・・・んっ、別に嫌いじゃないし・・・そのあなたと・・・ごにょごにょ・・・」
最後は聞き取れなかった。
小さすぎて・・・。
周りには誰もいない・・・本当に見つかるのだろうか・・・。
この「「アレクシアさん(ポンコツ)さん」」と居て・・・。
まあ、その・・・嫌なわけじゃないんだ。
本当に・・・「「大っ嫌い」」だよ。
・・・今日は風が強いな。
行く人、来る人どれも同じような顔に見えてくる。
そろそろ仕事から帰って来る人が多くなる時間だ。
中学生の頃の俺は本屋で立ち読みをしているか、ゲームセンターで一喜一憂しているだろう。
いつも通り家に帰って、ゲームをしているかもな・・・。
もう懐かしく思えるな・・・。
はあ、なんでアサルトライフルを握って歩いているんだろうな・・・。
慣れているからと言ってこんなの持ってくるんじゃなかったかなぁ・・・。
ああ、サブマシンガンにしとけば良かった・・・。
そう、自分のことをけなしながら歩いてと結構しんどいものだ。
釣りをしている時と同じだな。
まあ、釣り餌がないのだが・・・。
前を歩くアレクシアが恨めしく思える。
彼女が腰に下げているのはMP-7。
恐らく正規品だろう。
・・・こういう所で貧富の差を感じるものだな。
俺なんかコピー製品でライセンスも無し。
戦時に大量生産されたもので在庫処分とばかりに安くされたMP-5だ。
自分用に改造もしていない・・・。
フルチェーンとは違うんだよなあ・・・。
まあ、行く前に地下工廠によって頼んできたけど・・・。
昨日、持って行けば良かったな。
なんて思って歩いていると・・・。
「慎也?」
「なんだ?」
「見つからないんだけど・・・」
「・・・そりゃそうだろう・・・こんな所じゃあ・・・」
見渡す限り・・・木、竹、枯葉・・・そう山の中だ・・・。
なんでこんな所にいるのかって・・・。
それは・・・。
「さてと、それじゃ駅の方に送ってもらうか・・・」
「いえ、行かないわよ」
「えっ・・・なんで?」
「交通機関は使わないで移動していると思うし、今各庁舎で警備が固められいるし、ノットジャスティス、尾行射手が散らばっているわ」
「それはそうだけど・・・新宿とか、金子の方は手薄だと思うけど・・・」
「いえ、犯人は逃げているわ。そして、戻ってくる」
「なっ・・・」
そんなわけないだろう・・・犯人が戻ってくるわけないしそれにそんなことしたら捕まるのは目に見えているいずれにしても「「現実的な選択肢」」ではない。
アレクシアは何を言っているんだ?。
「そんなことするわけないだろ」
「ええ、普通ならね。今回は別よ」
「だから・・・」
「犯人はまだ殺したいを相手殺していない」
「・・・いやだとしてもな」
「「犯人は絶対殺しに戻ってくる」」
アレクシアはそう言い切った。
根拠も何もないはずなのに何故か説得力があった。
「・・・根拠は?」
「情報は伝えられたはずよ。犯人は兵士それも大陸の移民ではなく志願兵よ。そして、もう一つ・・・」
「・・・なんだよ」
会議のあと、犯人についての紙があったが特に大事なことは書いてなかった。
彼が盗み所持していると思われる。
アサルトライフルと、手榴弾、自衛用の拳銃の機種と画像だけは見といたが・・・あのことの他に大事なことは書いてなかったとは思うのだが・・・。
「犯人は何度も退役を申し出てはつっかえされていた」
「まあ、そうだな・・・それが・・・」
「だとすると、犯人は誰を殺す?」
「戦争を宣伝した首相とかお偉いさんとかか?」
「それは、大きな目で見てよ!」
「違うのか・・・」
「ええ、つっかえされていたとしてもそこまでしないわ。そして、それを言い渡した上官でもない」
「・・・それじゃ、誰を狙っているんだ?」
「人事部よ・・・」
「じっ、人事部。彼は心労を患っていたわ。それに、他の人に当たるのもお門違いってわかるでしょう。頭が悪くなければ・・・」
「それじゃあ・・・」
「ええ、狭山湖の方へ向かいましょう」
「居ると思うのか?」
「思うわ。それに今回は犯人の方が有利だしね」
「えっ・・・」
「だって、店で買い物をしていても誰もその人を犯人だとは思わないからよ」
