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「そういう運命だったのだ。」
なぜ僕を助けたの?滅多に使ってはならないとされる魔法を使ったのかと疑問に思い尋ねたときの答えがこれだった。
「だっておかしいよね、他の人は見殺しにしてきて、僕だけ助けるなんて。」
「おかしいことなんて何もありゃせん。わしは自分の運命に従って生きることしかできないだけだ。自由に道を選んでいるように見えてもその実、ただある道をたどっているだけなのだ。」
そう答えるとローガンはどこか懐かしむように遠くを見つめた。寂しい目だった、暗い顔だった。
この人にはきっと、僕なんかには想像もできないような過去があるのだろうと思う。
僕のような気弱で自分を傷つける苦しみではなく、どんなに頑張っても他人から傷つけられる苦しみ、どうすることもできない痛み、それを経験してきた人なのではないかと思う。
「おぬしもそのうちわかるようになるわ。わしと似たような未来が見えておるわい」
「それってどういうこと?僕とローガンは全然ちがうと思うけど。」
「転生組じゃろう?わしもそうじゃ。」
いきなり驚き発言が飛び出した。なんてことを言いだすのかと思った。
ダニエルは自分だけだと思っていた。自分だけが日本から異世界へと転生してきて、異質な存在だと感じていた。誰にも理解されないし、一生孤独なまま生きていくことになるだろうと。
だけど、どうだろう、同じように転生者でそれもこの世界の大先輩に出会ってしまったとしたら。
....この人から学ぶべきことがあるのではないか。
....聞いておかなければならないことは何だろう。たくさんあるような気がしてならない。
だけどうまく言葉が出てこない。
「そう、だけど。」
「おぬしは先ほど、自身の力に目覚めたはずじゃ。転生者はある能力を隠し持って生まれ変わるのだ。そして、時を迎えるとその能力を呼び覚ます。そう決まっているのだ。わしもそうだったからな。
おぬしが気に入ってリリーと呼んでいたミミズトカゲ、あやつもおぬしの能力のかけらだったのではないか?」
「んん!?リリーはリリーだよ、どうして!?」
リリーを失ったばかりで、悲しみから癒えてないというのに余計に意味が分からない。
「孤独の中で心を許せる友達がほしいと願った。その願望が無意識のうちにリリーという存在を作り出したのではないか。そう思っただけじゃ。わしの推測に過ぎんでの、気にするでない。」
「そして、時を迎えたわけじゃ。能力を呼び覚ます際には大量のエネルギーを要する、あまりに力を使い果たしてしまって瀕死の状態におちいっていたぞい。それを助けてやるというのがわしのさだめられた運命の一つであり、おぬしの運命と交わるためのたった一つの接点だったわけじゃな。」
運命とか接点とかどうして難しい話し方をするのだろう、僕の脳みそが全くついていけないじゃないか。
僕の理解力が乏しいわけじゃないからな、絶対違う!
でもほんとにわからん、わからんけど....まあ、落ち着け、自分。
そ...そうだ。
「僕の能力ってなんなの?」
「それはわからんな。これから確かめてみたらどうじゃ?」
そういうとローガンは黄ばんだ歯をみせてニッカっと笑い、何かに期待し面白がっているようだ。
だけど、なんだか怖いな。
変わってしまった自分に出会うことが。
すんごい強くなったとかめっちゃ使える能力とかかもしれないし、逆に全く使えないしょうもない能力かもしれないし。
どっちにしろ、どんな能力に目覚めたにしても、それに向きあって、受け入れる。
その過程がいかにめんどくさいことか。
....うん。これはなかったことにしよう、な~んにも聞かなかったことにしよう。
それで今までどうり平凡に.... へいぼんに、
・・・いままでどうり・・・・か。
エリーがいなくなっていままでどうりになんていかないし・・・・エリーに出会うまえのさみしいころにまた戻ってしまうなんて考えたくもないし・・・・
結局、僕は孤独で寂しいままなんだな。
黙ったままの僕をみてローガンはしびれを切らして問いかけた。
「で、どうするのだ。試してみるか?」
「うん。自分の能力、知りたい、かな。」
そう答えていた。おお~きな一歩を踏み出そうとしていた。