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第三十二話

「さて、それじゃあ真面目な話をしましょうか?」


先ほどまでのくだけた空気から一変、マリアさんが真剣な顔で見つめてくる。


「はい…」


俺は空気が変わった事を感じ取り、真面目な顔になる。


「……………」


エリカからも笑顔が消えて、真面目な顔をする。


「でもその前に…お茶のおかわりはいかがかしら?」


「へ?」


いきなり真面目モードになったと思ったら、いきなりもとの空気に戻ってしまった。


「私ももらうわ」


エリカもそれにあわせて微笑する。


「あ、お、俺も貰います…」


俺はいきなりの事に驚き、うまくあわせられずに答える。


「そんなにかしこまらなくても大丈夫よ」


「えーっと、そう言われても…」


「わたくしとしては、真面目な話だって楽しくしたいものですわ」


「そうなんですか?…そのわりにはいきなり空気がかわったんですか…」


「それはまぁ、真面目な話ですし…最初くらいはしっかりしておこうと思うのが、人情というものではありません?」


マリアさんがお茶をいれなおしながら俺に微笑む。


「マリアはそうやって話の主導権を握りたかったのよ。いつもの手だわ」


エリカが俺の方を向いて、先ほどの空気を変えた理由を教えてくれる。


「確かにそのとおりなのですが…エリカに言われるとなにか釈然としませんわね…」


「私だっていつまでも子供じゃないのよ。いくらなんでも気付くわよ」


「それもそうですわね…。まぁ、ゲンナイ君にはあまり意味がなかったみたいだけれどね…」


「いや、そうでもないですよ?…いきなり空気が変わったので、慌ててなんとかあわせようとしただけで、内心ビクビクしてました…」


「そうなんですの?ポーカーフェイスが上手いんですのね…」


「そうですか?マリアさんに言われるほどなら、喜んでいいのかな…?」


「いいと思うわよ…。マリアは一応ギルドマスターなんだから」


「そうですわね。わたくしとしては、ほめているのですから喜んでいただいたほうが嬉しいですわ…」


「そうですか。なら、素直に喜ばせていただきます」


そう言って俺は、マリアさんに向かって微笑む。


「では、お茶をいれなおし終わったところで、今後のゲンナイ君の事についてのお話をいたしましょうか?」


そう言ってマリアさんが真面目な顔になる。


「お願いします」


俺もあわせて少し顔を引き締めて頷く。


「それじゃあまず、ゲンナイ君の持っている可能性についての確認をしましょうか?」


「はい」


「ゲンナイ君の持つ可能性は全部で4つ…さきほどマリア(わたくし)との絆を新しく手に入れているので、5つになっていますわね」


「それであってます」


「内容は

「異世界人との会話」

「エリカとの絆」「世界についての知識①」

「魔法の担い手」

マリア(わたくし)との絆」

これであっていますわね?」


「はい、あってます」


「この内、「エリカとの絆」と「マリア(わたくし)との絆」についての詳細は不明…。後の3つについては、登録時に確認していますので問題ありませんわ。…まぁ、3つとも内容については別格ですが…」


「そうなんですか?」


「えぇ、そのとおりですわ。「魔法の担い手」については、ギルドに登録している冒険者でも、持っている者はわずかならいるのですが…「異世界人との会話」と「世界についての知識①」については見たことも聞いたこともありませんわ」


「それってヤバいですかね?」


「危なくは無いとは思いますわ。エリカがついていますし、ギルドも全面的にバックアップいたします。…それになにより、あなた自体がSランクの強さの気配(オーラ)を持っていますもの」


「危険なものじゃないなら、それでいいです。…力と強さの気配(オーラ)にはこれから頑張ってなれますし、エリカとマリアさんが力になってくれるんでしょ?」


俺はエリカとマリアさんの両方に向けて問いかける。


「えぇ、もちろん」


エリカが笑顔で答えてくれる。


「わたくしにできる限りですが…」


マリアさんも微笑みながら了承してくれる。


「わたくしとしては、エリカやわたくしにかまわれた事で起きるかもしれない…いえ、起きるであろう厄介事の方が不安ですわね…」


「怖いこと言わないで下さいよ…」


「いえ、確実に1人突っかかって来そうな子に心当たりがあるので…ねぇ?エリカ?」


「あー、あの子ね?…確かに突っかかって来るかも…」


「大丈夫なの?」


「多分平気よ。…それより、そろそろ依頼人の人が来た頃じゃない?」


「そうですわね、そろそろ戻りますか?」


エリカの提案にマリアさんが同意し、受付に戻るかどうかを俺に尋ねる。


「わかりました。受付に戻りましょう」


俺も同意し、受付に戻ってみることにした。

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