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国宝級イケメンとのキスは、最上級に甘いドルチェみたいに私をとろけさせます♡ 〈Dulcisシリーズ〉  作者: はなたろう


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#2 新しい地図

12月になり、秋から冬へと季節は変わった。


『次の話題です。年末恒例、女性雑誌RiRi調べ、国宝級イケメンのランキングが発表されました。5位から見てみましょう』


休憩室にお昼のワイドショーの音が響く。


『ただいま人気急上昇のアイドルグループ、dulcis〈ドゥルキス〉のメンバー、コウキさんが初めて1位を獲得しました。お祝いのコメントが入っています』


隣にいたパートのおばちゃんたちが話をしている。


「最近よく見るわね、この子達」


「うちの嫁が好きなのよね」


ここは年齢層の高い職場なので、テレビの音量がいつも大きい。食べ終わったお弁当箱をしまい、外のベンチで時間をつぶそうと席を立つ。


ここは植物園。のんびり過ごすためのベンチは山ほどあるのだから。




◆◆◆





休憩から戻ると、持ち場には園長がいた。売店の鈴木さんはいないので、園長自ら現場仕事をしていたらしい。


まぁ、たいした来場者はいないけれど。


「サクラちゃん、おつかれさま」


50代の人が好さそうな、白髪混じりのぽっちゃりした男性。


「新しい園内マップができたよ。裏面はサクラちゃんの提案通りだ」


A4サイズの印刷物を渡された。


「わぁ!嬉しいです!ありがとうございます」


「もっと色々アイデアをもらって、集客アップを目指して欲しかったなぁ」


残念だなぁ、と神妙な顔をしている。


「え?私、クビですか?」


勤務中の喫煙は佐藤さんですよ!と、思わず告げ口しそうになった。


「あはは。違うよ、本社勤務への異動だよ。人事から連絡が入ってね、この前出した企画部の社内公募、受かったよ。おめでとう」


「えぇ!」


「引き継ぎがあるから、年明けから来て欲しいって。こっちの後任や引き継ぎは何にも決まってないのにね、ひどいよねぇ」


「あ、なんか、スミマセン」


「まぁ、なんとかなるよ。佐藤さんは、泣いちゃうかもね。孫みたいに可愛いって言ってたから」


そう言うと、園長は去っていった。


植物園の運営会社は、新宿に本社がある。


新卒入社のあと、現場を経験させる方針で植物園に配属された。通常は半年程度で異動となるが、人手不足から3年が経った。


ここでは、面倒見の良い大人に囲まれ、恵まれた環境だったが、やはり希望する仕事がしたいと、異動願いを出していた。


ようやく本社勤務。しかも、施設のイベントを企画する希望通りの部署に異動できるなんて。


「あれ、園内マップ変わった?」


ハッと顔を上げると、いつもの彼が私を見下ろしていた。


ブランドロゴが大きく書かれたニット帽、黒ぶちメガネ、チェックのオーバーサイズシャツ、コーデュロイのパンツ姿。


メンズ雑誌の秋冬トレンド特集、ページからそのまま抜け出したみたい。


「年明けから配布予定なんですよ」


「見てもいい?」


「どうぞ」


彼は興味深そうにマップを見ていた。


「庭師が伝える季節と、天気別おすすめポイント」


口に出して読まれた。自分で考えた内容だけど、ちょっと恥ずかしい。


「この前、指摘されたあとに反省したんです。ここの良さを知ってもらって、もっとたくさん利用してもらうことが私の仕事だよね、って」


新しいマップには、お年寄り向けアップダウンの少ないコース、親子連れ向けにクジャクのお昼寝スポットなどを追記した。


「いいね」


あ、初めて目があったかも。


メガネの奥で目が笑っていた。マスクの下では、口元も笑っているのだろうか。そうだといいな。


「次に来るときは、新しいマップを見ながら園内を楽しむよ」


「はい。あ、でも……」


「でも?」


言う必要はないのだろうか。だから何?って思われるかもしれないけれど、


「私、本社に異動するので、お会いできるのは最後かもしれません。だから、その……。変わるきっかけを、ありがとうございました」


妙な間があった。


「あのさ、今夜、少し時間ない?」


「え?」


「仕事は何時に終わる?」


「18時、です」


「じゃあ、その時間に外で待ってて。車で迎えに来るから」



植物園の入り口の先を指差した。



「え、な、なんで?」


「いや、なんでって……。言わなくても察してよ。じゃあ、またあとで」



言い終わると、彼はそのまま帰ってしまった。

配布前の園内マップを持ったまま、だ。


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