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遠い世界で  作者: G・Y
12/23

査定(1)

最初は余分な部分をそぎ落とそうと思っていたのですが、結局長くなってしまいました。

12:査定(1)



「『アーエ』さんですね。得意なことはありますか?」


得意なこと・・・門の外でも聞かれたが、改めて考えてみても、何も無いな。



「力仕事はそれなりに出来ると思います。あと、少しだけ細かい仕事もできると思います。」


矛盾が起きないよう、答えは合わせておく。

受付の女性が、俺の回答を聞き、用紙にペン?を走らせる。

『アルファベットの筆記体』のような文字が、書き足されていく。


「ありがとうございました。それでは査定に移ります。」


用紙に記入することは、名前と特技だけらしい・・・『根掘り葉掘り』聞かれるよりはマシだが、なにかやるせない気分になるな・・・


「わかりました。お願いします。」


女性が、「こちらです」とカウンター端の出口から出てきて、通路の一つを目指し歩き出す。

女性の後を歩いていると、通路は一本道で大きく曲がっていることに気づく。


「『査定』は専門の職員が行います。アーエさんは、とりあえず二つの『査定』を受けていただきます。」


前を歩きながら、女性が説明してくれる。


「これから、行うのは『身体能力』に関する査定です。あくまで、『査定』ですので怪我などなさらないよう気をつけてくださいね。」


つまり、『気をつけなければ怪我をする』わけか・・・無理だな、コンディションが最悪だ。結局、昨日から何も口にしていないのだ。


「すみません・・・」


女性に、声をかける。歩みをとめた女性は、こちらに振り返りにこやかな笑顔を向けてくる。

怖気づいたか?チキン野郎・・・何故かそういっているように見えるのは被害妄想だろう。


「ちょっと、体を動かす前に水を一杯・・・いただけないでしょうか?」


女性は、きょとんとした目を向けてくる。俺の要望が、予想外だったのだろうか。

俺の顔をしばらく見ていた女性は、急に手を叩いて思い出したかのようなジェスチャーをする。


「そういえば、お腹が減っていたんでしたね。」


・・・そこまでは、言ってない。が、間違ってもいない。

女性は、少し考えるようなそぶりを見せると再び歩き出す。


「『査定』の会場なら、飲める水も置いてあります。ひょっとしたら『食べ物』もあるかもしれませんよ。」


そう俺に言うと、女性は肩越しに『笑顔』をみせた。

女性の営業ではない『スマイル』は、それなりに魅力的に見えた。




随分、歩いたような気がする。通路の行き止まりには扉が一つだけ。

非常に頑丈に見える扉は、おそらく『全て金属』で出来ているのだろう。

女性が、ノックの要領で叩くと小さく「ゴンゴン」という音がした。


しばらく、待ってみるが返答は無い。

女性は、足元に置いてあった?金属のハンマーのような道具を重そうに両手で持ち上げ、それで再び扉を叩く。

今度は『大きく』「ゴンゴン」という、音が響き渡る。女性は、そうすると足元に道具を下ろした。


少し待つと、男の低い声が聞こえた。すると、目の前の扉が少しずつ動き始める。

重さのせいか、地面に跡がつき「ガリガリ」という音を立てながら扉が開かれた。



開かれた扉の先には、青い空・・・土色の地面・・・おそらく、裏手から見た『斡旋所』・・・そして、それらを遮るように、一人の男が立っていた。



男に案内され、受付にいた女性と共に広場の中央近くまで歩いていく。何か、男の足元に『大きな丸い』ものが転がっている。


広場自体は、それなりの広さがある屋外運動場のようなものに似ている。ただ、周囲は石造りの塀で囲われており、空は見えているのにかなりの圧迫感を受ける。奥の方には、少し大きめの小屋と傍には大きめな木が3本。積み重ねられた薪のような物・石釜や石造りの台?のようなものも見える。

そして、塀際のいたるところに『非常に物騒な道具』が乱雑に転がっている。



「面倒なことはさっさと済ませるにかぎるな。おい、はじめるぞ。」


そういうと、男は足元に転がっていた『大きな金属の付いた棒』を持ち上げた。

目には入っていたのだが、まさかと思い見なかったことにしていたのに・・・どういう、仕組みなのだろうか?1.5m程の太い金属製の棒の先に直径でも1m近い大きさの『金属球』が付いている。

