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シズカ
むかし、夜空に向かって生まれてこれなかった兄弟に紙飛行機をとばしていたときがあった。
おかあさんは何してるの、と聞いた
わたしはお姉ちゃんに手紙だしてるの。と言った
―初めて親にぶたれた。
キョトンとしているわたしに、おかあさんは初めて見るような顔で怒鳴った。
―もう2度とこんな事しちゃだめ。
あなたにお姉ちゃんはいるでしょう。
あのお姉ちゃんしかあなたにはいないの。
お空には誰もいないの。
そう言って抱きしめられた。
私が覚えているのはここまで。
でも確かに、あの日のほっぺに感じた痛みと、おかあさんに抱きしめられた温もりは今も覚えている。
わたしは変わった子どもだった。
他の子どもは自分の意思で泣いたり笑ったりくるくると表情がかわっていったけど、
なぜかわたしは自分の意思で怒ったり泣いたり出来なかった。
他の子どもが笑っていたら笑う、泣いていたら泣く。
そんな子どものことを先生たちはおかしな子、と思っていたようで、
保育士の中ではモノマネしいちゃんと言われていたようだ。