「・・・・・」
・・・そうだな。
今回の事件はまだ隠蔽している。
そのため、目立った行動を取れない・・・。
聞き込みも・・・指紋採取も・・・。
目を潰された状態だ。
そのため、犯人は堂々と食糧を確保できるわけだ。
そして、今尾行射手も見つけたという情報は流れてこない・・・。
となると・・・あとは人海戦術しかないわけか・・・それで俺みたいななりたての統合戦技生も動員されたわけか・・・。
「わかった、それじゃ狭山湖の方に行くか」
「ええ、早く見つけましょう」
以上が今の状態に繋げるまでの出来事だ。
そのため、道に迷った。
GPSはあるが上空からなので方角しかわからない。
都心部で上下の差がわからないのと同じだ。
ただでさえ、光の姫に衛生が落とされたので文句は言えないが・・・。
精度がいまいちだ。
かと言って彩音に迷ったって連絡するのもなあ・・・。
忙しそうだし・・・。
「慎也!」
「・・・なんだよ・・・アレクシア?」
「どうにかしなさいよ!」
「迷ったのはお前のせいだろう」
「あんたが、エスコートしないからよ!」
・・・ドス
ああ、いつか脚の骨折れるな・・・。
人のせいにされても困るぜ・・・。
あんたが先にどんどん進んで行くから・・・。
「また、あたしのせいにして・・・」
・・・ドス
もう何回目だろうか・・・。
本当に理不尽だな・・・本当に・・・。
犯人さん・・・出て来てください。
っと絶対に起きるはずのないことを考えていた。
「はあ~・・・」
「どうかしましたか?」
「はっ・・・」
後ろを振り返ると男がいた・・・。
右の腕が痛いのか包帯を巻いている。
なぜかダウンジャケットを着ている。
見るからに怪しそうだが・・・犯人か?。
「いえ・・・そのあの・・・」
「喧嘩ですか?」
「いえ・・・そんなことは・・・」
「彼氏さん、ダメですよ。彼女にひどいことをするのは・・・」
「・・・彼女じゃありません」
「失礼・・・」
男は照れ隠しに左手で頭をかいた。
・・・この男は一体どこに・・・?。
辺りを見回して歩いていたが・・・人すら見当たらなかったのに・・・。
もしかすると・・・。
いや、そういうことはないだろう。
第一犯人がこうやって出てくるわけないだろう。
こんな時間に山でアサルトライフルとサブマシンガンをそれぞれ持ち歩いて高校生の男女をどう思うのだろうか・・・。
不審すぎるだろ・・・犯人並みに。
「こんな時間にお二人方何をしているんですか?」
・・・聞かれたくないことだ。
「「犯人の捜索です」」とは言えない・・・。
ここは・・・どうすればいいのか・・・。
「えっと・・・」
「彼氏と別れちゃって・・・それでここまで逃げてきました。彼は、私のことは見つけてくれたのですが・・・道に迷っちゃって・・・」
「そういうことでしたか。でも、なぜそんなモノを?」
男はアレクシアの腰にあるサブマシンガン、MP-7を指した。
「はい・・・私って一途なんですよね。それで浮氣した彼が許せなくて・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
・・・演技かな?。
そうだといいよね~。
ほらっ、この人も引いているよ。
「・・・そうですか」
男は苦し紛れに笑っていた。
「はは、本当に困っちゃいますよね。僕も撃たれそうになりました」
「・・・頑張ってください」
・・・いや、その・・・ここは笑って欲しかったんですけどね。
この前本当にこの娘に撃たれたし、今日も撃たれました・・・。
「あの・・」
「はい、どうされましたか?」
「私たち道に迷っちゃって・・・それでその・・・道まで案内してくれますか?」
そういってアレクシアは俺の指を絡めてきた。
いわゆる「恋人つなぎ」って言う状態だ。
リア充ってこんなのやっているのか・・・。
毎日・・・。
ああ、もう爆発すればいいのに・・・。
アレクシアの体温が指を介して伝わってくる。
ほんわかと、だんだんあったかくなってくる。
それで、柔らかくて・・・って何を考えているんだ。
ここは、手を払いのけないと・・・いや、つなげたままがいいのかな?。