俺の『常識』では、あれほど大きな『金属の塊』を先端につけた棒は接合部が持たない。かなり、延性の強い金属であっても曲がってしまう。


そして何より、ソレを両手で持ち上げている男が非常識すぎる。

ゲーム等の光景を、実際に見てみると違和感が酷い。今も、準備運動のつもりなのか手に持った『棒つき鉄球』を振り回している。


《それなりに強い『加護』を受けているようですね。》


突然、耳元で『精霊』が話しかけてくる。

・・・なるほど、『強い加護』というのは本当に物語の『ヒーロー』的な『能力』なんだな。


そう思えば、『棒つき鉄球』も『精霊』とやらが絡んでいるのだろう。

どうにも、『この世界』に馴染めていないからか、『元の世界』の『常識』で考えてしまう。

この考えは、『危険』だ。気は乗らないが、早くこの世界に『慣れ』なければ・・・


『俺の常識』は通じない・・・そう思えば、この理不尽な光景も『受け入れる事』はできる。

目の前の現実を、『受け入れられず』いることは様々な判断を狂わせ、鈍らせる。



一つ自分に結論づけて、男に意識を向ける。と、待っていたのだろうか。


「とりあえず、ココにある『獲物』を使って俺と『戦闘の実践演習』だ。」


ニヤリと口角を吊り上げて、男はいう。


これは、『気をつければ怪我をしない』というレベルじゃないだろう。

あまりの『予想通り』過ぎる展開にめまいがする。とにかく、こんな『査定』は命にかかわる。何とか、別の方法を提案できれば・・・


「『演習』ですか。しかし、私はここに置いてあるような道具は使ったことがありませんし・・・それに、『魔物』にあっても逃げることしかしたことの無い私では・・・何か、他の方法でお願いできませんか?」


『査定』内容に異を唱えるのはマズイかも知れないが、死ぬよりはいい。出来れば、『100m走』や『腹筋』など平和的な『体力測定』がベストだ。


「なら、お前の『査定』は『0点』だ。『仕事の斡旋』はできねーな。」


全く、提案を考慮する様子も無く男が詰まらなさそうに告げる。助けを求めるように受付の女性に視線を向けるが、困ったように女性は左右に軽く首を振る。


「『査定』に関しては、『査定員』に一任されています。『査定結果が0点』の場合、『仕事の斡旋』は行えません。」


きっぱりと言われてしまった。仕事に忠実なのだろうが、ここは助けて欲しいところだった。


俺は目を瞑り、ゆっくり息を吸い込み・・・その倍以上の時間をかけて溜まった息を吐く。

とにかく、『0点』で無ければよいのだろう。『採点基準』はわからない。

相手の間合いに入らないように遠間から手が出せるような『道具』を使えば何とかなるだろうか・・・

他に選択肢は無いようだ。意を決して、口を開く。


「申し訳ありませんでした。『その査定』でお願いします。」


そういうと、男は詰まらなさそうな顔のまま「獲物を選んで来い」と言ってきた。コチラに『やる気』がないからか・・・どうも、アチラは『戦う』のがお好きなようだ。もしくは、『いたぶる』のが好きなのか。


どちらが正解かはわからないが、こちらは『命』がかかっているのだ。相手の娯楽に付き合っている暇は無い。


俺は壁際で転がっている『道具』を見渡す。

死なない為のベストな選択はどれなのか・・・



そんな風に考えていると、いつの間にか広場の中央で受付の女性が男に何やら話をしていた。

それなりに離れている為、内容は聞き取れない・・・が、時折こちらを見ているように見える。


そうしていると、男が大きな声を出した。


「おい!『査定』が良かったら、飯をおごってやろう!」




今更ですが、この物語の設定には中途半端な知識が詰め込まれています。

科学的な根拠は全くありませんので、流していただければ幸いです。

どうしても、気になるようでしたら修正致しますのでご指摘ください。

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