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遠い世界で  作者: G・Y
6/23

遭遇

物語はなかなかすすみません。


ある程度の区切りまでついたら、展開を変えていこうと思っています。

6:遭遇



周囲には、木、木、これまた木ばかり。

それなりに歩いたが、周りの景色は変わることなく続いていく。


プランもなく、歩いているのが悪いのだろうか。

そろそろ、脱いだ下着とズボンが乾いてきたのだが・・・


「これ大丈夫だろうな・・・」


ポツリと呟く。この年になって、お漏らしとか想像してなかったからな。

どこまでがセーフなのかわからない。


「とりあえず、人型の生物がいるのは間違いないんだから・・・裸ってことはないだろ」


独り言を言いながら、歩みを進める。


「どうでしょう?私は興味がないのでわかりませんね」


『憑いている精霊』が、独り言を拾う。


「お前は、結構モノを知らないんだなぁ・・・」


「生物の生活なんて、精霊の知識に必要ありませんしね」


俺の皮肉に、なんでもない世間話のような返しをされる。


「とりあえず・・・下、穿くか・・・」


「それがいいでしょう」


すごすごと、乾いた下着とズボンを穿き歩き出す。なんだかとってもブルーな気分だ。



森の中、慣れない土地、様々なマイナス要因があったが特別な疲労はない。

これも『神の加護』とやらのお陰なのだろう。



いつまでも続くと思われた森が開けたのは、日も落ちかけた夕暮れ時だった。

この世界の一日・日の出日の入りが分からない以上、何時間という概念も隅においておいた方がいいかもしれない。



開けた先は、非常に広大な草原。ところどころに木の一本も見えない草原。

遠くには、これまた非常に挑戦しがいがありそうな山々が見て取れる。


右手側を見てみると、そう遠くない場所に森が・・・

左手側を見てみるとうっすらと霧がかっているように見えるが人工物らしき物陰が・・・


「とりあえず、こっちだろう」


自分に言い聞かせるように左側へ進路をとる。


夕暮れの中、森のそばをトボトボと歩く男が一人・・・

絵になるか、ひどく滑稽か・・・おそらく後者であろうことに肩を落としながら目的の場所を目指す。



それなりに歩いたつもりだが、一向に目的地に着かないことにあせりをおぼえたころ、森の中から黒い影が飛び出してきた。自分に向かって。


驚いた俺は、避けることもできず黒い影に押し倒される。



甘い匂いが鼻腔をくすぐる。

黒い影は、綺麗なショートヘアーの小柄な女の子だった。

押し倒された拍子に、女の子の顔が俺の顔に近づいて・・・




そんな、妄想は生臭い匂いが鼻を刺した瞬間に吹き飛ぶ。

覆いかぶさっている黒い影は、小汚い体毛の大柄な犬のようなナニカ。

押し倒した拍子に、ナニカの顔が俺の顔に近づいて・・・恐ろしく臭い。


異常に大きな口からよだれをたらしながら、噛み付こうとしているナニカ。


恐怖・・・感じてはいない。

動揺・・・することもない。

絶望・・・する必要もない。



今、自分は歴戦の兵士と同じく・・・死への恐怖も殺すことへの戸惑いも無い。


『神の加護』・・・軍人いくさびと

今、俺に起こっている現象の原因。


戦闘やそれに類する状況における観察力と判断力、精神力の向上。

それが、『加護:軍人』の能力。


俺は犬に似た何かの口の中に、右腕を差込む。

相手が口を閉じてしまう前に、口蓋垂を強く握りこむ。


犬似の何かは、口を閉じることもせず俺の上から飛びのいた。

口の中からは、赤い血液のようなものが噴出している。


俺は右手には奴の口内の一部位が握り締められていた。


『神の加護』・・・身体強化

腕力・脚力等の筋力に依存している能力の向上


生物にとって、それほど強い部位ではないならば千切り取ることも可能なほどの握力がその結果。


「ハウンドですね。基本単独行動の魔物です。『加護』は得られない類の生物ですよ」


そばにいる『精霊』がそう告げる。

不意打ちは本能のなせる業・・・というところか。



傷を負わされたハウンドは、退却という選択はないようだ。

「ヴヴヴヴ」

という、呻き声を上げながら此方を威嚇している。


残念ながら、喧嘩の経験も片手で足りてしまう程の平和な世界で生きてきた俺は武器はおろか素手での戦闘方法もしらない。腕力にものを言わせて殴りつけたところで友好打になるとは考えづらい。


軽く周囲を見回しても、武器になりそうなものは無い・・・


「仕方ない・・・」


そう、ため息をつきながら血に塗れた右手を前に突き出してハウンドに歩み始める。


その行動に、ハウンドは警戒をしめしたのか数歩後退したものの、此方への怒りが勝ったのか右腕へ噛み付いてくる。


「っっ!!」


噛み付かれた右腕に激痛が走る。が、『加護:軍人』の効果か声をあげることも無く次の行動へ移る。


ハウンドは噛み付いた腕を千切り取ろうと頭を激しくふるが、俺の力の方が強いらしい。痛みは増すが引きずられることはない。


空いている左手で、ハウンドの頭を押さえつけ、口内の右腕とで挟み込む。

そして、体全体を使い森の木の一つへハウンドを叩きつけた。


「ゴキョ」という、鈍い音とともにハウンドの体が仰け反る。

噛み付いていた力が、急に抜けてはいたが、そのまま再度、木へ奴の体をたたきつける。


「キョワン」という、悲鳴と共に逃げ出そうとするハウンドの頭を話すことなく、その後も木へ、地面へ奴の体をたたきつけた。


「いててて・・・分かっていても痛いな・・・」


途中から痙攣をし始めたハウンドに構うことなく、奴の体を振り回し、周囲へ叩きつけ続けるとピクリとも動かなくなったのに気がつく。


血が流れている右腕は、奴の唾液でベトベトだった。


「うへ・・・病気とか持っていそうだな・・・」


洗い流すなり、治療するなり・・・対処をしないと不味そうだ。


「原始的な戦闘方法ですね」


「近代的な方法は道具が無いとだからな」


と、『精霊』の感想に答えながら水場が無いか辺りを伺う。


幸いなことに、森のすぐそばに川が流れているようだ。

同じような化け物が出てこないことを祈りつつ、小走りで水場に向かう。


右腕を綺麗に洗い、Yシャツを使って傷口を覆う。

止血したものの、傷口はあまり良い状態ではないように見える。


『加護:軍人』の効果が切れたのか・・・戦闘という状況ではないからなのか・・・

自身の傷に恐怖する。


「これって、かなりやばいんじゃないか・・・?」


流れ出た血液以上に血の気がうせる気がした。


「と、とにかく、急いでちゃんとした手当てを・・・」


そういって、周囲を見回したとき、初めてその存在に気がついた。



・・・おそらく、自分と同じ人間・・・まだ、10に満たないであろう、少年がこちらを見つめていた。

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