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 僕の名前はダニエル、8歳。

日本では14歳で死んだんだ。

どうして死んだのか、名前は何だったのか、大切なことは全く思い出せない。

覚えているのは、どんな生活をしていたか、学校で何を習ったか、などなど、しょうもないことばかり。

それからこの性格もそのままだ。

人には会いたくないし、誰の言葉も聞きたくない。自分だけの世界で好きなことをしていたい。

その相手が親ならばなおさら素直になんてなれない。

いつだってあまのじゃくだ。


 日本で死んだ後はこの世界に生まれ落ちた。

この世界の両親にとって、三番目の男の子だ。二人の兄はやんちゃで喧嘩ばかりしていた。赤ん坊の頃はそれなりにちょっかいを出したりして遊んでくれたが、成長するにつれてダニエルから距離を置くようになった。

おとなしいダニエルと遊んでも面白くなかったのだろう。


 母は・・・

 母の髪は美しい。

腰にとどくほどの長い金色の髪は、緩やかなウエーブがかかっている。その髪が空気を纏うと、そのまま空に溶けてしまうのではと思うほどの儚さがあった。

いつでもきらきらと輝いていた。

肌は白く、澄んだ水色の瞳を引き立てている。

母は美人だ。それも・・・誰もが憧れ、恋い焦がれる美しさと心の強さを兼ね備えた。

 

 赤ん坊だった僕はそんな母のおっぱいを飲んで育った。

前世の記憶の残っている僕にとっても、赤ん坊の僕にとっても、あったかくて幸せな時間だった。

母の腕の中で心と体の栄養がみたされていく、特別な時間だったんだ。


 母は愛してくれている。ほかの兄弟と同じように。

だけど僕はその愛にこたえることができない。

それが僕だ。


前世の記憶が邪魔をして、人を愛することができないんだ。

それどころか、家族を信じることすらできない。どんな言葉も行動も、素直に受け入れることができない。

愛情を注いでもらっても、いつかはなくなる。そう思うと優しい言葉もすべてうそっぱちにきこえてくる。

それは辛いことだった。

自分のことを大切にしてくれる家族を愛したい。心の奥底ではずっとそう思っているのに。


なぜそんな暗い記憶を・・・苦しくて辛い記憶を持ってきてしまったのだろう。できることならば、孤独で寂しかった昔の感情なんて捨ててしまいたい。何もかも忘れて純粋な普通の子どもになりたい。


そんなことを考えながら僕は庭のベンチに腰を下ろし、自分では気が付かないほど、暗い表情をしていたのだろう。通り過ぎる家族はだれ一人声をかけてこなかった。だから一人ですわっていた。

庭のところどころに生い茂る草むらをただながめていた。


エリーと出会ったのはそんな時だった。


「ハロー!グッモーニン!」

 

どこからともなく声が聞こえてくる。元気な女の子の声だ。

だけど、どこにも誰もいない。幻聴か....


「ここだよーここ。」


ここってゆわれても全く見当もつかない。なんだなんだ。ついにボケはじめたか。


「ボケてないよ。大丈夫だよ、私はちゃあーんといるよ。ほら、下のほうみてごらん。」


いないけど。


「んーもうちょっと下かな。こっちの~足元のほう!

ほらほら、・・・・・・えぇ~~~~い!!よいしょ!!!!」


いた!!なんかへんな生き物がジャンプしてる!・・いや・・・ジャンプしようとして、できてないぞ。

めっちゃがんばってるけど、できてないからな。もがいてるだけだぞ。

なぁ~んか面白いな、こいつ。


「は~疲れた。こいつじゃなくて、エリーだよ。名前あるんだからね。エリーってよんでね。」


 あ、うん。

あのさ、なんでさっきっから僕の考えてることがわかるわけ?そんでもって会話しちゃってるの。


「これはね、念話ってゆってね~ 頭の中で考えるだけで相手につたわるんだよ。すごいよね!

私も念話で話してるから、私の声もダニエルにしか聞こえてないんだよ~」


 そうなんだ~すごいね~。って!!どうして僕の名前しってるのさ!ねぇどうして!


「そんな気がしたとしか・・・・よくわかんない。」


それはこっちのセリフだよ、もうほんと意味わかんない。

だけど、エリーってなんか可愛いな。






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