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第三十九話

「うーんぅ、良いお湯だったわぁ」


エリカが出てくるの椅子(食事の時に座っていたもの)に座って待っていた俺のまえに、湯上がり姿のエリカが風呂からあがってきた。


「ちょっと、あまり見ないでよね…恥ずかしいから…」


「わかってるって」


そう言いつつも、目はどうしてもエリカの姿をおってしまう。

それもしかたがないことだろう。

何故ならエリカは今、バスタオル一枚しかつけていないのだから…


「だから、あまり見ないでってばっ!いやらしい視線禁止!」


「いや、まぁ、そのだな…だったらはやく、自分の部屋で着替えてきてほしいのだが…」


「それは嫌よっ!私はいつも、この部屋で涼んでから着替えることにしているもの」


「そうなのか?…ならしかたな…ってしかたなくないよっ!俺に見られたくないなら、自分の部屋で涼めばいいじゃないか!」


「いーやーよっ!あなたが部屋から出て行きなさいよ。ここは私の家よ?どうしようが私の勝手でしょ?…それに、居候なんだから、私にあわせなさいよ」


居候(それ)を言っちゃう?まぁ、わかったよ。俺も風呂に入ってくるよ…」


「それはダメよ」


「何でさ?」


「だって今、お湯を抜いているもの」


「ハァ!?お湯を抜いてるって何でさ!?俺に入らせないつもりだったのか?」


「違うわよ。私が入った後のお湯なんて、使わせられるわけないじゃないっ」


「それはっ…まぁそうだな、そのとおりだ…」


「でしょ?…かわりと言ってはなんだけど、湯上がりには冷たい飲み物を用意してあげるからっ」


「そうか?…ってそれで懐柔される俺ってどうよ…まぁ、良いけどね…」


「交渉成立っと。じゃあ後は、自分で頑張ってね?…ちなみに、お湯は魔法を使って出せるわよっ」


「そうなのか?なら、たいしたことはないか…」


「そろそろ、お湯が抜けきったんじゃない?…頑張ってね?」


「わかった」


俺は頷き、風呂場へと向かった。


・・・

・・


「さて、頑張って風呂を準備しますかっ」


俺はお湯が抜けきった風呂桶を前に、気合いを入れる。

ちなみに…さっきエリカが入っていた風呂のお湯は、俺が水の魔法で風呂桶を満たし、火の魔法で頑張って沸かしたものだったりする。


「まずは…水をはるわけだが、さっきエリカが「お湯は魔法で出せる」っていってたよな。…やってみるか?」


俺は風呂桶の前で、精神を集中させる。


「イメージは、普段入っていた風呂そのものだ。………「求めに応じ、集まりて温まれ…「ホットウォーター」」」


俺が呪文と魔法名を唱えると、体から一気に魔力が失われる。


「これは…結構キツいな。それに………ぬるいっ!」


そう。

かなりの魔力を使ったわりには、全然あったかくないのだ。


「何がいけなかったんだ?…ちょっと検索してみるか」


俺は原因を調べるため、全世界記録集(データベース)を使ってみることにした。


「…アクセス」


俺がそう唱えると、前と同じように本が現れる。


(夏野限無と認識。下位権限でのアクセスを許可します)


「んじゃさっそく…お湯魔法についてで検索してくれ」


(承りました。キーワード「お湯魔法」で検索いたします。…検索結果が出ました。お湯魔法についての知識をインプットしますか?)


「よろしく頼む」


(承りました。お湯魔法についての知識をインプットします。………完了しました。別のキーワードを指定しますか?)


「いや、大丈夫だ。ありがとう」


(では、またのご利用をお待ちしております。)


「あぁ、クローズ」


俺がそう唱えると、本が消える。

と、同時に、俺の頭に「お湯魔法」についての知識が書き込まれた実感がわく。


「なになに…「お湯魔法は属性系統の火と水の複合魔法なので、必要魔力量が多く、失敗しやすい」だと!?エリカめ、わかっててやらせたなっ!」


涼みながら笑うエリカの顔が想像できる。


「まぁいいや、効果的な風呂の沸かし方もわかったし」


そう。

お湯魔法で検索した結果、ちゃんとした簡単な風呂の沸かし方も一緒にわかったのだ。


「まずは、水魔法で風呂桶を一杯にする…ってその前にこのぬるま湯を抜かないと」


俺はお湯の栓を抜く。


「って、あぁっ!抜かないでそのまま使えば良かったのにっ。…まぁ仕方がない、明日からの練習だと思えばいいか…」


俺はぬるま湯が完全に抜けるのを待ってから、栓を締め直す。


「さて、改めて水魔法で風呂桶を一杯にするっと」


俺はまず、水魔法を使って風呂桶に水をためる。


「次に、電魔法で電子レンジみたいにあっためるっと」


風呂桶の水に手をつけて、冷たいのを我慢して雷魔法を使う。


「あたため過ぎないように注意して、ちょうど良いあたたかさで魔法止める…」


俺は魔法を止め、風呂桶の水がちょうど良いお湯にかわったことを確かめる。


「うん。良いお湯だ」


お湯がちょうど良いあつさになったことを確認した俺は、脱衣所で服を脱ぎ捨て、風呂場に直行する。


「ふはぁっ、良い湯だなぁ」


ザバンとお湯をこぼしながら、お湯にしっかりとつかる。


「さっきのエリカの時も、この方法を使えば簡単だったのに。…エリカのやつ、知らなかったのかな?」


足を伸ばしてくつろぎながら、さっきの苦労を思い出す。


「まぁいいやっ、今が極楽だし、風呂にもちゃんと入れたんだから…」


俺は文字通りすべてを水に流し、エリカのことをゆるすことにした。

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