どっちが自然だ?。
このまま何事もなかったように過ごすか。
「ヤンデレなんか御免だ!」って感じで払いのけるか・・・。
現実的に考えて、今両手が塞がるとまずいからな・・・。
右手にアサルトライフル、左手にアレクシアの手。
片手で一応は撃てるが・・・精度が下がる。
M-4の弾倉は一つで中に入っているのが無くなったらベレッタでやる。
しかし、それは右腰にある。
まあ、どちらにせよ手を振り払うべきなのだが・・・。
「ええ、わかりました」
「本当ですか、ありがとうございます。ありがとうございます。ねえ、ダーリン私のこと「「死ぬ」」まで愛してくれる?」
・・・・・。
だめだこりゃ・・・。
アレクシアが満面の笑みでそう言ってくる。
しかも・・・「「永遠」」ではなくその上の「「死ぬ」」まで・・・。
いや、「「永遠」」の方が上か・・・。
アレクシア(ヤンデレ)がすり寄ってくる。
傍から見れば微笑ましいかもしれない、幸せなカップルかもしれない。
けど、それが「「ヤンデレ」」だったら・・・。
それはそれでいいかもしれないっていう人もいるかもしれないけど・・・俺は嫌だ!。
最近、「「ソフト病んデレ」」っていう新ジャンル?を隼人から教えられたが・・・無理だったよ。
「「萌え」」すら無かったよ。
そういや、今日シルヴィアのことを「「弾幕系幼なじみ風紀委員系金髪美少女」」って言ってたな。
喜べ慎也!お前の幼なじみが進化したぞ!って言ってやがったな・・・明日、もう一発殴ろう。
あと、「「系」」って二つついていたな・・・。
・・・・・。
・・・・・。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ねえ、見つからないんだけど・・・なんで?」
「犯人が逃げているからだろ・・・」
「主に颯が悪い」
「雫・・・知ってるか・・・医者ってスパイにもなれるんだぜ・・・」
「なんと!それでは私のスリーサイズも・・・」
「そんなん目でわかるわ」
「・・・颯は死すべし」
「なに、絶壁だって大丈夫だよ。モテる人はモテるし」
「セリアも死すべし、神は汝のもとへ」
「って雫さんなんでそんなことを?」
「うう、世界は大きい、サイズも大きい。大は小を兼ねるが小は大を兼ねない。よって、敵と認識する」
「ふにゃあ・・・」
「・・・ヴィヴ・ラ・フランス」
「雫・・・」
雫はセリアの大きな双丘を触っては憎々しそうに顔を歪める。
俺はとっさに二人から目をそらしたのだが・・・。
「颯さん?」
「なっ、なんだアポリネール?にっ、日本は面白いか?」
「ええ、さっきから目をそらしている殿方がいるのですから・・・」
「そっか、会って見たいものだなぁ・・・」
ガチ・・・
拳銃のセーフティが外れる音がした。
「・・・犯人さんが見つかったみたいだなあ。捕まえに行かないと・・・」
「えっ、そんな連絡届いていませんが・・・どういう内容ですか?」
「えっと・・・ふっ・・・」
「ふっ?」
「フランスの統合戦技生が日本の統合戦技生に恐喝の疑いが・・・」
「あらあら不思議ですよねえ・・・私も見つけたんですよ」
「・・・何をだ?」
「机の上に置いておいたのに・・・何も書かれていなかったんですよねえ」
「なっ、それは・・・盗難か?」
「いえ、詐欺です!」
「どういうことだ?」
「そのですねえ・・・家族の方とお話をしましてねえ」
「・・・はい」
「結婚のお話をしたんですよ・・・それでですねえ・・・」
「・・・・・」
「婚姻届け書いたんですよ・・・それなのに書いてくれてないし、紙もどこかにいっちゃんたんですよね・・・」
「・・・ソウナンダ」
「ええ、ちゃんと「「神崎颯様」」って書いたんですよね。手紙も・・・」
「それは・・・もしかして・・・なのだな」
・・・だって、結婚なんてまだ早いじゃん。
「ふふ、早く返事が欲しいなあ・・・指紋が欲しいなあ・・・サインが欲しいなあ・・・」
「おっ、これは日本の伝統「「ヤンデレ化」」ですか・・・ふむ、興味深い」
・・・やめてくれ。
ああ、海が見えてきたよ。
「うん、そういえば颯は何で統合戦技生に?」
