第四十二話
「さてと、ここらへんで一回休憩するわよ。ついでに、朝ご飯にしましょう」
エリカが立ち止まったのは、エリカの家から歩いて20分弱くらいの場所にある、小川だった。
「パンは持ってきたでしょ?水はそこの小川のを飲めばいいから…」
そう言ってエリカは、自分のカバンからパンを取り出して、食べ始める。
「わかった」
俺もエリカにならい、カバンからパンを取り出して食べ始める。
「今日は随分とまた、質素な朝ご飯だね。…もしかして、これが普通だったりする?」
「そうね…これが普通だと思うわ。昨日はたまたまスープの残りがあったけど、普段はパンだけよ。…まぁ、お金をたくさん持っている人達は、朝からおかずやらスープやらを食べたり…朝昼晩の三食食べているらしいけどね…」
「エリカはお金持ってないのか?Sランクの冒険者なんだろ?」
「私の場合はね…まぁ、いろいろと理由があるのよ…」
「そうなのか?…まぁ、無理には聞かないけど…」
「ありがとっ。…さて、そろそろ食べ終わったかしら?片付けて狩り場に向かうわよ?」
「わっ、ちょっと待ってよ。俺はまだ食べ終わってないんだよ…」
「はやくしなさいっ。もうすぐ日が出てきちゃうから、はやく行かないと罠を仕掛けられなくなるわっ」
「そうなの?…わかったよ。これはまた後で食べることにするよ」
そう言って俺は、食べかけのパンをカバンに入れて、小川の水で口をすすぐ。
「準備できたよっ。行こうか?」
「えぇ、行くわよ。…今度もちゃんとついてきてよ?」
そう言ってエリカは歩き出す。
「わかってるよっ」
俺もエリカに続いて歩き出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さて、ついたわよ。ここがこの間、私がスーピットを捕まえた場所よ。…さっそく罠を仕掛けましょうか?」
そう言ってエリカが立ち止まったのは、木々が立ち並ぶ中にある、ひときわ大きな木の前だった。
「わかった。…どこに仕掛ければいいんだ?」
俺はあたりをみまわしながら、エリカに問いかける。
「基本的には木の根っこのあたりよ。このトラバサミを見えないように仕掛けるの。…自分がかからないように気をつけなさいよ?」
そう言ってエリカが、2つほどトラバサミを渡してくる。
「仕掛けた場所の近くの木に、目印をつけておいてね?わからなくなると困るから…」
「わかった」
「仕掛けおわったら、この大木に下に集まりましょう」
「わかった」
俺はトラバサミを受け取り、大木のまわりに立ち並ぶ木の中で、草むらがあってトラバサミを隠せそうな場所に仕掛けに行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「我が指先に宿れ…「風の刃」」
俺はトラバサミを仕掛けた草むらの近くの木に、魔法を使って×印をつける。
「さてと、戻りますか…」
2つのトラバサミを仕掛けおわった俺は、エリカとの待ち合わせ場所である大木の下へと向かう。
すると、エリカはすでにそこにいた。
「仕掛けおわったかしら?できたなら、ここから離れるわよっ。ボスーピットを探しにいきましょう?」
そう言ってエリカが俺の方へと歩いてくる。
「わかった、そうしよう。…行き先は決まっているのか?俺はエリカについて行くだけだが…」
俺は頷き、エリカに問いかける。
「思い当たる場所はいくつかあるわっ。順番に巡りましょう」
そう言ってエリカは歩き出す。
「了解っ」
俺は敬礼の真似をしてから、エリカの後ろについて行った。




