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第三十四話

「さて、それじゃあさっそく向かおうか?Sランクの森って、最初に俺がいた場所のことだよな?」


俺は昨日の会話を思い出しながら、エリカに問いかける。


「そうよ。スーピットの生息地は、そこから少し歩いたところにあるわ」


「少しってどれくらい?1キロは無いよね?」


「そうね…だいたい直線距離で300メートルくらいかしら?」


「直線距離ってことは、道はまっすぐじゃないってこと?」


「そうなるわね。…まぁ、魔法を使えばすぐにつくわよ。むしろ、ついた後にさがすほうが時間がかかるわ」


「そんなに見つからないのか?」


「えぇ…巣さえ見つけてしまえば、後は待つだけなんだけど…巣を見つけるまでが大変なのよ」


「スーピットを直接見つけて捕まえればいいんじゃないの?」


「それは無理ね…スーピットは体毛が緑だから、森に同化していて…目で見つけられないのよ。強さの気配(オーラ)もすごく小さいから、感覚で見つけるのも困難よ」


「ってことは、もしかして難易度めちゃくちゃ高い?」


「まぁね…ただし、この季節じゃなければ…だけどね」


「季節が関係あるのか?」


「そのとおりよ。…この季節はちょうど、冬眠にむけてエサをためこむために活発に活動するの。それにこの季節は森が色付くから、体毛が緑のスーピットは同化できずに見つけやすくなるのよ」


「そうなのか。なら、なんとかなりそうだな」


「えぇ…と言いたいところだけど、ボスーピットが出るということは、スーピットがまとまっているかわりに、巣から出てこないのよ…」


「つまり、巣を見つけなくちゃいけない…ってこと?」


「そう言うことよ。…まぁボスーピットは大きいから、ボスーピットをさがせばその近くに巣があるわ」


「けどそれって、ボスーピットと戦わなきゃいけないんでしょ?」


「おそらく…というより確実にそうなるでしょうね…」


「殺しちゃ駄目なんでしょ?…というか、俺には殺せる自信がないよ」


「そうね…魔物とはいえ、殺しの経験が無いゲンには、ボスーピットの相手はキツいでしょうね…」


「この手で命を直接奪った経験がないからね…。なれなければ、こっちで生きていくのは難しいことはわかってるんだけど…こればっかりはね」


「そうね…徐々になれていくか、割り切るしかないわね」


「そうだね…」


「少しでも殺すということになれたいなら、魔法を使うよりも剣とかの武器を使うほうがいいけど…そのぶん命を奪う感触が強いから、ゲンは最初は魔法を使ったほうがいいと思うわ」


「武器はあまり好きじゃないから、そのほうがありがたいな。…でも俺、攻撃に魔法を使ったことないんだけど…」



「そういえばそうだったわね…」


「攻撃魔法も、イメージだけでなんとかなるもんなのか?」


「基本は肉体強化魔法と同じよ。イメージして魔力を操るの」


「呪文とかは必要ないのか?」


「言葉を紡ぐことで、イメージをより鮮明にすることはできるけれど…基本的には魔法名だけ唱えれば大丈夫よ。自分で考えた…というか、パッと思い浮かんだものが魔法名になるの」


「なるほど…といっても、使ってみたことないからよくわからないよ。…まぁ、試してみたくはあるんだけど…」


「そう?ならこれからどうするの?このままスーピットの捕獲に行く?」



「とりあえず魔法を試してみたいから、一度エリカの家に戻ろうよ。今日は一日実験に使いたいから…」


「わかったわ」


「それじゃあ戻ろう」


俺はエリカの家に戻るために、街の外へと歩き出した。

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