「えっ、ああそうだな」
「あっ、それ気になるわねえ」
・・・どうしてか・・・なんでだろうな。
「聞きたいか?」
「うん」
「ええ、是非とも」
「そっか、まああまり面白くはないぞ。俺は今まで軍にいたって言ったよなあ?」
「ええ、そう聞いたわよ」
「そういえばそうだったのだ・・・」
「それで、軍を抜けたから統合戦技生にならないかってスカウトが来てそれでそのままって感じだよ」
「うん、確かにつまらないわ」
「つまんな~い」
「それじゃあ、なんで衛生射手に?」
「ああ、戦場は足りなかったからな・・・医者が。まあ、人体の急所とかはわかっていたから今は楽だよ」
「なんで?」
「死なないようにぶち抜けるから・・・」
「・・・大丈夫?」
「真剣だよ、第一俺は今みたいな「「平和」」じゃなくて「「戦争」」が好きだな」
「そんな・・・」
「ダメだよ・・・そんなの・・・」
「ああ、確かにダメなんだよなあ・・・でも俺は、人に暴言を吐いたり、不満をぶちまけたり、権利だけを主張する奴が嫌いだ。この世界じゃあどんなに人を貶めてもいじめをしても罪にならない。銃でそいつら殺しても自分が罪になる・・・おかしいとは思わないか?。俺は・・・そんなことが起きるくらいなら「「戦争」」がいい、「「戦争」」が大好きだ。「「平和」」なんかいらない、そんなもの望まない。そんなことをそいつらがやっているくらいなら「「壁」」になって死ねばいい。「「平和」」はそんなにいいものじゃない・・・自分に何が起きているかもわからなくなってしまうからだ・・・。けど、俺はまだいい方だよ相手が果物ナイフで刺してきたのを防弾服で受ければそいつに発砲できる、殴れる・・・楽しいんだよな。正義に酔いしれるのは・・・」
「颯・・・」
「今でも怖くなるんだよ・・・あいつらが俺を殺しに来ないかとね。大丈夫だ俺が悪人を裁くから・・・歪んでいるよなあ・・・俺って」
「そんなことないよ、颯は普通だよ」
「そうね、普通よ。私も一人撃ったわ。大丈夫よ、明日はきっとよくなるわ
そう、セリアは胸を張って言った。
「そうだよなあ・・・ごめん」
「謝ることは無いわよ、だって「「仲間」」でしょ」
「ああ、そうだなぁ」
「早く見つけようよ。これ以上させないように・・・」
「そうだな・・・行こうか」
・・・「「仲間」」っていいものだよな。
久しぶりだよ・・・。
俺は・・・「「仲間」」を守るためにここに来たのかな?。
まだ・・・わからいないや。
どうしてここに居るのか?。
・・・・・。
・・・・・。
その後、その男性は俺とアレクシアを道まで案内してくれた。
道中、やれ好きな女の子はいるのか?、家族とは仲良くしているのか?。
そういう質問ばっかりだった。
おせっかいな人だなあと思う。
それが今ありがたいことに感じるのだが・・・。
なんにしても気前のいい人だなあって思った。
・・・けど、やっぱり恋愛系の質問は嫌だな・・・。
アレクシアはどうやらそういうのに慣れているようだ。
男は俺をからかっているように感じる。
というかからかっているだろ「「故意」」に。
しかも、いないって言ったら「「いい店知ってるよ♪」」って言うからすんごい反応に困る。
セクハラ発言で、逮捕してやろうかと思った。
さすがに、アレクシアも顔を赤らめながら苦笑いをした。
冗談が過ぎるぜ、おっさん。
道に迷ってなかったらアレクシアに撃たれていただろうな・・・。
うむ、男子の会話ってかなりディープなものだからなあ・・・。
女子禁制。
まあ、それに乗ってきたらこの世界は終わっているだろう。
女性は「「貞淑」」で「「潔癖」」で「「純粋」」で「「無垢」」。
そういうものがいいと思う。
しかし、こういうのを公でいうことも今はだめだからな・・・。
男女平等、差別はダメ。
しかし、「「兵役平等」」は叶わなかった。
これは、女性議員の反対が相次いだためだ。
俺もそこまでいい思い出がなかったので賛成はしていたんだけどな・・・。
女性は戦ってはダメって誰が決めたことなのだろうか・・・。
救国の聖女「「ジャンヌ・ダルク」、「鶴姫」、「アン・ボニー」、「メアリー・リード」などなど。
