『夢』
*お詫び*
思うところがありまして、一度掲載した後半部分を変更しました。
閲覧してくださった方には、混乱してしまうような事をしてしまい、申し訳ありませんでした。
16:『夢』
ホールに戻ると、随分人が増えていることに気づく。
受付周りには、体の大小以外にも様々な特徴を持った『人らしき人』であふれていた。
俺は、『査定』結果の書かれた用紙を手に近くのベンチでその様子を眺めていた。
俺がココに来てから、どのくらいの時間が経過しているのだろう・・・ホールの窓から入る光は強く、外が明るいことがわかる。
先ほど、少し仮眠したものの眠気がすっかり無くなったとは言い難い。
昨日の昼?辺りから、歩き通し、魔獣にあって怪我をして・・・色々あって、『査定』というのも行って・・・正直、肉体的にも精神的にも休みたいというのが本音である。
そう思い、もう一度寝てしまうべく都合のいい場所を探そうと立ち上がったとき、職員らしき男が話しかけてきた。
「アーエさんですね?受付の者から伺っております。」
男は、そういうと人だかりが途切れない受付を見る。
「ご覧の通り、対応したものは手が放せませんので私の方で最終の登録をしますね。」
そういうと男は、カウンターの隅に歩いていった。
話を聞くと、これ位の時間から『初登録』手続き専用の受付が開くそうだ。
女性は、受付が開くまでの当番だったようだ。
カウンターの端で男が、『査定』用紙を確認し、別の用紙に何かを記入している。
俺は、それを眺めているだけ・・・非常に眠くなることこの上ない。
「『査定』終了を確認しました。これで『斡旋登録』は終了です。」
半分寝かかっていた俺に、男が声をかけてくる。
男の顔には、困ったような表情が浮かんでいた。
「そのままお仕事の『斡旋』をするという事も出来ますが・・・お疲れのようですね。」
男の言葉に、俺はうなずく。
「ちょっと、昨日から眠れていませんので・・・休みたいと思います。」
無理をすれば・・・やはり、駄目だろう。どんな仕事があるのかはわからないが、初仕事で寝るとかありえない。
「宿は、どこかを取ってあるんですか?今は結構取りづらいと思いますけど。」
職員の男が、聞いてくる。『勇者特需』のせいだろう。宿は期待薄か・・・
「いえ・・・手持ちも無いもので・・・少し休める程度で良いので、良い場所を教えていただけたらと・・・」
最悪はココの隅のほうで、休もう・・・雨風が凌げればマシだろう。
「なるほど、それで『査定員』からの『推薦』ですか。それでは、『ココの施設』をご利用ということですね。」
・・・何故か上手く話が通じていない気がする。『査定員』のどちらかが俺を『推薦』したと・・・
なんにしても、『施設』とやらで休めるならば否は無い。
「それでお願いします。」
どの道、『査定員の男』に貰ったお金は無駄に出来ない。
俺は、素直にその好意?にすがることにした。
『施設』は『斡旋所』内にある簡易宿泊所だった。
『斡旋』により、この街に来た『労働者』を、一時的に泊める場所のようだ。
ただの『労働者』を、泊めるには『職員の推薦(保証)』が必要だそうな・・・
広さは、少し広い2畳・・・くらいだろう。荷物を置いて寝ることが出来るだけの部屋だ。
扉には鍵もかかるようだし、野宿に比べたら天国だ。
借りを作って、後が怖い気もするが・・・それでも、今は『生き残る』為に体を休めることを選択した。
夢を見ている時、それが夢と気づくのはどういったときなのだろう・・・
その結論は出なかったが俺は、確かに夢を見ていた。
夢の中で俺達は4人で、『この世界』を旅していた。
旅の始まりはどうだったんだろう・・・わからない。
その旅で、俺はどうなったんだろう・・・わからない。
他の3人はどうなったんだろう・・・わからない。
まるで、映画の主人公に自分が重なったかのように錯覚する。
そこに居るのは、俺の知らない自分。
目が覚めそうだ。それがわかるのは、どういったときなのだろう・・・
まだ、続きをみたい。そう願っても、夢は願いをかなえてはくれない。
俺は、ゆっくりと目を覚ました。
目を覚ました俺は、ゆっくりと上体を起こした。
小さな窓から見える外は明るい。まだ、日が沈んではいないようだ。
と、同時に自分の置かれた状況が『夢』物語ではなかったことに、軽く落胆する。
夢を見ていた。不思議な夢だった・・・
と、思ったのだが、総じて夢とは不思議なものだ。夢の中では、結構なんでもアリなこともある。
自分の願望を反映した『夢』を見ることもあるそうだ。
自分に『そんな願望』が、あったことに苦笑しつつ荷物を確認する。
といっても、持っているものは3つだけ。
部屋へ案内される時に、受付の男に渡された『木の札』と『査定員に貰った金』、そしてこの部屋の鍵。
少々、少ない気もするが・・・それでも、俺の全てだ。
とにかく、仕事をする。金を手に入れて『生きる』。
そして、『元の世界』へ帰る方法を探す。
道のりは遠いかも知れない・・・いや、遠いだろう。
それでも、やるべき事がわかっていて、少しでも進んでいるのだ。
昨日に比べたら、ずっとマシだろう。
俺は、部屋から出るとホールの受付を目指した。
夢の中で見た俺は、今より少しだけ胸を張っていたような気がする。
それならば、俺も少しだけ胸を張ろう。
夢の自分に負けているのは、なんとなくだが悔しい気がしたからだ。
9/18 内容の大幅変更
次回のお話は短くなる予定です。