ミアの悩みー自己革命のスタートー
──ただその一方で、私は夜になると金属片に映る自分の姿を見つめていた。
「なんて醜いの」
丸く膨れた顔。二重顎。ぼさぼさの髪。くすんだ肌。太い腕。そこに立っているのはかつての美を追求してきたデザイナーの姿ではなかった。
「このままでは……説得力がない」
布の革命を叫ぶ私自身が美を体現できていない。その矛盾に胸が痛んだ。……何か行動しないと、私自身も改革をしなければ!
翌朝、私はバーチェに相談した。
「痩せる方法……この世界にはあります?」
「はぁ? 痩せる方法だって⁉」
バーチェは目を丸くした。
「何を急に言い出すんだい。痩せる? そんな贅沢な悩みは村じゃ聞いたこともないよ。
食えるだけ食って動ける。それで十分だろ」
「十分ではありません!」
私は机を叩いた。
「美を伝える者が美を疎かにしてはならない。痩せて、肌を磨き、髪を整える。その努力の過程こそが私自身の革命なのです!」
バーチェは呆れた顔をしたが、しばらく考えてから言った。
「んで、何から教えればいいって? もう一回聞いてみろ」
「はいっ、痩せる方法は?」
「畑だ。土は裏切らない」
「筋肉は裏切らないみたいなやつですね。それでは美容は?」
「草だ。匂いも裏切らない」
「さすがです、バーチェ様‼」
こうして私は服作りと並行して“自分磨き”を始めた。朝は畑で土を耕し、重い籠を担いで汗を流す。昼は子どもたちに服を作り、夜は草を潰して肌に塗り込む。忙しくとも充実した毎日だった。
「この匂いは? うっ、まるで青臭い泥です……」
「贅沢言うんじゃないよ。シワを防ぐ効果があるんだ」
バーチェにそう叱られながら、私は頬に草泥を塗りつける。鏡代わりの金属片を覗き込み、すぐに美しくならなくても続ければきっとと自分に言い聞かせた。工房では次々と服が生まれていった。子どもたちは走り回り、大人たちは羨望の眼差しを向け、やがて一部の母親たちが私に服を頼むようになった。
「私にも……娘にも、ああいう服を」
依頼の声が増えるごとに、胸の奥が熱くなる。革命は、確かに広がりつつある。だが同時に、役人の目もまた鋭くなっていた。市場に出回るはずのない形の服が村で見られるようになり、ミアという名が噂に上り始めたのだ。
「見つかればただじゃ済まないね」
「それでも、私には進むしかありませんから」
私は針を掲げた。……自分の体も、この世界も必ず美しく変えてみせるから!
その夜。金属片に映る顔を見つめながら、私は深く息を吸った。
「太っていようと、醜かろうと始まりはここから。必ず“美の象徴”として立ち上がってみせるわ」
胸の奥で確かな炎が燃えていた。