戦う女性は存在している。
世界中に・・・。
けどそれが認められないのは何でだろうな・・・。
男は戦っていてもそれが当然のことだと思われている。
まあ、俺はそうでも構わないとは思う。
そんなことを思っている間に辺りが開けて家が見えた。
もう、迷うことはないだろう・・・。
「ありがとうございます」
「いえ、私も暇でしたので」
「いやあ、迷子になっていた所ですよ。今も」
「まったく・・・あんたが道を見失うから悪いんでしょ!」
「いや、それは・・・お前のせいで・・・」
「何?言い訳する?本当に信じられないんですけど!」
「いや・・・だってさあ・・・」
「こんのおお・・・バカバカバカあああ!」
「ははっ、仲がいいですねえ」
ポカポカと叩かれる俺。
その人に出会ってから初めてその人が「「笑う」」所を見た。
なんら変わりのない笑い方だった。
けど、それが何故か印象的だった。
「さてと、私はこれで・・・」
「はい、ありがとうございました」
「いえ、その・・・」
「ん?どうしたのアレクシア?」
「ええ、そのありがとうございました」
「いいえ、大したことはしていません」
「そうでしょうか?」
「はい」
「・・・そじゃあもう一つお願いが」
「何でしょうか?」
「「私たちと警察署まで来てください」」
「えっ?」
俺が「「何故か」」を問うよりも早くアレクシアは銃を構えた。
「「クっ・・・」」男は驚いたもののすぐにアレクシアの銃、サブマシンガン、MP-7を振り払いアレクシアを蹴り飛ばした。
「なっ・・・」
瞬間、腹部に違和感が・・・。
その違和感はすぐに痛みに変わる。
「がはっ・・・」
アスファルトに背中がぶつかる・・・。
受け身を取り損ねたが・・・かろうじて頭はぶつけずに済んだ。
すぐさま起き上がる・・・。
「・・・っ」
男は銃を構えていた。
今まで彼の持っていた袋は彼の後ろに転がされている・・・。
「38式歩兵小銃・・・あんたが・・・」
写真でみた特徴に当てはまっていた。
ブルパック式の弾倉。
前方にある排莢口。
短めの銃身。
・・・間違えない、こいつが「「犯人」」だ。
「くっそう・・・」
とっさにアサルトライフルを構えてでたらめに撃つ。
反動で痛い。
「ふふ、まさかこうなるとはねえ・・・」
男は銃を構えた。
まっすぐに俺を狙っている・・・。
「慎也!」
「・・・っ」
起き上がったアレクシアが発砲する・・・。
そのすきに俺は身体を前の家の壁に隠れる。
そして、走りながら撃っていたアレクシアが飛び込んできた。
「「走り撃ち」」・・・外れるのが前提で撃つ。
訓練時では危険なため禁止されている行為の一つだ。
どこに弾が飛ぶのかがわからない。
そのためだ・・・。
威嚇射撃程度なら海上保安隊が行っているものだ。
アレクシアがそれをやっているという事は身を隠すためだろう。
「はあ、そんなんじゃ死にませんよっと」
パンっ・・・。
「なっ・・・。」
電柱が倒れてくる。
とっさに俺とアレクシアは左に避ける・・・。
ドスン・・・。
頭を隠す・・・。
数秒経ってから頭を上げる。
切れたワイヤーからはスパークが生じている。
当たらなくて良かった・・・軽く死ねる。
「・・・・・」
音は聞こえない・・・。
「逃げたのか・・・?」
無音だ。
すぐに住人が飛び出してくるだろう・・・。
「アレクシア?大丈夫か?」
アレクシアが胸を覆い隠しながらぺたんと座っていた。
「アレクシア?」
「こんのおおおお、どさくさに紛れてえええ!」
ガンっ・・・。
ばたっ・・・。
「バカバカバカあああ!変態!色魔!死んでしまえええ!」
katakakatka・・・。
「えっ、ちょ待ってええええええええええええ!」
カチ・・・。
弾が切れたみたいだ。
「アレクシアさん?」
「少女強姦罪で逮捕だ!」
「えっ、ええ!」
こんな時に何を言っているんだ・・・。
・・・・・。
・・・・・。
38式歩兵小銃
装弾数90発
4.98ミリメートル弾を使用する日本軍の兵器
市街地戦での使用を前提にブルパック式を採用
特徴的なものは「「軽量」」、「「銃身が短い」」こと。
