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第六十二話

「よいしょっと。見た目通り軽いから、助かったぜ」


俺は、エリカをベッドにおろして寝かせる。


「それじゃあアンナさん?マリアさんの部屋へと案内してもらえるか?」


「かしこまりました。……しかし、その前にひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「ん?別にかまわないけど?」


「では単刀直入に……」


そこでアンナさんは一息入れて、真剣な顔付きになる。


「ゲンナイ様……あなたは…何者ですか?」


聞かれて困る質問ベストファイブくらいに入りそうな質問をされてしまった。


「えっと…具体的にはどういう意味?」


「では僭越ながら……」


アンナさんは俺を少し睨むようにしながら言葉を続ける。


「ゲンナイ様はどうやってマリア様に取り入ったのですか?…そして、何が目的なのですか?」


これまた困る質問をされてしまった。


「いやぁ……ははは、困ったな。……別に取り入るだとかしていないし、目的も何もないんだけど……」


俺は頭をかきながらそう答える。

しかし……


「でも、そんなことが聞きたいんじゃないんだよね?」


「はい。……わたくしが聞きたいのは、先ほども言いました通り、「あなたが何者なのか」……この一言に尽きます」


「そうは言われてもねぇ……答えていいのかがわからないしなぁ……」


「それはどういう意味でしょうか?」


「俺もまだ、アンナさんたちを信用しきっていない……ってことだよ。簡単に言うとね」


「それは……」


「俺は、今日はじめてであった人に、なにもかも洗いざらい話せるほど、他人を信用していない」


「エリカ様には出会ってすぐに自らのことをお話になったと聞いておりますが?」


「それブラフでしょ?……それともマリアさんが言っていた?」


「いえ、エリカ様から直接伺いました」


「あぁ…その可能性は考えてなかった。……それじゃあひとつだけ。俺は敵じゃないよ」


「それを信じろと?」


「お互いさまじゃない?俺もアンナさんのこと全然知らないんだし」


「それは……確かにそうですが……」


「ここで言い合っててもしょうがないし、マリアさんの部屋に行かない?…遅いと心配されると思うんだけど?」


「……わかりました。今日はここまでといたしましょう。……こちらです。ついてきてください」


「りょうかーい」


俺は、アンナさんの後について、マリアさんの部屋へと向かった。

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