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彼は目覚めたが、体中に痛みが残っている。
腕と手首の関節、肘、肩、首、背中・・・すべての骨と骨をつなぐ関節内の軟骨が悲鳴をあげているのだ。
下半身に至ってはことさらヤバい!
両足で降り立とうと酷使しすぎたのだろう、支えられる限界を大幅に超えていた。
じっとしているだけでも、痛みの波が押し寄せてくる。少しでも動かそうものなら耐えられないほどの激痛に見舞われた。
「ぐっ、う・・・」
あまりの痛みに声が出てしまった。
どうして僕はこんな思いをしなければならないのだろう・・・
痛いのやだよ、もう僕は一生分の痛みを経験したんじゃないかな。
前世でもこんな痛みは経験したことがないし、初めてだよ。
ローガンも起きたようだ。
寝転がったまま、ちらりとダニエルを一瞥して...
そしてどこを見るでもなく一言つぶやいた。
「おぬしはバカじゃの。」
ほんとにそのとうりだ、僕はバカかもしれない。お試しのつもりが、少々調子にのった。なんでもできると思ってしまったんだ。
自分でもバカだな~と思っている。
こんなのはじめてだったから。
・・・・気持ちがどんどん盛り上がって・・自由に動けて、思った以上に体がすっきりして、自分が自分を超えていってくれて・・・
すごく嬉しかったんだと思う。
それに・・楽しかった・・のかな。初めて森にきて気持ちがよかった。まるであったかい自然に歓迎されているようで・・・ここの空気を吸って、木をのぼって、ちょっと無茶をして。
「あれじゃな、身体能力はたいしたことないの~」
そう言われても、ダニエルはぴんと来なかった。だって、僕、自由に動けるし、あんなふうに木登りするなんて、すごいことができるようになったし・・
とにかくめっちゃすごいと思うけど!!
な~んて心の中で反抗してみたけれど、それを口に出すことはしないかな。
めんどくさいよね、人に気持ちを伝えることって。
僕の言葉で人を傷つけるってこともしたくないから、黙ってるにかぎる。僕が喋るとだいたい人を不快にさせてしまうんだ、きっと僕は性格が悪い。
自己中で我儘だし、そのくせ傷つきやすい。だからあんまり、人と関わりたくないんだよね。
「わしだったら、あの程度のところから飛び降りてもピンピンしておるぞ。
間違いなくそんな風に寝込んだりはせんな。」
「うん。でも、それはからだのつくりが・・・・」
「そのとうりじゃ、つくりだけでなく鍛え方もちがうからの、
とにかくわしの足元にも届かんってことだな。」
そこまで言わなくても・・と思っていた。
あんな怪物みたいなのといっしょにされても困る!僕は僕だし・・・だいたいにして、いい線いってたんじゃないかなぁ!!
も~ほんとにムカつく、くそおやじめ!偉そうにしすぎなんだよね~僕のこと、バカにして。
「お前の能力は別のところにあると見たぞ、なにか感じることはないか?」
「ん~?そうゆわれても・・・別に。」
「まあ、そうじゃな。そのうちわかるわな、焦らんでもいいか。」