そして・・・。
「・・・すごいわねえ」
「どうしたんだアレクシア?」
「電柱が撃ち抜かれているわ」
「そうだな・・・」
無残にも転がっている電柱を見る。
さっきまでそこに立っていたものだ。
「たった一発で・・・」
「違うわ、五発よ」
「えっ・・・」
聞こえのは一発なのだが・・・。
「見て、薬包が転がっているわ。五つ」
「・・・・・」
「使われたのは「「メタルスラッグ」」ね。ドイツにも38式歩兵小銃は導入されたけど・・・見たのは初めてね」
「・・・あんなものが」
「ええ、使用されているわ・・・」
「・・・・・」
「まあ、いいわ・・・あなた残弾は?」
「アサルトライフル(こいつ)が10発、ベレッタが45発だ」
「そう・・・私はサブマシンガン(MP-7)の弾が切れたかたら拳銃だけね」
「・・・無くなった理由が見方撃ちなのですが?」
「うっ、心理攻撃よ、心理攻撃!」
・・・心理攻撃 (物理)なんて聞いたことがないぞ。
「さて、それじゃ反撃と行きますか・・・」
「応援を待った方が・・・」
「時間がないわ、今そう遠くへ逃げていない・・・今逃したら被害が拡大するわ」
「けど・・・」
「いい、もう手は引けなくなった・・・犯人は恐らく基地の方へ向かう」
「あそこは今・・・」
「ええ、警備が一番薄い」
「応援も望めないわ・・・」
「・・・やるしかないのか」
「ええ、行きましょう」
「「これ以上悲劇を起こさないように・・・」」
・・・・・。
・・・・・。
「それで・・・どうするんだ?。回り込むにしても時間がかかる・・・」
「だから、今出るんでしょ」
「それにしても・・・嫌に静かねえ・・・」
「まさか・・・」
「・・・うん、発砲音は聞こえない・・・だとすれば・・・」
「民家・・・?」
「そうね・・・移動手段を確保するはずよ」
「・・・それで、どこから入るんだ?俺らは・・・?」
「・・・これから」
アレクシアは電柱を指さした・・・。
「あの・・・一応聞くけど何で?」
「足場があるから」
「・・・・・」
足場・・・確かにありますねえ・・・電気工事用のものが・・・。
「屋根に登って身を隠して近接戦闘と・・・行きますか・・・」
「・・・マジすか?」
「真剣よ、私から行くわ」
「いや、待て・・・俺から行く」
「ダメよ、経験のないあなたじゃ無理でしょ」
「いや、そういうのじゃなくて・・・」
「何?」
「その・・・スカートの・・・中が・・・」
「なっ、こんな時に・・・やっぱりあなたはそういうのが・・・」
「いや、だからさ・・・なっ・・・」
ものすごい速さで靴が・・・。
顔の前で止まる・・・。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・今後、そういうことは口にしないように・・・」
「はい・・・」
「行くわ・・・続いて」
「・・・・・」
アレクシアはさっきと違って殺意のある目を向けてきた・・・。
感情を一切排したその顔は・・・とても怖かった。
氷のような鉄面皮、光のない瞳・・・雫のとは根本的に異なるものだ。
だたただ生存本能のみが顕現したもの・・・。
「「捕食」」・・・ではないな・・・。
「「虚無」」か・・・。
いずれにしても・・・少女が持っている表情ではない・・・。
「・・・クっ」
俺は自分の相棒(M-4)を引き寄せる・・・。
・・・死ぬかもしれないという実感が身体に纏わりついた気がした。
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
「そう・・・発狂でもした?」
「いや、そんなことはないよ」
「そう・・・行くわよ」
「ああ、ささっと終わらせようぜ」
頭が痛い・・・。
けど、何故か・・・気持ちがいい・・・。
「・・・・・」
まっすぐに前を見る・・・。
そこにはいつもとは違うアレクシアの顔があった・・・。
不思議とさっきまでの不安は無かった。
・・・・・。
・・・・・。
「よいしょっと・・・」
家の屋根に乗る・・・。
なんか泥棒みたいだ・・・。
そして、罪悪感が少しこみ上げてくる・・・。
