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旅立ち、そして辺境の地へ!ー宗教とも戦えますー

 翌朝、かつての仲間たちに見送られながら私たちは王都を発った。バーチェの姿が見当たらず残念に思っていたその時――。

「私を忘れて貰っちゃこまるよ」

「バ、バーチェ様!」

 旅の服に着替えたバーチェが立っていた。私たちは四人で新たな旅へと出かけることとなった。そして革命の証として布の旗を掲げて西の辺境へと向かった。街を離れるごとに道は荒れ、風は乾き、草木はまばらになっていく。その先には王都の革命がまだ届かぬ土地が広がっていた。オルガは道中で剣の手入れをしながら言った。

「ここら一帯は“布を燃やす宗教”の連中が支配しているらしい。布は罪だ、燃やして灰にすることで神に浄化される。そんな理屈で人々を縛ってる」

「布を……燃やす……?」

 私は耳を疑った。服を纏うことさえ禁じられ、裸同然で暮らす民たち。そこにあるのは

美でも誇りでもなく、ただの恐怖の支配。胸の奥で怒りが燃えた。

「そんなもの当然赦せないわ。布は命を守り、心を繋ぐものであるはず。それなのに布を奪うなんて」

 辺境の村に着いた時、目の前のその光景は想像以上に凄惨だった。小さな広場に積み上げられた布の山が燃やされ、黒煙が空へ昇っている。子どもたちが泣き叫び、母親は身を縮め、老人たちはただ祈るように手を合わせていた。その中央に立つのは宗教指導者の一団。彼らは赤い焔を模したローブを纏い、布を燃やすことを神聖な儀式と称しているようだった。

「布は汚れ、欲望の象徴だ! 燃やして清めよ!」

 指導者の声が響くたびに、人々は恐怖に縛られて布を差し出す。私は一歩、広場に踏み出した。針箱を胸に抱き、声を張り上げる。

「布は穢れなどではありません。誰かを温め、支えるものです!」

 群衆が驚いたように私を見つめ、指導者の目が鋭く私を射抜いた。

「異端だ……!」

 指導者は怒声を上げ、私を捕らえさせようとした。だがその瞬間、オルガが前に立ち、剣を抜いた。

「ミアには指一本触れさせない!」

 バーチェは人々に向けて叫ぶ。

「おい、よく見るんだ。その燃やされた布は誰のものだ? お前ら自身のだろ、本当にそれでいいのかい⁉」

 その言葉に村人たちの表情が揺らいだ。私は針を取り出し、炎にくべられる直前の布を掴み取った。焦げかけの裂け布を抱きしめ、必死に縫い合わせる。火の粉が散り、手の甲が熱で赤く染まる。けれど私は縫う手を止めなかった。

「燃やされても……まだ繋がる!」

 布が裂けても針と糸があれば蘇る。その姿を見て子どもたちが泣きながら叫んだ。

「お姉ちゃん、僕の布も縫って!」

「私のもっ」

 人々が次々と布切れを差し出し始める。広場の空気が変わった。恐怖に沈んでいた村人たちの目が一つ、また一つと光を帯びていく。

「……馬鹿な!」

 指導者は狼狽し、布の山を再び燃やそうとする。だがその前に立ちはだかったのはリ

ュシアンだった。彼は燃えさかる炎の目の前で冷然と告げる。

「お前たちの神は恐怖でしか人を縛れない。だが、彼女の布は……希望を縫い合わせている。どちらが強く美しく、そして正しいのかはもうわかるだろ」

 剣を抜いたオルガと針を掲げた私。そして立ち上がった村人たち。広場は焔ではなく、縫い合わせられた布の波に包まれていった。

 その夜、燃やされるはずだった布は村人全員の手で縫い直され、大きな幕となった。それは炎を模した模様を逆に光へと変え、生き延びた誇りとして広場に掲げられた。子どもたちがその下で笑い、母親は涙を流し、老人たちは祈りの言葉を“布への感謝”へと変えていた。私は胸の奥で強く思った。……布は世界を繋ぐ。もっとたくさんの人にそれを伝えたい。

 どんなに裂かれ、燃やされても、針がある限り縫い直せる。これこそ私が歩むべき新たな布の道。夜空を見上げ、私は旗を掲げた。

「この世界の隅々まで布を取り戻してあげる!」

 その声は辺境の闇を越え、星々へと響いていった。

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