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「まあ、とりあえず外にでるとするか。ここじゃあ、な。」


 ここは、ミミズトカゲの巣になっている、小さな地下室だった。密閉されたじめじめとした空間に何時間もいたのかと思うと、よく酸素がもったな~と感心してしまう。

体の大きなローガンにとっては狭い空間に閉じ込められるというのは居心地が悪いようだ。

はやく、いますぐにでも外に出たいようだ。よく付き合ってここにいてくれたなってぐらいだ。


 僕はここ、大好きなんだけどな。灯りをつけないと真っ暗になっちゃうけど、ちょっと寒くて濡れちゃうけど、すごく落ち着く。僕だったら何日でも一人でここにいれそうな気がするよ。

 あ、あの子たちがいるから一人じゃないんだけどね。


また、ここに戻ってこれるよね、大丈夫だよね。・・・そう思いながら地下室を後にした。


 外に出てみると夜だった。月明りが眩しくて、驚いた。雲ひとつない晴れわたった暖かくていい天気の夜だった。

湿った服や髪がはやく乾くようにとローガンはせわしなく動いている。

僕はこれからの自分がわからなくて不安でいっぱいです。ほんとにどうしよう。

僕は何がしたいんだろう、何者であるのか、何になったのか、なれるのか。どんな道が待ち受けているのか、考えてもしかたのないことで頭の中がいっぱいになっております。


 地下室の出口をでると近くに森がある。山はなく、平坦だが大きな木々たちが生い茂る、だだっ広い森だ。人が通るための人工の砂利道は森を通ることなく、迂回している。森のなかにある道といえば、動物たちが歩くうちに自然にできた、けものみちくらいだ。

 ここの自然は地球とは全く違う。似たように見えるし、植物の種類も大体おんなじ。だけど、こっちの植物たちは、みんな生き生きとしていて自由だ。足元にはえている草たちも、森にいる大きな木たちも、みんなのびのびとからだを広げて呼吸をすること自体を楽しんでいる。生きていることを喜んでいるようにさえ見える。

 ほんとにこっちの植物たちは感情が豊かなんだ。


「そこの森へ入って実験してみるかの?あんまり人目につかんところがいいからの~。」


「僕、夜にはいつも家に帰るんだよ。きっと心配してる、いい人たちだから。」


「親、兄弟に向かって”いい人たち”とは・・・なんとも他人行儀じゃな。

・・・本当に帰る、なんてつもりはないのじゃろう?」



帰らないと。頭ではそう理解していた、だけど、僕の冒険心が疼き出してしまった。

 不安だし、怖い。ローガンなんて意味の分からない、こわ~い人について行っていいのか。もし、ローガン言っていることがすべて嘘だったとしたら、・・・・何のために?

・・・・そんな葛藤もあるんだけれども、それでも、知りたかった。自分のことを。


「だけど、ちょっとだけならいいかな。」


「うむ。」

そう答える前に二人は歩き出していた、森に向かって。


 実はダニエルは森の中に入る前から、自分の身体能力についてうすうす気が付いていた。ふわふわと浮いているようで軽い、とにかく軽いのだ。動かそうと思っただけで動いてしまう、力を入れずとも。それはそれは不思議な感覚であった。力を使わずとも体が動いてしまうとしたら、筋トレだって疲れ知らずなはずだ。例えば、腹筋!今まで二十回くらいが限界だったけれども、今なら二百回、いや、いつまでも永遠にできそうな気がする。

 なんだか、できることが増えたのかと思うと気分が高揚してきた!早く試して見たい!そう思った瞬間にダニエルは走りだしていた。

 めちゃくちゃ早かった。本日の穏やかなそよ風よりもはやいスピードで、優しく駆け抜けていく・・・・

急にペースを上げたダニエルを見てローガンも合わせてとなりを走ってくれる。二人で走ればあっという間に森の入り口についてしまった。ほんの一瞬、一呼吸深呼吸をしたらついてしまった、そんな感覚だ。入り口といっても実際に決まった場所があるわけではなく、森との境界のことで、木々がまばらになっていって途絶えたあたりのことだ。


「さ~てまずはなにからするかの。」


「なんでもいいよ。」

 そう答えるとダニエルは、木と木の間をジャンプするように片足ずつ蹴って登って行った。

ここに生えている木はとてつもない背の高さがある。地球でいうと、ジャングルの中にあるような太くてうねった幹の木ではなくて、北海道にあるような極太ではないけれどまっすぐ空に向かってだだ伸びている。それをさらに成長させて、2~3倍の高さにした感じ。20階建てのビルの高さかな。そんな木々だからほとんど枝分かれもしていないし木登りには向いていない。おそらく普通の人ならば見上げるだけで、登ろうとも思わないだろう。まあ、すでに木登りの次元ではないのだけれど、どんどん登っていく。







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