うう・・・時代劇で怒る代官の気持ちがわかる。
家とは、家族を外から守るもので、癒しや思い出も作れるしろものなのだ。
しかも、近代的な和風の家で瓦葺きとなっている。
家は大きく、庭には池もある。
・・・本当にすみません。
土足であなたのお家の瓦を踏みつけてしまって。
まあ、前にはそんなことおかまいなしに踏んずけたドイツの方がいるんですけどね・・・。
「なあ・・・」
「なに?」
「この家で間違えないのか?」
「ええ、そうよ・・・突入はやめましょう・・・あっちの方が有利よ」
「いや、どうしてこの家なのか?だって・・・」
「送電線が切れているから、停電になっているでしょう?」
「ああ・・・」
「こういう時小さな家では家族がすぐに集まるでしょ?。その分、人質は取りやすいけど脱出路の確保が難しいわ。大きな家の方が中に入ってもしばらくは家族に気づかれない。それに警備会社に頼んでいるからって安心を過信しているのよ」
「それで・・・この家を?」
「ええ」
「わかった・・・出てくる所を狙えばいいのか?」
「いいえ、車に乗る直前に腰部の弾倉を撃って」
「左腕じゃなくていいのか?」
「ええ、先にそっちをお願い」
「わかった・・・アレクシアは何をするんだ?」
「近接戦闘よ・・・外さないでね」
「わかったよ・・・三連射する・・・車は・・・あそこか・・・」
およそ50メートル弱。
白い車が見える・・・。
「狙える?」
「スコープを使う」
そういって腰のポーチからスコープを取り出してみる。
壊れていなくて良かった・・・。
「それで大丈夫なの?」
「暗視じゃないけど・・・光量は大丈夫だ・・・一回勝負だな」
「ええ、頼むわよ・・・外したら私が死ぬわ」
「・・・外さないよ」
とは言ってみるものの・・・。
どうなるかはわからない・・・。
精度はともかく倍率は問題なさそうだ・・・。
「それじゃあ、あなたは上から私は下から行くわ」
「応援の連絡は?」
「ええ、レッドマークにしたからすぐに来るはずよ」
「了解・・・」
「ええ、それじゃあ・・・」
ドシっ・・・
アレクシアが地面に着地して走って行く・・・。
きゃあああああああああああああ!。
「・・・っ」
屋内から悲鳴が聞こえる・・・。
パン、パン、パン、パン・・・。
発砲音・・・。
さっき聞いたものと同じ・・・38式歩兵小銃のものだ・・・。
悲鳴の主に撃ったのか?。
わからない・・・。
「・・・クっ」
スコープを車のドアに合わせる。
運転席が左側にあるのは確認済だ。
日本車じゃなくて良かったな。
俺が狙いやすいんだよ。
あんたの銃を持っている左腕を!。
ガタッ・・・。
ドアがいきよい良く解き放たれる・・・。
唾を飲み込む・・・。
パン、パン、パン・・・。
再度発砲音・・・。
「来いっ!」
俺はM-4(アサルトライフル)を握りしめた。
男は車の方へ走って行った。
どうやら中で鍵を見つけたらしい。
ついていたのはあんたじゃなくて俺とアレクシアだったよ。
パっ・・・。
引き金を引いた。
弾は真っ直ぐに飛んでいき目標である弾倉と拳銃に当たった。
「・・・・・」
すぐに下に隠れる・・・。
男はこちらに銃を向けてくるのが見えた。
それともう一つ・・・。
男は車の上に右手を置いていた・・・。
「なっ・・・まさか・・・」
パリューイーン・・・。
「くっ・・・」
さっきまでとは音が違う・・・連射しているのだ・・・38式歩兵小銃を・・・。
屋根の瓦が割れていく。
このままでは貫通すると思い下に降りた・・・。
次の瞬間・・・。
ガクン・・・。
「えっ・・・」
さっきまでいたところに「「車」」が来た。
車は重力に引かれて俺の前に落ちた・・・。
きっとあの場所にいたら・・・死んでいただろう・・・。
屋根の上で交通事故なんて笑えねえよ・・・。
お返しとばかりに残っている全弾をかます・・・。
足元を狙う・・・時間が稼ぐことができればいい・・・。
「・・・・・」
落ちてきた車を盾に撃つ。
そして、家の裏側に隠れた。
車に銃弾が当たる。
「「貫通していた」」
「・・・死ぬな」
壁には弾痕が残っていた。
正確には穴が開いている。
向こうの家の壁に弾痕が見える。
車を貫いたにもかかわらずエネルギー自体は残っていた・・・。
「こんのおおおお・・・」
ベレッタを連射する。
再装填
再度発砲
最後の弾倉を入れる・・・。
「アレクシアはまだなのか・・・?」
何をしているのだろうか?。
死んだのか?。
パアン・・・。
「・・・・・」
訓練で聞いたことがある音だ・・・。
覗いてみると男がアサルトライフルを投げ捨てている。
「・・・狙撃?」
あとは・・・。
「行くか・・・」
今しかない・・・。
「クっ・・・」
「なっ・・・」
見ると男の周りには大小様々な「「石」」が浮いていた・・・。
男に向かって発砲
ガキン・・・
無残にも弾が跳ね返される・・・。
「・・・くっ・・・」
男は笑っていた・・・。
しかし、「「言葉」」は発していない・・・。
「お待たせ!」
発砲音・・・。
「アレクシア!」
彼の周りに浮遊していた石が撃ち落とされる・・・。
・・・殴るか。
ベレッタを投げ捨てる。
弾はもう入っていないので不要だ。
「ナイフか・・・」
前に飛び出す・・・怖くはない・・・。
「・・・っ」
男は池を囲む石を俺に向かって「「投擲」」
カンっ・・・
あ~あ、壊れちまった・・・。
高かったんだけどなこれ・・・。
「もう終わりよ!」
アレクシアが彼の足にあったナイフに向かって撃つ。
「はは、まだ終われないんだよ・・・」
「・・・くあは」
男はアレクシアに向かって突っ込んだ。
アレクシアはガードをするが銃を持った右手をつかまれ膝蹴り、アッパーを喰らい、さらに彼の右手で投げられてしまう・・・。
アレクシアの身体が硬い壁にぶつかる・・・。
「・・・ああああああああああああ!」
怒り任せに彼を殴る・・・。
「ふっ、大切な人だったのかな?恋仲?」
「うるせぇ!」
男はまだ笑っていた・・・。
(くそ・・・あの腕が・・・)
パアン・・・。
「・・・くっ」
彼の右腕に血が走る。
再度狙撃されたようだ・・・。
けど・・・「「俺にはそんなの関係ない」」
「はあああああ!」
グローブ越しでも感触が伝わる。
振りぬいた・・・。
「・・・・・」
パタッ・・・。
男は倒れた・・・。
「はあはあはあ・・・」
世界が霞んでいく・・・。
パタッ・・・。
・・・・・。
・・・・・。
「・・・う、う~ん?」
「おっ、慎也大丈夫か?」
「ああ・・・アレクシアは?」
「さっき処置したよ。お前よりは酷いけどな・・・これを飲んでおけ」
「・・・錠剤?」
「ああ、ビタミン剤だ。疲労回復に効く」
「犯人は?」
「ああ、あそこだ・・・」
「・・・よく見えないな」
「・・・疲れているからさ。もう大丈夫だ」
周りにはたくさんのパトカーが・・・。
刑事かと思われる人たちもいる・・・。
応援が来てくれたのか?。
「今回は部下が迷惑を・・・」
「はい、おかげさまで」
「・・・彼はどうしますか?」
「しかるべきものに従います・・・」
「そうですか・・・」
話し声が聞こえる・・・。
「なあ・・・」
「ああ、大丈夫だお疲れ様」
「ああ、お休み・・・疲れたよ・・・」
「そうだな・・・お疲れ」
・・・・・。
・・・・・。
「・・・・・」
「気がついたか「「板井トウキ」」お前を逮捕する!」
「・・・橋爪」
「なんだ・・・?」
「みいつけた・・・ははっ」
「「お前を探していたんだよ!」」
「なっ・・・」
「まさか・・・」
パン、パン、パン・・・。
颯は彼を池に放り投げた・・・。
バコン!!
水しぶきが上がる・・・。
「なっ、何を・・・」
「27式火焔手榴弾は湿気程度ならもろとはしません。しかし、水中では威力が低下するんですよ」
「・・・彼は?」
「腹部に火傷・・・ですかね?」
「・・・君は?」
「はい、統合戦技生神崎颯と言います」
・・・・・。
・・・・・。
目が覚めると病院だった。
丸二日寝ていたようだ・・・。
身体が重いな・・・。
「おつかれさま、慎也」
「アレクシア・・・」
振り向くとアレクシアがそこに立っていた・・・。
いつもと同じ綺麗な顔をで、いつもと同じ綺麗な声で・・・。
そして、少女にふさわしい笑顔だった・・・。
Fin.